2011 Fiscal Year Research-status Report
小児期発症の難治てんかんにおけるてんかん原性形成機序の解明
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23591521
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
林 雅晴 (財)東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (00280777)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 臨床 / 脳・神経 / 病理学 / 生体試料 / 発達障害 / 難治てんかん / 脳症 |
Research Abstract |
小児期発症難治てんかんのてんかん原性の形成機序を解明し、新規治療法の開発に寄与することを目的に、病理材料での組織化学的解析と患者髄液での解析を並行して進めた。(1).剖検脳でのイオンチャンネルに関する免疫組織化学的解析: West症候群(WS)で発症しLennox症候群(LGS)に移行した仮死後遺症(HIE)と滑脳症、両症候群の既往を有さないHIE例、対照の4群の大脳辺縁系で市販の抗体を用いてNav1.1表出を検討した。既往例、疾患対照で、対照と同様に、大脳皮質にNav1.1陽性の神経細胞が少数確認された(2012年10月第46回日本てんかん学会で発表予定)。一方、海馬、扁桃体での表出は一部の症例で障害されていた。(2).難治てんかんにおける神経ペプチド・モノアミン神経異常の解明: WS乳児例と対照乳児において、髄液中のアセチルコリン、神経ペプチド、モノアミン代謝物を比較・測定したところ、アセチルコリン値の上昇、抑制性神経ペプチドのグリシン・GABAならびにセロトニン代謝物(5-HIAA)の値の低下を見出した(ISRN Neurology投稿中)。(3).亜急性または再発・再燃を示すてんかん性脳症の病態解明: 精神症状・不随意運動が持続する自己免疫性脳炎において、急性期・回復期の患者血清による脳切片での免疫組織化学染色を行い、症状と関連する脳部位と結合する新規抗神経抗体のスクリーニングを進めた。17例での解析結果をまとめ、"Pathology: New Research"に発表した。10例で精神症状、不随意運動に関連して大脳皮質、大脳基底核・視床に陽性所見がみられた。さらにてんかん性脳症、辺縁系脳炎に関する症例報告を2編、Brain Dev(Epub)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従前の基盤研究 (C) (2) 145707929「進行性ミオクローヌスてんかん発症機構に関する神経病理学的検討」、17591129「難治性てんかんの治療法開発のための神経病理学的検討」、20591238「急性・慢性の小児神経疾患における難治性てんかん形成機序の解明」での研究成果を発展させ、病理材料での組織化学的解析と患者髄液での解析を並行して進めることにより、小児期発症難治てんかんのてんかん原性の形成機序を解明し新規治療法の開発に寄与するため、企画された。 てんかん原性におけるナトリウムチャンネルなどのイオンチャンネルの発現異常、興奮性・抑制性神経の不均衡、脳幹モノアミン神経障害の関与を明らかにするため、2つの個別研究を進めた。剖検脳でのイオンチャンネルに関する免疫組織化学的解析では、市販の抗体を用いて、世界で初めて、難治てんかん(West症候群・Lennox-Gastaut症候群)の既往を有する剖検脳の大脳辺縁系でナトリウムチャンネルの表出異常を明らかにした。難治てんかんでのイオンチャンネル発現異常の可能性が示唆された。さらにWest症候群乳児の髄液でHPLCとGC/MSにより、アセチルコリン、興奮性・抑制性の神経ペプチド、モノアミン代謝物を測定し、アセチルコリンの上昇、抑制性神経ペプチドならびにセロトニン代謝物の低下を見出し、難治てんかんとアセチルコリン代謝異常との関係を世界で初めて明らかにした。 さらに急性脳炎・脳症での難治てんかん発症機序を解明し、てんかん発作難治化の予防に貢献するため、日本で数多く報告されている亜急性のてんかん性脳症において、患者血清による抗神経抗体スクリーニングと髄液を用いた病態解明を進め、診断での同方法の有用性を明らかにするとともに、抗体陽性例と陰性例の臨床症状の違いを検証し、複数の英文書籍に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の(1)~(3)の研究テーマを継続して進める。(1).