2013 Fiscal Year Annual Research Report
感染・炎症による脳室周囲白質軟化症の病態と治療に関する研究
Project/Area Number |
23591515
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 明 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00251273)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅之 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, その他部局等, 室長 (50243407)
|
Keywords | 脳性麻痺 / 脳室周囲白質軟化症 / 新生児敗血症 / リポ多糖 / 黄色ブドウ球菌 |
Research Abstract |
脳室周囲白質軟化症(PVL)は早産児における脳障害の主要な病態であり脳性麻痺の原因として最も重要である。脳虚血だけでなく感染・炎症を含む複雑な病態が関与していることが疫学的研究等で示されてきており、新たな予防と治療に向けた対応が必要となっている。感染を介したPVLの病態の解明と治療法の開発の目的で、我々は感染機転による実験的なPVLのモデルを作成した。大腸菌由来のリポ多糖を使用し新生仔に投与して胎児期子宮内感染あるいは新生児敗血症のラットモデルを作成した。組織学的にヒトPVLと類似した脳室周囲の大脳白質のPVL様の病変が観察され、炎症性細胞であるミクログリア・マクロファージが病変部に出現していた。さらに大脳白質を構成する髄鞘生成細胞であるオリゴデンドログリアは広い範囲で細胞数が減少しており、二次的な髄鞘化も広い範囲で障害されていた。こうした結果から感染機転によってPVLのモデルとなる大脳白質病変が形成されることが明らかとなった。一方で、ヒトPVLの臨床研究にてグラム陽性球菌敗血症との関連も示唆されているため、続いて黄色ブドウ球菌由来毒素を用いて、同様の実験を行った。大変に興味深いことに、大腸菌由来リポ多糖と異なり、大脳白質病変ではなく海馬での神経細胞障害が強く認められた。特に海馬のCA1およびCA3の領域での著明な細胞数の減少およびアポトーシスを示すCaspase3発現細胞が認められた。また、こうした毒素に対する受容体であるToll-like受容体は、海馬にて強く発現が認められており毒素による直接的な細胞障害であることが示唆された。PVLは大脳白質の病変であるが、そうした児における認知障害の背景にこうした海馬病変がある可能性があり、今後、ヒトにおいても検討すべき課題である。我々の研究にて幼弱脳における細菌感染による多様なパターンの脳障害の存在が明らかとなった。
|
Research Products
(7 results)