2012 Fiscal Year Research-status Report
補体制御因子の糖化より検討した被嚢性腹膜硬化症の病態解明と治療戦略
Project/Area Number |
23591482
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大澤 勲 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60407252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 洋之 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30130438)
恩田 紀更 順天堂大学, 医学部, 助教 (60465044)
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Keywords | 補体 / 被嚢性腹膜硬化症 / factor H / properdin / C3 / 糖化現象 / HK-2細胞 / 膜侵襲複合体 |
Research Abstract |
1)ヒト腹膜組織の収集と検討:これまでに腹膜透析患者の腹膜組織の採取、腹膜組織の染色による炎症所見及び補体の沈着が確認された。腹膜炎の既往がある症例では、腹膜深層の結合織への膜侵襲複合体(MAC)の沈着が強い傾向が見られた。 2)培養細胞を用いた補体活性化の検討:既報では、腹膜透析液中の補体成分の存在が確認されている。そこで、当科で使用経験のあるHK-2細胞を用い、もっとも関連があると考えられる補体第二経路活性化の検討のための実験を行った。本実験では、補体源としてヒト血清を用い、培養HK-2細胞に血清を添加(5%及び25%濃度)した。血清由来の補体の影響を明らかにするために、明らかな形態変化及び培養細胞内による新たな補体産生が起きない条件を設定することができた。次に、同実験系におけるHK-2細胞上の補体成分及び補体制御因子(プロパジン(P)、ファクターH(fH)、C3、MAC)の沈着が蛍光顕微鏡とFACSにより確認され、血清由来の補体成分の沈着および補体第二経路の活性化の関与が示された。さらに補体第二経路における活性化に重要な分子Pとその抑制に重要な分子であるfHの働きについて検討を進めた。それぞれの単独添加では細胞表面への濃度依存的な沈着を認めたが、両者の混合添加では、競合的な沈着は示さなかった。また、血清添加前にPを先行して添加すると、C3およびMACの沈着が増強したことから、第二経路及びProperdin direct pathway(PDP)の活性化の関与が示唆された。 3)腹膜透析液排液の検討:前年度に続き、排液中の補体成分や活性測定を繰り返し行ったが、透析液中の高濃度なブドウ糖のため安定した結果が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.患者から得られた臨床病理検体の染色から、被嚢性腹膜硬化症においても補体の活性化が起きている傾向は確認できたが、腹膜組織の脆弱性から、組織薄切や染色の段階で十分な資料が得られないことが多い。 2.HK-2細胞での実験プロトコールの確立は順調に行い成果を得るに至ったが、患者由来の中皮細胞を用いた腹膜中皮細胞での応用まで進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までの結果から、被嚢性腹膜硬化症における補体のかかわりについては、疑いのないものとなった。次年度は最終年度であるため、これまでに十分な再現性を持った実験系が確立できなかったものについては実験を進めず、ヒト腹膜組織の組織染色と、今回確立した実験プロトコールを発展させ、補体の活性化および制御の検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、主に精製補体、細胞染色に使用する抗体の購入に充てるが、これまでの購入により、不足しているものは少ないと考えられる。旅費については、国内学会(腎臓学会・透析学会・補体シンポジウム)への参加・発表を予定している。
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Research Products
(5 results)