2012 Fiscal Year Research-status Report
小児難治性固形腫瘍に対する同種ナチュラルキラー細胞による抗腫瘍効果
Project/Area Number |
23591532
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
合井 久美子 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70324192)
|
Keywords | NK細胞 / 小児難治性固形腫瘍 / GVT効果 |
Research Abstract |
進行期の神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫などの予後は集学的治療の進歩にも関わらず未だ不良である。固形腫瘍に対する同種移植例は世界的にも少ないが、一部でgraft-versus tumor(GVT)効果について報告が散見される。近年、NK細胞抑制性受容体のであるKIRリガンド不一致移植において、NK細胞による移植片対白血病効果が報告された。本研究では、同種末梢血、臍帯血由来のNK細胞KIRリガンド不一致ドナーの小児難治性固形腫瘍に対する影響を検証し、難治性小児固形腫瘍に対する臍帯血を含むKIRリガンド不一致移植ドナーの有用性とNK細胞による抗腫瘍効果の機構を明らかにすることで、合併症の少ないミニ移植をベースとしたNK細胞療法によりこれら疾患の治療成績の向上をめざすものである。 我々はすでに神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫細胞株における、NK細胞受容体リガンドの発現を検討し、細胞株によりNK細胞活性化受容体リガンドの発現に差異があること、さらに同種NK細胞による抗腫瘍効果にも差がある事を確認した。悪性ラブドイド腫瘍(malignant rhabdoid tumor,MRT)は幼小児期に腎、脳など様々な部位に発生する難治な固形腫瘍であり、その予後は他の難治性固形腫瘍と比較しても極めて不良である。MRT 細胞株おけるNK細胞受容体のリガンド発現と同種末梢血NK 細胞によるMRT 細胞株に対する細胞傷害活性を検討したところ、活性型受容体のリガンドは一部の細胞株で強く発現しており、MRT 細胞株を成人末梢血NK 細胞と混合培養後、生細胞比率を測定したところ、2細胞株でNK 細胞との共培養により著明な生細胞比率の低下が認められたことから、MRT においても同種NK細胞の傷害活性による免疫療法の可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小児難治性腫瘍各細胞株におけるNK細胞受容体リガンドの発現の詳細な検討については、ほぼ終了し、現在、薬剤によるリガンド発現の増強に関する検討を進めている。およびドナーNK細胞による抗腫瘍活性の検討については、末梢血および臍帯血NK細胞による抗腫瘍効果の比較も行っている。また、一部の腫瘍細胞株においてはKIRリガンドミスマッチにによる抗腫瘍効果の増強も期待できるのではないかと思われるが、日本人に於けるKIRリガンドミスマッチの頻度は低く、臍帯血NK細胞でのKIRリガンドミスマッチの検討はしばしば困難となっている。また、現在、ドナーNK細胞による抗腫瘍活性の得られ難い細胞株でのその原因についても検討しており、これが解明されれば様々な細胞株での新たな免疫療法の可能性が期待できるのではないかと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
NK細胞による抗腫瘍効果の得られやすい固形腫瘍細胞株の特徴を明らかにし、一方、抗腫瘍効果が得られにくい細胞株での原因と抗腫瘍効果の増強について検討する。抗腫瘍剤、レチノイン酸、Histon deacetylase(HDAC)阻害剤、移植後に使用する免疫抑制剤(シクロスポリン、FK506)、サイトカイン、放射線照射などの処理を各腫瘍細胞に行い、これによる抗腫瘍効果の増強について検討する。また、腫瘍特異的抗体(抗GD2抗体、抗HER-2抗体)で腫瘍細胞を前処置した後、ドナーNK細胞による細胞傷害活性を測定し、ADCCによる細胞傷害活性の増強についての検討をおこなう。また、これらの結果により、マウスの実験モデルを用いて、in vivoでの解析を進めていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|