2012 Fiscal Year Research-status Report
多剤耐性菌の活性酸素除去システムをターゲットとする新規抗菌薬の開発研究
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23591476
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
柴田 洋文 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00093865)
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Keywords | 抗菌薬 / β‐ラクタム剤 / アイルスマー / マンガンイオン / ROS |
Research Abstract |
各種キレート形成・非形成化合物のさまざまな濃度の組み合わせで,オキサシリンのMIC値を測定し,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のβ‐ラクタム剤感受性増強効果(アイルスマー効果)に及ぼす影響を解析した.供試化合物のうち,水酸基が1個のアルキルp-ヒドロキシベンゾエート類ではアイルスマ―効果が発現し,アルキルガレート類について得られた成績と同様の直鎖脂肪酸残基の炭素数に依存した構造活性相関を示した.一方,キレート形成化合物であるEDTAでは活性そのものはごく弱いもののアイルスマ―効果が認められた.これに対して,オクチルガレートの水酸基を種々の置換基で置換した一群の化合物では,アイルスマー効果が減弱,3個すべてをメトキシル基で置換した化合物では消失することを明らかとした. 平板でのスクリーニング時,Fe3+,Mn2+,Mg2+各イオン含有ディスクをスクリーニング化合物含有ディスクとともに設置し,形成される阻止帯の形状変化から,アイルスマ―効果におけるROSによる酸化的損傷の寄与の有無を視覚的に判定するシステムを構築した.(13th Asia-Pacific Congress of Clinical Microbiology and Infectionにおいて発表) 新たに入手した合成化合物,植物由来の抽出物34種について,MRSAに対するMIC値を測定した.そのうち,強い抗菌活性を持つ5種の化合物,および抗菌活性が非常に弱いか全く認められない10種の化合物を明らかとした.これらの化合物については,現在,アイルスマ―効果の有無を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種キレート形成化合物がオキサシリンの抗菌活性に及ぼす影響を明らかにするため,種々のキレート形成・非形成化合物共存下,オキサシリンのMIC値を測定し,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のβ‐ラクタム剤感受性増強効果(アイルスマー効果)に及ぼす影響を解析した.供試した化合物のうち,オクチルガレートの水酸基をメトキシル基に置換した化合物では,アイルスマー効果が消失したのに対して,水酸基が1個のオクチルp-ヒドロキシベンゾエートではアイルスマ―効果が発現した.キレート形成化合物であるEDTAではごく弱いがアイルスマ―効果が認められることを明らかとした. 細菌細胞内ROSの消長に関する研究は緒に就いたばかりで,まだ成果を得るには至っていないが,平板でのスクリーニング時に金属イオン含有ディスクを用いることにより,アイルスマ―効果におけるROSによる酸化的損傷の寄与の有無を,阻止帯の形状変化から視覚的に判定するシステムを構築した.このシステムの開発により,アイルスマ―効果におけるROSによる酸化的損傷の寄与について,化合物の構造活性相関に関する研究の遂行が容易になると期待される. 新規に入手した34種の化合物について,MRSAに対する抗菌活性の有無をスクリーニングし,アイルスマ―効果を有する新規化合物の開発につながる化合物ライブラリーの整備に努めた. 以上,本申請研究はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
保有する化合物ライブラリーについて,アイルスマ―活性をROSによる酸化的損傷の寄与の観点からスクリーニングし,構造活性相関を明らかにし,新規抗菌活性化合物のリードの開発に繋げるとともに,細胞内ROS検出法を用い菌体内でのROSの消長について解析する.以上のデータをもとに,アイルスマー効果発現のメカニズムを明らかにするとともに,得られた結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰越額は,現在作成中の論文の外国語論文校閲料,論文投稿料に使用する予定である.また,次年度は,各種粉末培地に加えて,ROSやSODなどの検出キット,抗体,制限酵素など薬品類,プラスチック器具類の購入,および学会での成果発表のため国内旅費,学術雑誌への論文投稿にあたり,外国語論文校閲料,論文投稿料として必要な経費を請求している.
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