2012 Fiscal Year Research-status Report
筋ジストロフィーに対するアンチセンス治療における線維化因子の動態に関する研究
Project/Area Number |
23591495
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹島 泰弘 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40281141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 麻理子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60362787)
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Keywords | アンチセンスオリゴ / 筋ジストロフィー / エクソンスキッピング / 線維化因子 |
Research Abstract |
Duchenne型筋ジストロフィー(以下DMD)は、進行性遺伝性の筋疾患であり、20-30才台で死に至る重篤な疾患であるが、現在のところ有効な治療法はない。私たちはアンチセンスオリゴヌクレオチド(以下AS-oligo)によってエクソンスキッピングを誘導するDMDの治療法の有効性を、世界で初めて臨床的に明らかにした。しかし、この治療の臨床応用を広げるためには、その効果をさらに高めることが不可欠である。 DMDにおける病態の主体は筋組織の壊死・再生であるが、近年、本疾患の進行において、筋組織の線維化が重要な役割を果たしていることが明らかにされ、TGF-βなどの線維化促進因子およびそれらを制御する因子の動態が注目されている。アンチセンス治療によってジストロフィンの発現が誘導される際の線維化に関わる因子の動態を明らかにすることにより、DMDの治癒過程における線維化の制御機構を明らかにすることができ、さらに、これらの因子を修飾することによって、従来より検討しているアンチセンス治療の有効性をより高める新たな治療戦略を見いだせる可能性がある。 そこで、筋における線維化の原因となる炎症の指標として、DMD症例におけるプロスタグランディン産生に関して検討を行った。プロスタグランディンの代謝産物は尿中に排泄されるが、その尿中濃度を解析したところ、DMD症例では、対照に比して、高値であることが明らかとなった。これは、DMD症例の生体内において、線維化の原因となる炎症が生じていることを示す結果であった。また、エクソン45のスキッピングを誘導するAS-oligoであるAO85の効果をDMD症例において検討した。その結果、AO85が運動機能の改善誘導することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンチセンス治療における線維化因子の動態を解明するために、現在、臨床への応用を進めているAS-oligoであるAO85のDMD症例における効果を検討した。また、線維化の原因となる炎症のマーカーの検討を行った。これらの結果から、AO85が、生体内においても有効に働くことが明らかとなり、さらに、DMDにおける病態の一つとしての炎症の意義が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
DMD症例にAO85を投与した際の、線維化マーカーおよびプロスタグランディン産物の検討を進める。また、DMD症例培養細胞において、これらの線維化マーカーを修飾することによる、エクソンスキッピング療法の効果の変化を検討する。これらの検討により、現在臨床への応用が進められているエクソンスキップ療法の有効性を促進する方法を見出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
DMD症例筋培養細胞を用いた研究、プロスタグランディン代謝産物の測定などは、申請者の施設において頻繁に行われ、安定した成績を収めている。そのため、本研究を実施するにあたり、新たな設備備品を購入する必要は無い。DMD症例および筋培養細胞による研究試薬として細胞培養用試薬を、またmRNA発現の網羅的解析のためにマイクロアレイ解析用試薬を購入する。mRNAおよび蛋白の定量的解析のために、定量PCR用試薬・ウエスタンブロット用試薬を購入する。免疫組織染色用試薬は、組織における蛋白発現の局在を調べるために使用する。AS-oligoおよびPCR用のプライマーなどとして、オリゴヌクレオチドを追加合成する必要がある。
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[Presentation] A small chemical, TG003, enhances skipping of mutated dystrophin exons: the third example revealing a decrease of exonic splicing enhancer density in common.2012
Author(s)
Nishida A, Takeshima Y, Kataoka N, Yagi M, Awano H, Lee T, Iijima K, Hagiwara M, Matsuo M.
Organizer
The American Society of Human Genetics, the 62th Annual Meeting
Place of Presentation
San Francisco
Year and Date
20121106-20121110
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