2012 Fiscal Year Research-status Report
臍帯血・臍帯由来幹細胞の機能評価と小児疾患に対する細胞治療への応用
Project/Area Number |
23591428
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
麦島 秀雄 日本大学, 医学部, 教授 (80183648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 助教 (90378141)
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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Keywords | 再生医学 / 移植・再生医療 / 胎児由来幹細胞 / 臍帯血 / 間葉系幹細胞 |
Research Abstract |
1.臍帯組織に存在する神経堤由来細胞の形質および機能解析:臍帯組織より臍帯動脈を分離後、酵素処理により細胞を単離し、磁気ビーズ法にてp75NTR陽性細胞を選別した。このp75NTR陽性細胞をニューロスフェア法にてニューロスフェアを形成させた後、適切な神経分化誘導培地で培養し、神経系細胞への分化誘導を試みた。その結果、分化誘導12日後には、NF200, MAP2に陽性を示す神経細胞および、GFAP陽性を示すグリア細胞の誘導が確認できた。 2. 臍帯組織に存在するMSC(免疫抑制性細胞・造血ニッチ細胞)の形質および機能解析:ヒト臍帯、胎盤羊膜上皮、および胎盤羊膜間質からそれぞれ酵素法またはExplant法にてMSCを調製し、それぞれの免疫原性、免疫抑制能、造血支持能について比較検討した。その結果、臍帯MSCは、羊膜上皮MSC, 羊膜間質MSCに比べ、IFN-gamma刺激後のHLA-DR発現レベルが低いことが明らかになった。この結果より、臍帯MSCは他のMSCに比べ免疫原性が低いことが示唆された。また、羊膜上皮MSCはSDF-1発現が高く、in vitro共培養系においてCD34+造血幹細胞を保持する能力が高い傾向が認められた。羊膜上皮MSCが造血ニッチ細胞としての機能が高いことが示唆された。 3. 臍帯由来免疫抑制性細胞の細胞治療への応用 レシピエントマウス(B6D2F1)に11Gy放射線照射を行った後、ドナーマウス(C57BL/6)骨髄単核球と脾臓CD3+細胞を移植し、急性GVHDモデルを作成した。このモデルにMSCを静脈内投与し、GVHD抑制効果がある至適投与法を検討した。その結果、MSC 5x105を移植当日、7日後、14日後に静注することにより、生存率が最も高まることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「臍帯組織に存在する神経堤由来細胞の形質および機能解析」については、臍帯組織より単離したp75NTR陽性細胞が神経細胞やグリア細胞への分化能を有することを証明できた。この研究成果は、本課題の目標の一つが達成されたということができる。一方、p75NTR陽性細胞を移植に必要な細胞数まで増殖させることができなかった。このため、当初予定していたラット脳性麻痺モデルへの移植実験は、実施に至らなかった。今後、in vivo移植実験に移行するためには、効率的にp75NTR陽性細胞を増幅させる方法を検討する必要があると思われる。また造血ニッチ細胞のスクリーニングでは、当初SDF-1を指標に選別を行い、増殖させた後に機能解析を行う予定であったが、SDF-1で選別した細胞は、増殖能が低く、機能解析を行うことができなかった。また作成した3種類の培養MSCはいずれも継代培養を重ねるうちにSDF-1の発現が減弱することも明らかになった。急性GVHDモデルに対する細胞治療の開発研究では、本年度中にMSC静脈内投与による有効性に関するデータを出す予定であったが、MSC静脈内投与により肺塞栓と思われる急死例が認められたため、至適細胞投与法の検討を行うにとどまった。このような理由により計画通りに進展しなかった研究もあったが、着実にデータを蓄積させていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
胎児付属物由来MSCの性質に差異があるという仮説を基盤に研究を行ってきたが、実験を重ねるにつれ、継代培養により生体内における特徴的な形質が失われ、臍帯MSC、羊膜上皮MSC、羊膜間質MSC共に類似した形質、機能を示す細胞に変化する可能性が示唆された。そのような傾向がある中で、IFN-gamma刺激によるHLA-DR発現は、臍帯MSCで他のMSCに比べ明らかに弱いという結果が得られたことは興味深い。今後、臍帯MSCの免疫原性について、移植実験などを行い、より深く検証していく予定である。また造血ニッチ細胞や免疫抑制性細胞の機能評価に関しては、胎児付属物由来MSCで差異が認められない可能性があるため、脂肪由来幹細胞や皮膚線維芽細胞などの体性幹細胞を比較対照として、実験を計画実施していく。次年度は、マウス急性GVHDモデルや、臍帯血生着不全モデルに実際にMSCを移植して、その効果を明らかにする実験を重点的に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
造血幹細胞移植実験に用いるNOD-SCIDマウス、GVHDモデル作成のためのC57BL/6およびB6D2F1マウス、FACS用抗体、RT-PCR用試薬などの消耗品購入に、80万円を充てる。また、学術雑誌投稿費用に10万円を充てる。
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[Journal Article] Diabetes caused by Kir6.2 mutation: successful treatment with oral glibenclamide switched from continuous subcutaneous insulin infusion in the early phase of the disease.2012
Author(s)
Nagano N, Urakami T, Mine Y, Watanaabe H, Yoshida A, Suzuki J, Saito H, Ishige M, Takahashi S, Mugishima H, Yorifuji T.
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Journal Title
Pediatric International
Volume: 54
Pages: 277-279
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Treatment responses for disseminated intravascular coagulation in 25 children treated with recombinant thrombomodulin: a single institution experience.2012
Author(s)
Yagasaki H, Kato M, Shimozawa K, Hirai M, Nishikawa E, Okuma H, Ishii W, Matsumura M, Yonezawa R, Yoshikawa K, Shichino H, Chin M, Mugishima H
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Journal Title
Thrombosis Research
Volume: 130
Pages: e289-293
DOI
Peer Reviewed
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