2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591524
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
時田 義人 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 周生期学部, 主任研究員 (50291175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | プロテオグリカン / 細胞増殖因子 / ニューログリカンC / コンドロイチン硫酸 / グリコサミノグリカン / 神経 |
Research Abstract |
ヘパリン結合性増殖因子の代表とされている繊維芽細胞増殖因子(FGF)は二十数種の分子により構成される増殖因子の分子ファミリーである。近年、これらのFGFの中に神経細胞に対して軸索の伸長や樹状突起の分枝を促す活性に加え、細胞間のシナプス形成を促進する活性を持つ分子種が報告されている。一方、ノックアウトマウスの解析からNGCはシナプス形成に関与していることが示唆されている。そこで我々は、シナプス形成機構の一部を明らかにする目的でニューログリカンC(NGC)とFGFの分子間結合に関する生化学的、細胞生物学的検討を行った。 一般にFGFはヘパリンと構造的に相関の高いヘパラン硫酸に修飾されたプロテオグリカンと相互作用して生理機能を発揮すると考えられている。これに加え、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンもFGFの生理作用の一部に関与していると考えられているが、その研究は遅れている。そこで、神経細胞のスパインに局在しているコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるNGCとFGFファミリー分子の相互作用に関して検討を行った。 本年度は複数のFGFファミリーのリコンビナント蛋白質を作製し、NGCのコア蛋白質との結合を生化学的に解析した。その結果、NGCと結合するFGFと結合しないFGFに分類されることが明らかになった。この結果から両者の結合はシナプス形成に関与する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の結果からNGCにより、可溶性分子であるFGFが将来シナプス形成を行う樹状突起のスパインに集積し、軸索に存在するFGF受容体に効率よく作用できるよう機能している可能性が示唆された。この結果は、すでに報告のあるシナプス機能に障害を示すNGCのノックアウトマウスのフェノタイプを分子レベルで説明する可能性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、この結果の再現性を他の手法で確認すると共に、この結果を基に、生体内における両分子の協調作用を意識した研究を展開したい。特に、人類遺伝学的解析により、NGCが統合失調症のリスク要因となる可能性が報告されていることから、今後の研究の方向性の一つとして、NGCの変異によるシナプス部へのFGFの集積効率の低下と精神疾患の発症に関して、モデル動物を用いた薬理学的、行動学的解析を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、初年度の結果の再現性を複数の実験手法で確認するため、培養細胞を用いた生化学実験を計画している。そこで細胞培養用の培地、血清、プラスチック培養皿などの購入に40万円程度を予定している。また、FGFのウエスタンブロットなどを行うため、特異抗体、ウエスタンブロット用膜、検出用の二次抗体や発色試薬などで30万円。実験動物の購入と飼育に20万円、国際学会参加費用に30万円を計画している。
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