2011 Fiscal Year Research-status Report
胎児期に起因する生活習慣病発症における脳末梢連関の異常と生後の栄養介入による予防
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23591520
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
山本 幸代 産業医科大学, 医学部, 講師 (20279334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 俊介 産業医科大学, 医学部, 助教 (20515481)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 視床下部 / 生後発達 / 摂食調節 / 母乳制限 / ネスファチン |
Research Abstract |
Nesfatin-1は脂肪組織とともに視床下部の両方に発現し脳脂肪細胞系の一因として発見された新規摂食調節蛋白で、その遺伝子発現は視床下部室傍核(PVN)、視索上核(SON)、弓状核(ARC)などの摂食に関連する神経核に認められる。またNesfatin-1は脳室内投与によりラットの摂食を抑制し、脳室内への慢性投与ではラットの体重増加抑制および体脂肪減少が報告されており、新規摂食抑制蛋白として注目されている。我々はすでにNesfatin-1の生後発達に伴う生理的変動を検討し、PVN、SON、ARCにおけるNesfatin-1遺伝子発現は生後発達過程においてそれぞれ特異的な発現動態のパターンを呈することを解明し、それぞれの部位における生理作用に密接に関連している可能性が示唆された。今回はNesfatin-1遺伝子の発現調節機構を解明する目的で、母乳制限が遺伝子発現に与える影響をin situ ハイブリダイゼーション法を用いて検討した。【方法】妊娠後期のSpraque-Dawleyラットを飼育、出生した仔ラットの脳を摘出した。母乳制限では8および14生日の仔ラットを24時間母ラットから分離した。視床下部でのNesfatin-1遺伝子の発現を合成オリゴヌクレオチドプローブを用いて検討した。【結果】視床下部でのNesfatin-1遺伝子の発現は24時間の母乳制限によって、GALP遺伝子の発現は出生後15日目に有意に増加した。【考察】生後早期の母乳制限によって視床下部でのNesfatin-1遺伝子の発現が増加したことによって、Nesfatin-1は生後発達過程の早期から摂食調節などの生理作用に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は脳・末梢連関の出生後発達の機構やそれを調節する種々の因子を解明し、子宮内の栄養・代謝・ホルモン変動や出生後の栄養の違いが脳・末梢連関の出生後発達に及ぼす恒久的影響を分子レベルで解明することによって、現代医療の主要な課題である生活習慣病のDoHADとしての発症機構解明を目指した研究を行うことを目的としている。23年度の計画の通りに、視床下部に発現する新規の摂食調節因子(ネスファチン)に焦点を当て、生後の発達機構やその機構を調節する因子を解明するため、生後発達に伴う遺伝子発現の変化や、生後早期の段階での母乳制限が与える影響を検討した。また当初の予定では、母乳過多など栄養過剰がおよぼす影響も検討する予定としていた。引き続き検討する予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
母体の栄養状態を通して、子宮内の栄養・代謝・ホルモン状態の変動が脳・末梢連関を構成する因子の蛋白・遺伝子発現の生後発達の様式や血中レベルの生理的変動に及ぼす影響について調べる。母ラットに対する実験的処置により胎児が受けた変化が、視床下部におけるペプチドの生後発達に及ぼす影響を検討する。また、子宮内環境悪化に起因した脳・末梢連関の異常が、生後の栄養状態によってさらに悪化する可能性が考えられる。母乳栄養児は生活習慣病の発症が少ないことが示されており、生後の栄養によっては脳・末梢連関の発達異常が改善する可能性も示唆される。また子宮内環境の悪化のみでは、脳・末梢連関の生後発達の異常は出現しない可能性もある。その場合は出生後の栄養状態の変動がさらに負荷されることで異常が出現することも予測されるため、生後の栄養の更なる影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
子宮内環境が脳・末梢連関の生後発達に及ぼす影響の検討:母体の栄養状態を通して、子宮内の栄養・代謝・ホルモン状態の変動が脳・末梢連関を構成する因子の蛋白・遺伝子発現の生後発達の様式や血中レベルの生理的変動に及ぼす影響について調べる。母ラットに対する実験的処置により胎児が受けた変化が、視床下部におけるペプチドやその受容体の蛋白・遺伝子発現の生後発達に及ぼす影響を検討する。子宮内環境悪化のモデルとしては、(1)母体食餌制限モデル(2)母体の栄養素欠乏モデルなどである。すべての実験において、仔ラットの表現型との関連を検討する。体重増加、体組成変化をすべての日齢で測定する。今回購入予定の実験動物用体組成計はインピーダンス法によってラットの除脂肪量と脂肪量を測定、解析することが可能である。(3)出生後の栄養の違いが、子宮内環境に起因する脳・末梢連関の出生後発達の異常に対する影響の検討方法としては、子宮内環境悪化のモデルと同様のモデルを使用する。出生した仔ラットに対する栄養介入の方法としては、(1):母乳制限、(2):授乳仔ラットの匹数制限による母乳過剰、(3):授乳中母ラットに対する低脂肪食、高脂肪食、低蛋白食、高蛋白食、を介しての低脂肪食、高脂肪食、低蛋白食、高蛋白食負荷、を用いる。(
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Research Products
(14 results)