2011 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性菌の活性酸素除去システムをターゲットとする新規抗菌薬の開発研究
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23591476
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
柴田 洋文 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00093865)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗菌薬 / β‐ラクタム剤 / アイルスマー / マンガンイオン / ROS / SOS応答 |
Research Abstract |
各種金属イオンおよびオクチルガレートのさまざまな濃度の組み合わせで,オキサシリンのMIC値を測定し,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のβ‐ラクタム剤感受性増強効果(アイルスマー効果)に及ぼす影響を解析した.Fe3+はオクチルガレートの抗菌活性を増強し,Mn2+は低下させたが,Ca2+は抗菌活性に影響を及ぼさなかった.つぎに,アイルスマー効果に影響を及ぼす金属イオンに対する選択性の有無について検討した.その結果,Fe3+はアイルスマー活性を増強し,Mn2+はその活性を消失させた.Ca2+は,抗菌活性の場合と同様影響を示なかった,すなわち,多価金属イオンに対する選択性が存在することを明らかとした. Mn2+は細菌体内では,Mn-SODやカタラーゼの補因子,O2-の除去などに働く.また,β‐ラクタム剤等殺菌的抗菌薬による殺菌作用は,ラジカルの過剰産生と蓄積に伴う損傷が原因とする説がある.DNAを損傷するとSOS応答が起こることから,recAについてRT-PCRを行うことにより,SOS応答に対するオクチルガレートの影響を評価した.その結果,recAの発現はオキサシリンおよびオクチルガレート単独処理では増加する傾向にあったが,両者を併用すると減少した.このことから,オクチルガレートの作用機作のひとつに,SOS応答の障害がある可能性が示唆された.さらに,Mn2+の添加によりrecAの発現が回復することを明らかとした. 供試菌数の増加を目的として,徳島大学病院における環境由来の細菌を収集した(第27回日本環境感染学会総会において発表).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アイルスマー効果におけるROSによる酸化的損傷の寄与を明らかにすることを目的として,各種金属イオンが,オキサシリンに対するオクチルガレートのアイルスマー効果に及ぼす影響について解析し,Mn2+の添加によりアイルスマー効果が消失することを確認するとともに,この現象にはMn2+に対する選択性が存在することを明らかとした.また,Mn2+は細菌において,ABCトランスポーターであるMntABCによって取り込まれ,菌体内では,Mn-SODやカタラーゼ,アルギナーゼの補因子,O2-の除去などに働く.また,β‐ラクタム剤等の殺菌的抗菌薬による殺菌の原因は,ラジカルの過剰産生と蓄積に伴う損傷であるする説が有力である.菌体内においてラジカルが発生し,DNAを損傷するとSOS応答が起こることから,オクチルガレートの作用はSOS応答に影響すると推察される.この推察に基づき,SOS応答により合成が誘導されるrecAについてRT-PCRを行い,SOS応答に対するオクチルガレートの影響を評価し,オクチルガレートの作用機作のひとつがSOS応答の障害である可能性を示唆した.さらに,Mn2+の添加により,recAの発現が回復することを明らかとした.以上の成績から,本申請研究はおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして,各種キレート形成化合物がオキサシリンの抗菌活性に及ぼす影響を明らかにするため,ラクトフェリン,EDTA,o-フェナンスロリン,チオウレア,ビピリダモルなどのキレート形成化合物共存下,オキサシリンのMIC値,MBC値を測定し,ROSによる酸化的損傷が及ぼす影響を菌体の内外に分けて解析するとともに,スーパーオキシドジスムターゼ(SOD),カタラーゼの関与を明らかにするため,SODやカタラーゼ関連遺伝子(sodA, sodB, kat)欠損株を作成する予定である.作成したsodA-, sodB-,およびkat-株について,MIC値,MBC値を測定し,SODやカタラーゼ関連遺伝子の関与の有無や程度を明らかとする.さらに,細胞内ROS検出法を用い菌体内でのROSの消長について解析する.以上のデータをもとに,アイルスマー効果におけるROSによる酸化的損傷の寄与を明らかにするとともに,得られた結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予算削減の可能性があったことから,実験計画を縮小したため,当初の計画の一部が達成できていない.また,論文作成もまだ途上にある.そのため一部の研究費が未執行となり,これを次年度使用額に計上したが,実験は進行中であり,論文も作成中であることから,これらの研究費は次年度速やかに執行予定である. 次年度以降は当初の計画通り,プラスチック器具,各種粉末培地に加えて,ROSやSODなどの検出キット,抗体,制限酵素など薬品類,プラスチック器具類の購入,および学会での成果発表のため国内旅費,学術雑誌への論文投稿にあたり,外国語論文校閲料,論文投稿料として必要な経費を請求している.
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