2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトヘムオキシゲナーゼ(HO)-1欠損症の第2例目発見:HO-1の機能的本質
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23591531
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小泉 晶一 金沢大学, その他部局等, 名誉教授 (50019973)
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Keywords | ヘムオキシゲナーゼ1欠損症、インド |
Research Abstract |
われわれは世界で初めて「ヒトHO-1欠損」症例 を発見した。(Yachie A, et al., J Clin Invest 103:129,1999)それによりHO-1酵素が生命の発生、生体の発育、恒常性維持に極めて重要な物質であることが知れた。しかし、1例のみの臨床病態からはHO-1欠損症の本質はつかみがたい状態が続いていた。 しかるに、われわれの第1例発見から十年余を経てようやく第2例目がインドで発見報告された。(Radhakrishnan N, et al., J Pediatr Hematol Oncol 33:74,2011) この症例は無脾症であることなど第1例目と臨床症状に類似性が高い。第2例目ではわれわれも遺伝子解析で協力し、エクソン2(R44X)のミスセンス変異がホモでみられストップコドンとなっていることが明らかとなった。この例は軽症で15歳を超えて比較的元気で生存おり、これは遺伝子変異箇所の違いによるのかもしれない。HO-1欠損症の報告が2例となったことで、本症の臨床病態像がより詳細に認識できるようになったのみならず、HO-1の機能的本質の解明にさらに一歩近づいた。私信では、同じインドでさらに複数例が存在するらしく、臨床病理と遺伝子学的検索が進められている。 その他、若年性関節リウマチの病態重症度のバイオマーカーとしてHO-1が有用であることを実証した。また、腎生検によらずに、尿沈査におけるHO-1発現を見ることで、腎疾患の重症度が推定できることがわかった。また、造血細胞移植後のサイトカインやHO-1蛋白発現プロファイルの解析が移植後回復経過観察に有用であることが知れた。動物実験では移植後GVHD軽減に培養キラー細胞が有効かもしれないことが知れた。さらに、神経系腫瘍培養細胞を用いた研究では、発癌遺伝子発現に関する情報伝達系の解析が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
待望のヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)欠損症の第2例目がインドで発見され、報告された。Radhakrishnan N, et al., J Pediatr Hematol Oncol 33:74,2011)この症例は報告前にわれわれに連絡があり、共同で遺伝子検索を実施した。われわれの第1例目とは遺伝子の異常個所が異なり、それが症状の違いに表現されている可能性が高いと思われる。さらに複数例が解析されつつあり、それによってHO-1欠損症の臨床像や病態がより詳しく知れるようになり、HO-1の機能的本質に一歩近づいた。全身性炎症疾患や腎障害、血管炎などにおけるHO-1の関与に関する研究も進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き第3例目、第4例目の発見に向けて、世界中の研究者や臨床家とのコミュケーションを密にしていきたい。私信では、同じインドでさらに複数例が存在するらしく、今回もわれわれと共同で臨床病理と遺伝子学的検索が進められている。複数の症例を集積することにより初めてその臨床像や病態がより詳細に認識され、HO-1の機能的本質が明らかになるので、今後もスクリーニングを継続する。腎生検によらずに、尿沈査におけるHO-1発現を見ることで、腎疾患の重症度が推定できる可能性がでてきたので、この方面の研究を発展させる。全身性感染免疫疾患におけるHO-1の関与を継続して検索する。造血細胞移植の経過中のHO-1の役割に関する研究も推進する。以上から、HO-1の造血系および感染免疫系調節機構における生理的重要性を追求する。 またこれも私信だが、アメリカでは新らたなHO-1遺伝子欠損マウスの作成が試みられており、その目的はヒトの胎生期に、脾臓の発生がHO-1遺伝子に依存している可能性を探ろうとするものである。先天性心疾患の存在しない無脾症はいまのところ我々の発見したHO-1欠損症のみであり、この遺伝子操作実験が、無脾症とHO-1欠損の関連を明らかにしてくれるかもしれない。 また、Casanova JLらは先天性心疾患のない無脾症単独症例を20~30症例見つけており、その原因遺伝子としてRPCAを検索している。HO-1遺伝子とRPCA遺伝子との関連も研究してみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すべて消耗品であるが、スクリーニング用のモノクローナル抗体、その他の試薬と細胞培養用品、および移植実験に使用するマウスの購入が主なものである。旅費は、国内および国外の学会や研究会に出席し、内外研究者との情報交換を行うためである。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Phosphodiesterase inhibitors suppress Lactobacillus casei cell wall-induced NF-kB and MAPK activation, and cell proliferation through a protein kinase A- or exchange protein activated by cAMP-dependent signal pathway.2012
Author(s)
Saito T, Sugimoto N, Ohta K, Shimizu T, Phtani K, Nakayama Y, Nakanuma T, Hitomi Y, Nakamura H, Koizumi S, Yachie A.
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Journal Title
The Scientific World Journal
Volume: 2012
Pages: 8-8
Peer Reviewed
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[Journal Article] Cellular Heat Acclimation Regulates Cell Growth, Cell Morphology, Mitogen-activated Protein Kinase Activation, and Expression of Aquaporins in Mouse Fibroblast Cells.2012
Author(s)
N Sugimoto, O Shido, K Matsuzaki, T Ohno-Shosaku, Y Hitomi, M Tanaka, T Sawaki, Y Fujita, T Kawanami, Y Masaki, T Okazaki, H Nakamura, S Koizumi, A Yachie, H Umehara
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Journal Title
Cell Physiol Biochem
Volume: 30
Pages: 450-457
Peer Reviewed
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[Presentation] Regulatory Role of Host IL-17 Via Control of Host Macrophage Activation Contributes to Less Acute Gvhd2012
Author(s)
Rie Kuroda, Katsuaki Sato, Hideaki Maeba, Toshihiro Fujiki, Shintaro Mase, Raita Araki, Kazuhito Naka, Makoto Naito, Yoichiro Iwakura, Akihiro Yachie, Shoichi Koizumi, and Ryosei Nishimur
Organizer
55th American Society of Hematology Annual Meeting
Place of Presentation
Atlanta, USA
Year and Date
20121208-20121211
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