2012 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群関連急性リンパ性白血病における細胞増殖機構の解明
Project/Area Number |
23591527
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
照井 君典 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (00333740)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 力 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50195731)
|
Keywords | ダウン症候群 / 急性リンパ性白血病 / JAK2 / CRLF2 |
Research Abstract |
ダウン症候群(DS)は健常人の約10-20倍の頻度で急性リンパ性白血病(ALL)を発症し、DS関連ALL(DS-ALL)では、高2倍体やt(12;21)などの小児ALLにおいて代表的な染色体異常の頻度が低いことが知られている。最近欧米のグループからDS-ALLの約20%でJAK2遺伝子の活性化変異がみられること、約60%でサイトカインレセプターの1つであるCRLF2の遺伝子発現が亢進していることが報告された。さらに、CRLF2遺伝子の高発現がみられる症例のほとんど(DS-ALLの約半数)でP2RY8-CRLF2融合遺伝子が形成されていることが明らかとなった。また、CRLF2高発現例の一部においてCRLF2遺伝子変異(F232C)がみられるという報告もある。しかし、本邦のDS-ALL症例におけるこれらの遺伝子異常の頻度は不明である。そこで、本邦のDS-ALL症例の診断時骨髄細胞を用いて、JAK2およびCRLF2遺伝子変異、P2RY8-CRLF2遺伝子再構成の解析を行った。本年度は新たに9例の解析を行い、解析症例は合計32例となった。その結果、DS-ALLの32例中3例(9%)でJAK2遺伝子変異(R683G)が認められ、CRLF2遺伝子変異は1例も認められなかった。P2RY8-CRLF2遺伝子再構成が認められたのは32例中6例(19%)のみであった。また、cDNAの得られたDS-ALLの24例と非ダウンALLの25例についてCRLF2の発現量の解析を行ったが、両者の間で発現量の違いはみられなかった。本邦のDS-ALLでは、欧米と比べてJAK2およびCRLF2遺伝子異常の頻度が低いことが明らかとなり、発症メカニズムが異なる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、本邦のDS-ALL患者の検体を用いて、JAK2遺伝子変異、CRLF2遺伝子変異、P2RY8-CRLF2遺伝子再構成、CRLF2の発現レベルの4項目について解析を行うことができた。本年度は新たに9例の解析を行い、解析症例は合計32例となった。本邦におけるDS-ALLの発症率を考慮すると、おおむね順調に集積することができたといえる。しかし、論文として成果を発表するためには症例数はまだ十分ではなく、40例程度を目標にさらに症例を増やす必要があると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析から得られた、本邦のDS-ALLでは欧米と比べてJAK2およびCRLF2遺伝子異常の頻度が低いという結果を、さらに症例を増やして確認する。また、P2RY8-CRLF2遺伝子再構成やF232C変異以外のCRLF2遺伝子異常や、JAK2以外のJAKファミリーの遺伝子変異が生じている可能性も考えられるため、これらについても解析を行う予定である。また、最近DS-ALLにおいてIL7R遺伝子変異が報告されたため、この変異についても解析する。さらに、JAK2およびCRLF2遺伝子異常と、予後を含めた臨床像との関連については、欧米においても十分に解明されていないため、この点についても調査を行いたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|