2012 Fiscal Year Research-status Report
転写因子IRF4は自己免疫疾患における肉芽腫の形成に関与する
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23591442
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
関根 英治 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40363759)
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Keywords | 国際情報交換 / アメリカ / IRF-4 / IRF-1 / 肉芽腫 / 自己免疫 |
Research Abstract |
1)IRF4欠損MRL+/+マウスを作製し、脾Th1,Th2,Th17細胞数や肉芽腫形成の有無等、免疫・病理学的表現型を解析する。 上記課題の研究の結果、IRF4欠損MRL+/+マウスではIRF4欠損MRL/lprマウスと同様の脾臓、肝、および肺肉芽腫の形成が確認出来、当該肉芽腫の形成はlpr遺伝子に依存せず、MRL系の遺伝的背景において形成されることが判明した。また、IRF4欠損MRL/lprマウスで認められた脾臓CD19陽性B細胞の消失はIRF4欠損MRL+/+マウスでも観察され、これもlpr遺伝子に依存しない現象であることが判明した。いずれのIRF4欠損でも脾臓IFN-g産生性Th1細胞の増加が認められ、肉芽腫形成とB細胞の消失は、IFN-g産生性Th1細胞または、IFN-gの作用による現象であることが推察された。 2)IRF4/IRF1二重欠損MRL/lprマウスを作製し、IRF4またはIRF1単独欠損MRL/lprマウス、野生型MRL/lprマウスと比較しながら、脾Th1,Th2,Th17細胞数や肉芽腫形成の有無等、免疫・病理学的表現型を解析する。 上記課題の研究の結果、IRF4/IRF1二重欠損MRL/lprマウスでは肉芽腫と脾臓CD19陽性B細胞の消失は観察されなかった。一方IRF1単独欠損MRL/lprマウスでは脾Th2細胞が増加し、IRF4欠損MRL/lprマウスと異なり異物型多核巨細胞を伴う肺肉芽腫が観察され、脾臓には肉芽腫が観察されなかったが、腎の間質に多数のCD4陽性リンパ球と抗酸球の浸潤を伴う尿細管間質性腎炎が認められた。なお、IRF4欠損MRL/lprマウスで観察された細胞増殖性糸球体腎炎はIRF1単独欠損MRL/lprマウスでは観察されず、IRF4とIRF1は肉芽腫の形成をはじめとするMRL/lprマウスの病態に異なる役割を演ずることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響で、平成23年度の一部の実験に計画にやや遅れがあったが、その後の各遺伝子ノックアウトマウスの交配が進み、それぞれの表現型の解析はおおむね達成された。IRF1単独欠損MRL/lprマウスの解析では、予想外の尿細管間質性腎炎の形成が認められ、この成果は2012年米国リウマチ学会と日本免疫学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に記載してある計画を基本として、研究を遂行する。 ただし、IRF1欠損MRL/lprマウスで予想外の研究成果(尿細管間質性腎炎の形成)が得られたため、本マウスでの病態解析も進める。 また、あらたな発見として、IRF4欠損MRL/lprマウスでは12週以降に脾臓CD19陽性B細胞がほぼ消失し、同じ現象がIRF4欠損MRL+/+マウスでも確認された。肉芽腫の形成やB細胞消失の原因として、IRF4欠損によるIFN-g産生性Th1細胞の増加、もしくは血清IFN-gの高値に基づく現象であることが推察されたため、新たにIFN-gとIRF4の二重欠損MRL/lprマウスを作成し、同マウスでの肉芽腫の形成やB細胞の解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の影響による一部の実験の遅延や国際学会等への参加取り止めのため、繰越金1,078,186円が生じた。 平成25年度は、上記の「今後の研究の推進方策」に則り、IRF1欠損MRL/lprマウスにおける尿細管間質性腎炎の形成の病態解析および、IFN-gとIRF4の二重欠損MRL/lprマウスの作成とその病態解析を積極的に進め、研究費はそれらのマウスの作成・維持費用および、病態解析費用(分子生物学的解析、フローサイトメーターを用いた細胞学的解析、および病理組織学的解析など)に使用される予定である。 上記研究成果は、3年に一度開催される第15回国際免疫学会(15th International Congress of Immunology)、および、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology(ACR) 2013)で報告する予定であり、研究費はその費用としても使用される予定である。
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