2013 Fiscal Year Research-status Report
小児における受動喫煙の科学的実態調査およびがん予防の効果的研究
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23591514
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Research Institution | Gunma Paz University |
Principal Investigator |
井埜 利博 群馬パース大学, 保健科学部, 客員教授 (60138261)
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Keywords | PM2.5 / コチニン / 環境タバコ煙 / 受動喫煙 / 生体内指標 |
Research Abstract |
PM2.5は環境タバコ煙の指標としては極めて鋭敏な指標であるが、個々の受動喫煙を示すものではない。筆者らは同一個体児おいてPM2.5濃度と尿中コチニン濃度を同時測定し、その関連性について調査した。対象は3~10歳の20例、男女比8:12。PM2.5濃度測定はDylos, Air dust monitor DC 170を用いて24時間連続的に1分間隔に測定した。尿中コチニン濃度は翌朝の早朝尿を採取、高感度ELISA法により測定した。その結果、家族に喫煙者のいる児では平均PM2.5濃度および尿中コチニン濃度ともに著しく高く、喫煙母親のいない児では両者とも有意に低かった。PM2.5濃度(μg/m3)は87.6±57.6 vs51.2±32.3、p=0.048、尿中コチニン濃度(ng/ml)は24.5±29.1 vs3.0±2.7、p=0.008であった。またPM2.5濃度と尿中コチニン濃度はr=0.83と良好な正の相関を示し、環境省による外出禁止基準のレベルである平均PM2.5濃度が70μg/m3は、おおよそ尿中コチニン濃度20 ng/mlに相当した。 PM2.5濃度は児の環境タバコ煙の指標として優れているが、真の受動喫煙の評価はPM2.5濃度測定に加え、コチニン濃度測定等の生体指標を組み合わせた個別の調査が必要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り進み、研究結果が得られていると思います。
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Strategy for Future Research Activity |
中国で問題視されているPM(particulate matter、微小粒子状物質)2.5は大気中に浮遊している2.5μm以下の小さい粒子である。PM2.5の主体は硫酸塩であり、石炭やガソリンを燃やすと発生する二酸化硫黄が空気中で酸化することで生成される。これらの物質を一定量以上吸引すると、気管支から肺の末梢まで侵入し、肺胞壁に付着し外部に排出できなくなり、気管支喘息、気管支炎、肺癌等の呼吸疾患や循環器疾患をもたらす。本邦では子どもの日常生活においてPM2.5濃度の上昇の主原因はタバコ煙であり、私どもは従来から受動喫煙検診として、地域の子ども達の尿中コチニンを測定し、個々の受動喫煙との関連性を調査し報告してきた。今後の研究ではPM2.5濃度とコチニン濃度を同一個体で同時に測定し、両者の関連性について検討を加え、PM2.5濃度と個々の尿中コチニン濃度との関係を調査したい。前述した様に既に20症例は検討済みであるが、さらに症例数を増やして検討する予定である。少なくとも50例は必要であると考えている。また家庭内・外の受動喫煙の状況(外出した時の時間、レストランやデパートでの喫煙室等の状況やタバコの臭いがあったかどうか等)、両親祖父母の喫煙状況(1日の喫煙本数、喫煙場所、対象患児の前で喫煙したかどうか等、部屋の間取り(寝ている時はどこで寝ているか、また家族内の喫煙者はどこで喫煙しているか)等について聞き取りを行い、関連性を調査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事務用品の購入を計画していたが、今年度は購入の必要がなくなったため。 PM2.5濃度とコチニン濃度との関係調査のための検査費用、学会参加の際の参加費・交通費、本研究に必要な物品の購入や臨時雇用の人件費などへの使用を計画している。
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Research Products
(4 results)