2012 Fiscal Year Research-status Report
DUOX2遺伝子変異による先天性甲状腺機能低下症の有病率・臨床像・分子機序の解明
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23591517
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長谷川 奉延 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20189533)
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Keywords | 先天性甲状腺機能低下症 / DUOX2 / 機能解析 / 環境因子 |
Research Abstract |
甲状腺細胞濾胞面に発現するDUOX2による過酸化水素供給は甲状腺ホルモン合成系の律速段階である。DUOX2異常症における平成24年度研究実績は以下の通りであり、2つの英文論文(J Pediatr Endor Met 26:45-52,2013.およびAm J Med Genet A 161A:214-217, 2013)、5つの学会発表(第46回日本小児内分泌学会、第55回日本甲状腺学会、および第27回東北成長障害・成長因子研究会)において発表した。 1.先天性甲状腺機能低下症(Congenital hypothyroidism 以下CH)においてあらたに同定したDUOX2遺伝子のシークエンスバリエーション16種類について機能解析を行い、うち8つに過酸化水素産生能低下を証明した。 2.一過性CH 2例を対象としてDUOX2変異解析を行い、p.G488Rのホモ接合性変異、およびp.[L479SfsX3]+[G488R]の複合型ヘテロ接合性変異を同定した。機能解析により、G488Rの機能低下を証明した。 3.遅発性CH 1例を対象としてDUOX2変異解析を行い、p.[E327X]+[H678R]の複合型ヘテロ接合性変異を同定した。本症例の遅発性発症には母体ヨード過剰が関与していることを示した。すなわち両アレル性DUOX2異常症の臨床症状に環境因子が関与することを初めて明らかにした。 4.片アレル性DUOX2変異保有者のごく一部のみがCHを発症し、片アレル性DUOX2変異保有者の遺伝形式はメンデル遺伝には従わない多因子遺伝であることを明らかにした。 5.片アレル性DUOX2変異かつ片アレル性TSHR変異を二重に保有する者は、片アレル性DUOX2変異のみを保有する者に比して高いCH発症リスクを有する可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DUOX2異常症の疾患概念を確立することを目指す本研究の現在までの達成度は3年間全体の75%、平成24年度単年としては100%である。その理由を交付申請書に記載した「研究の目的」とともに述べる。 研究目的1.両アレル性DUOX2変異による先天性甲状腺機能低下症(Congenital hypothyroidism 以下CH)の一般人口および永続性CH患者集団における有病率を明確にする:平成23年度に達成すみである。 研究目的2.変異陽性患者の臨床像の分析により、両アレル性DUOX2変異保有者および片アレル性DUOX2変異保有者の遺伝形式を含む臨床像を明確にする:両アレル性DUOX2変異保有者の遺伝形式・臨床像については平成23年度および本年度に達成した。すなわち、本年度は両アレル性DUOX2変異保有者の臨床症状は、①永続性CHのみならず一過性CHあるいは遅発性CHもありうること、②環境因子の影響をうけること、を明らかにした。本年度さらに、片アレル性DUOX2変異保有者の遺伝形式・臨床像についてもある程度明らかにした。すなわち、片アレル性DUOX2変異保有者の遺伝形式はメンデル遺伝には従わない多因子遺伝である。また、片アレル性DUOX2変異保有者のうち、片アレル性TSHR変異をも保有する二重変異保有者は、片アレル性DUOX2変異のみを保有する者に比して高いCH発症リスクを有する可能性を示した。 研究目的3.変異DUOX2分子の発現実験系での機能解析により、DUOX2変異による分子機能喪失の機序を解明する:本年度新たに同定した16種類のシークエンスバリエーションについて、平成23年度に確立した解析方法を用いて検討し、8つの機能喪失を証明した。すなわち、研究目的3をほぼ達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
永続性CHおよび一過性CH(以下CH群)における片アレル性DUOX2変異保有者のCH発症機序、および臨床像との関連を検討する。 発症機序の検討:CH群およそ400名を対象とし、DUOX2およびTSHRの遺伝子解析を行う。DUOX2あるいはTSHR新規シークエンスバリエーションの機能を発現実験で評価する。患者集団と一般集団での変異頻度からCH罹患のオッズ比(OR)を算出、片アリル性DUOX2変異かつ片アレル性 TSHR変異保有者(以下二重変異保有者)のCH罹患率をベイズの定理から求め、片アレル性DUOX2変異保有者、および二重変異保有はCH発症のリスク因子であることを統計学的に証明する。 臨床像の検討:片アレル性DUOX2変異保有者、および二重変異保有者の以下の臨床情報を集積し検討する。新生児期におけるマススクリーニング・理学的所見・家族歴・母体妊娠経過・甲状腺機能・甲状腺超音波検査の各結果。病型診断時における甲状腺機能・TRH負荷試験・甲状腺シンチ・パークロレイト放出試験の各結果。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のうち直接経費はすべて以下を含む消耗品にあてる。 クローニングキット、細胞培養試薬、細胞培養容器、過酸化水素測定試薬、PCR用試薬、シークエンス用試薬、シークエンス用キット、ピペット類、印刷用紙、印刷用インク
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