2011 Fiscal Year Research-status Report
ファージ溶菌酵素を利用する新規ピロリ菌除菌法の開発
Project/Area Number |
23591478
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00190439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90346560)
内山 淳平 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20574619)
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 外膜 / バクテリオファージ / リガンド分子 / 溶菌酵素 |
Research Abstract |
本研究課題の最終目標は、我々が新規に分離したファージphiHP33について、その宿主であるピロリ菌への吸着に関与するリガンド分子およびペプチドグリカンを分解する酵素(溶菌酵素)の遺伝子を特定し、それらを融合させ、外膜通過可能な融合溶菌酵素を作成し、それをピロリ菌除菌に応用することである。本年度において、phiHP33は全く新規のファージであるため、まず本ファージの生活環の解明、およびファージ粒子構成タンパク質の遺伝子の特定を行なった。(1)本ファージのピロリ菌への吸着は、接触開始後15分で添加ファージ粒子の約30%が吸着したが、それ以上吸着反応は進行しなかった。本ファージは、菌への感染140分後から子ファージを放出し始め(潜伏期間140分)、約13個の子ファージを産生する、すなわちバーストサイズが13であることが分かった。また、本ファージは、検討したピロリ菌47株中、29株(宿主域62%)に感染できることが分かった。(2)リガンド分子特定のため、2度のCsCl密度勾配超遠心によりファージ粒子を高度に精製した。精製ファージ粒子について、構成タンパク質をSDS-PAGEで分離後、各タンパク質バンドについて質量分析により内部アミノ酸配列の解読を行ない、また量的に十分であるものについてはアミノ酸シークエンサーによるN-末端アミノ酸配列の解読も行った。前に決定していたDNA塩基配列26kbpの30個のORFと対応させることにより、7種のファージ粒子構成タンパク質の遺伝子を特定した。この内1~数個がファージリガンドタンパク質をコードしている予想された。(3) phiHP33のゲノムアノテーションにより、一般的に溶菌酵素遺伝子の近傍に存在するホリン遺伝子が特定された。これにより、本遺伝子の両端あるいは近傍に存在するORFが溶菌酵素をコードしていると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が分離したphiHP33は全く新規のファージであるため、ピロリ菌細胞内におけるファージ粒子の電子顕微鏡観察、吸着、潜伏期間、バーストサイズの解析を行ない、そのライフサイクルの全体像の概略を明らかにすることができた。また、ファージ粒子の構成タンパク質の種類を明らかにし、それらをコードする遺伝子を特定することができた。これは、ファージリガンドタンパク質を7種まで絞り込め、その量的関係から恐らく約4個以内に絞り込めていると予想される。また、ファージゲノムのアノテーションにより、DNA複製関係遺伝子クラスターおよびファージ構造タンパク質遺伝子クラスターを特定できており、かつファージによる溶菌と密接に関係するホリン遺伝子を特定できているため、溶菌酵素はその近隣の数個のORFに絞り込むことができた。以上から、本課題の遂行に必須である、phiHP33のリガンドタンパク質と溶菌酵素の特定にかなり近づいたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度の研究により特定されたファージ phiHP33 の構成タンパク質遺伝子7個を、発現ベクターにクローニングし、大腸菌で発現させ、それをCo-セファロースカラム等を使用して精製する。(2)各精製タンパク質とピロリ菌を混合し、低速遠心後の上清への当該タンパク質の残留の有無により、ピロリ菌への吸着を確認する。上清中のタンパク量が減少したものを、ファージリガンドタンパク質と特定する。(3)一方ホリン遺伝子の近傍に存在する比較的大きなORF数個を発現ベクターにクローニングし、大腸菌で発現させる。その菌破砕液をピロリ菌ペプチドグリカンを含むSDS-PAGEで分離し、泳動後タンパク質の再生処理を行ない、ペプチドグリカン分解活性をザイモグラフで検出する。ペプチドグリカン分解活性が検出されたクロンを溶菌酵素遺伝子として特定する。溶菌酵素をCoセファロ-ス等により精製する。(4)種々の架橋化剤を使用し、特定されたファージリガンド分子および溶菌酵素を結合させる条件を検討する。(5)融合溶菌酵素をピロリ菌に作用させせ、溶菌活性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬類(細菌用培地(馬血清費用を含む)、DNA解析用試薬等)150万円プラスチック製品 50万円、ガラス製品 20万円、論文校正・投稿費 30万円、旅費 10万円平成23年度の研究において、ファージ生活環の検討およびファージ粒子タンパク質の同定に若干予想を上回る時間を要したために、次年度に経費を繰り越すことになったが、次年度は当初の計画通り進める予定である。
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