2012 Fiscal Year Research-status Report
Star欠損マウスのステロイドホルモン産生細胞におけるトランスクリプトーム解析
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23591516
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 智弘 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70265867)
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Keywords | StAR / 先天性リポイド副腎過形成症 / ノックアウトマウス / 副腎皮質 / ステロイドホルモン / トランスクリプトーム / マクロファージ |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は,ステロイドホルモン生合成の律速段階であるミトコンドリア外膜から内膜へのコレステロール転送の分子機構を解明すること,である.当該期間では,steroidogenic acute regulatory protein (Star)欠損マウス胎生期の副腎皮質ステロイドホルモン産生細胞のトランスクリプトームを解析し,Star欠損マウス副腎の新たな病態生理を同定した. 以下に具体的な研究結果を示す.1) 胎生17.5-18.5日のStar-eGFP/Star欠損マウスの副腎からfluorescence-activated cell sorting(FACS)によりステロイドホルモン産生細胞を集積し,マウス全ゲノムマイクロアレイによるトランスクリプトームをさらに収集した.2)Ingenuity Pathway Analysis,NextBioを用いて,Star欠損マウスの副腎トランスクリプトームに特異的なパスウェイ解析を行い,コレステロール排出に関する遺伝子群,炎症・免疫応答に関する遺伝子群の発現が有意に亢進していることを同定した.3)Real time RT-PCRを用いて,コレステロール排出に関する遺伝子群,炎症・免疫応答に関する遺伝子群の発現亢進を実際に検証した.4)免疫組織化学染色を用いて,Star欠損マウスの副腎皮質組織へのマクロファージ浸潤を同定した. 以上の結果から,Star欠損マウスの副腎皮質組織に自然炎症(homeotic inflammation)に類似したリモデリングが生じていることを世界で初めて提唱し,新たな病態生理として国際的内分泌学会の英文医学雑誌へ報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Star欠損マウス胎生期の副腎ステロイドホルモン産生細胞のトランスクリプトームを解析し,英文国際医学誌へ報告するのは当初の研究計画通りであった.ただし,マウスの交配樹立率が予想より低かったこと,英文国際医学誌への投稿に際し求められた免疫組織化学染色による検証に時間を費やされたこと,などから,成獣期のトランスクリプトームを十分には獲得できなかった点が未達成であった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究計画の達成状況を勘案し,平成25年度の研究計画を以下のように推進する予定である. 成獣期のStar欠損マウスの副腎皮質,精巣,卵巣の各ステロイドホルモン産生細胞のトランスクリプトーム解析を行う.また,各種のマウスステロイドホルモン産生細胞株で,Star-eGFP/Star欠損マウスで得られたトランスクリプトーム解析データの再現性を確認し,機能的意義を追求する. 以下に具体的な研究計画を示す.1)週齢8のStar-eGFP/Star欠損成獣マウスの副腎・精巣・卵巣を摘出し,FACSによりステロイドホルモン産生細胞を集積し,マウス全ゲノムマイクロアレイによりトランスクリプトーム解析を行う.2) マウス副腎皮質腫瘍由来のY1細胞,マウスLeydig細胞腫瘍由来のMA10細胞,マウス顆粒膜細胞腫瘍由来のOV3121細胞それぞれにおいて,siRNAによりStarをノックダウンした細胞株を作成する.3)マウス全ゲノムマイクロアレイにより,Starノックダウン細胞株のトランスクリプトーム解析を行う.4)Star欠損マウスとStarノックダウン細胞株に共通して有意に発現を変動させた遺伝子群およびパスウェイを,Y1,MA10,ないしOV3121それぞれの細胞でsiRNAによりノックダウンする.5) 各種ノックダウン細胞株の培養液中に3βヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害薬添加下で分泌されるプレグネノロン濃度をRIA法により測定し,プレグネノロン産生能の変動と関連する遺伝子およびパスウェイを同定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は,効率的な物品調達を行ったことに起因する.翌年度の消耗品購入に充てる予定である. 具体的な予算の使用計画については,マウス飼育費(500千円),genotyping用のPCR試薬やマウス全ゲノムマイクロアレイ用のチップの購入費(400千円),細胞培養用の培地試薬・培養容器の購入費(260千円)を本研究費で支払う予定である.
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