2011 Fiscal Year Research-status Report
免疫細胞制御における低酸素応答性転写因子群の役割の解明と炎症性疾患治療への応用
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23591453
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
牧野 雄一 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90345033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽田 勝計 旭川医科大学, 医学部, 教授 (00124751)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マクロファージ / 低酸素 / HIF-1 / 転写因子 / ChREBP |
Research Abstract |
申請者は、リンパ球やマクロファージの機能制御に、低酸素応答性転写因子(HIF-1)が密接に関与する事を見いだし、HIF-1を標的とした抗炎症療法の開発を目指している。薬剤によるHIF-1発現制御に加え、内因性HIF-1機能抑制分子IPASによるHIF-1機能の抑制が、炎症細胞制御、炎症性血管新生制御に有用であることを明確にしつつある。本研究は、免疫細胞機能制御におけるHIF-1およびHIF-1-IPAS 相互作用をはじめとする低酸素応答装置の役割を明確にすると共に、HIF-1および関連分子が媒介するシグナルの制御法を確立し、低酸素応答性転写因子群を標的とする新たな抗炎症療法、免疫制御法開発の基盤を築くことを目的として、本年度は以下のごとく展開された。1 免疫細胞におけるHIF-1a発現制御機構の解析 すでに、炎症組織中のT細胞、単球/マクロファージでのHIF-1αの発現を確認している。さらにex vivoの細胞培養系において、HIF-1α発現が低酸素、細胞活性化刺激の双方によって制御されることを発見した。本研究では、免疫細胞におけるHIF-1α発現制御の分子機構の解明をめざしている。従来、マクロファージなどの骨髄球系細胞においては、機能の維持に解糖系から得られるエネルギーが重要であることが示されていた。一方我々は、メサンギウム細胞においてグルコース応答性転写因子ChREBPがHIF-1αの発現を増強し、活性化することを示してきた。今回、THP-1細胞から誘導した培養マクロファージにおけるグルコースシグナルがHIF-1α発現に与える影響を検討した結果、マクロファージにおいてはChREBPの発現が微弱であり、HIF-1a発現制御にあたえるグルコースシグナルの影響は必ずしも高くないことが示唆された。LPS、PMAなどの活性化刺激によってもChREBP経路には影響がなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の他、計画した「疾患モデル動物におけるHIF-1 α発現の解析」はモデル作成の予備検討にとどまっている。同様に、「2 免疫応答・炎症制御におけるHIF-1システムの役割の究明」として、免疫細胞に発現したHIF-1 α、あるいはHIF-1 αを誘導する培養条件がいかなる標的遺伝子を作動させるのか、いかなる細胞機能、形質変化を誘導するかを明確にするため計画された、2-(1)低酸素が免疫細胞機能に与える影響の解明、2-(2)恒常的活性型HIF-1 α, 優勢抑制型HIF-1 α,HIF-1 α拮抗分子IPASが免疫細胞に与える影響の解析、2-(3)クロマチン免疫沈降/シーケンス法(ChIP-Seq)によるHIF-1の標的遺伝子の同定、2-(4)HIF-1標的遺伝子が免疫細胞の機能に与える影響の解析については骨格筋細胞などでの予備的検討の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は、上記の計画の継続ともに、「3 免疫細胞におけるHIFシステムの人為的調節と疾患治療の試み」として、3-(1)HIF-1 α発現に影響を与える薬剤のスクリーニング、3-(2)抗HIF-1分子IPASの発現誘導によるHIF-1機能抑制法の確立、3-(3)レンチウイルスシステムによる免疫細胞でのHIF-1 α活性の調節、3-(4)HIF-1発現制御化合物の炎症性疾患モデル動物における効果の解析、3-(5)ウイルスシステムによるHIF-1機能改変の炎症疾患モデル動物における効果の解析、3-(6)HIF-1ノックアウトマウス、IPASトランスジェニックマウスの応用、を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も今年度同様に、細胞培養実験に要する試薬、培養器具、動物実験に関わる動物購入費、組織標本作製など、消耗品を中心とする物品費を計上する。また、情報収集や成果発表のための学会参加に関わる旅費についても計上する予定である。
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