剖検脳でのイオンチャンネルに関する免疫組織化学的解析では、平成23年度の検討でナトリウムチャンネルNav1.1の表出異常を明らかにしたWest症候群・Lennox-Gastaut症候群以外の難治てんかん、具体的には進行性ミオクローヌスてんかん(PME)を来す小児期発症の疾患の剖検脳の大脳辺縁系において、パラフィン固定ヒト脳組織での機能を検証できた市販のNav1.1抗体を用いて検討を行い、臨床症状との関連、West症候群・Lennox-Gastaut症候群との差異を追及する。さらにNav1.1以外のナトリウムチャンネル(Nav1.2、Nav1.6)に関する解析も試みる。(2).難治てんかんにおける神経ペプチド・モノアミン神経異常の解明では、対象数を増やして髄液での検討を進めるとともに、剖検脳の大脳辺縁系・基底核でのモノアミン神経病変、マイネルト核・脚橋被蓋核でのアセチルコリン神経病変に関する検討も対象数を増やして進め、髄液での解析結果との関連を追究する。(3).亜急性または再発・再燃を示すてんかん性脳症の病態解明では、自己免疫性脳炎小児の対象数を増やして、血清を用いた抗神経抗体スクリーニングをさらに進める。また、免疫組織化学染色で対照脳切片と結合する免疫グロブリンの存在が確認された患者の血清を市販スクリーニングキットに反応させて、既存のNMDAR抗体、VGKC抗体、GABAR抗体、など抗神経抗体の有無をチェックし、免疫染色結果と比較を行う。さらに免疫組織化学染色と市販スクリーニングキット解析で新規の抗神経抗体の存在が推定された症例に関して、市販されているヒト・マウス脳蛋白ブロット済みメンブレンを用いて、血清のイムノブロット(ウエスタンブロット)解析を行い、抗神経抗体の分子量を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様に、以下の(1)~(3)の研究テーマを継続して進める。(1).イオンチャンネルに関する解析: 平成23年度に得られた研究成果をもとにして、進行性ミオクロ-ヌスてんかん(PME)の既往を有する遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)と神経セロイド・リポフスチン症(NCL)の剖検例の大脳皮質、海馬・扁桃体の連続切片において、ナトリウムチャンネルNav1.1表出に関する免疫染色を行い、West症候群・Lennox-Gastaut症候群との差異を追及する。さらに対照の大脳辺縁系切片で、市販のNav1.2・Nav1.6抗体を用いてNav1.1以外のナトリウムチャンネルに関する解析を試みる。(2).神経ペプチド・モノアミン神経の解明: West症候群既往例、PME既往を有するDRPLA・NCL例、てんかんの既往がない小児神経疾患剖検例を対象として、大脳皮質、海馬の連続切片で、グルタミン酸受容体・トランスポーターに対する免疫染色を行い、興奮性グルタミン酸系神経を評価し抑制性神経の不均衡を追究する。さらに同じ対象の大脳皮質、大脳基底核、脳幹の連続切片において、ドーパミン・セロトニン神経の受容体・トランスポーター表出を免疫染色により解析し、シナプスでのモノアミン神経異常を明らかにし、髄液での解析結果との関連を追究する。(3).亜急性てんかん性脳症の解明: 免疫染色で陽性所見が得られた症例の血清に、市販スクリーニングキットに反応させて、既存のNMDAR抗体、VGKC抗体、GABAR抗体、など抗神経抗体の有無をチェックし、免疫染色結果と比較を行う。さらに(3)の研究成果を、2012年5月下旬にオーストラリアで開催される国際小児神経学会議(第12回)・アジア大洋州小児神経学会議(第11回)合同会議で発表する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Oxidative stress in mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion (MERS).2011
Author(s)
Miyata R, Hayashi M, Tanuma N, Imamura T, Takanashi J, Nagata R, Okumura A, Kashii H, Tomita S, Kumada S, Kubota M.
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Journal Title
Brain and Development
Volume: 34
Pages: 124-127
DOI
Peer Reviewed
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