2011 Fiscal Year Research-status Report
進行性神経芽腫に対するGD2特異的キメラ抗原受容体を用いた遺伝子改変T細胞療法
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23591533
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中沢 洋三 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (60397312)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / トランスポゾン / 神経芽腫 / がん免疫療法 |
Research Abstract |
進行性神経芽腫の予後はきわめて不良であり有効な治療法の開発が期待される。近年米国から、GD2ガングリオシドを標的とした人工T細胞受容体(キメラ抗原受容体;CAR)を用いた、進行性神経芽腫に対する遺伝子改変T細胞療法の優れた臨床成績が報告されている。しかし、その遺伝子導入にはレトロウイルスベクターが使用されており、本邦における臨床実施の妨げとなる。本研究の目的は、抗神経芽腫効果の高いGD2.CARと研究代表者が開発した非ウイルス遺伝子改変技術を組み合わせた、進行性神経芽腫に対する新規治療法を開発することである。平成23年度には、piggyBac遺伝子改変したGD2.CAR発現T細胞の大量培養法の開発を試みた。健常ドナー3名から末梢血を15mlずつ採取し、単核球に分離後piggyBacトランスポゾン法を用いてGD2.CAR遺伝子を導入した。その遺伝子導入細胞をインターロイキン(IL)-15存在下で3週間培養した。培養液には2%自己血清を添加し、動物材料および腫瘍細胞は加えなかった。21日目に得られた細胞(GD2.CAR-T細胞)は平均6.9x107個で、その約99%がCD3陽性、約30%がCAR陽性であった。GD2.CAR-T細胞を、GD2陽性腫瘍細胞株とIL-2存在下で混合培養したところ、培養5日目までに細胞株は完全に死滅した。現在、神経芽腫細胞株をGD2高発現群、中等度発現群、低発現群の3群に分け、GD2.CAR-T細胞の抗腫瘍効果を比較検討している。 GD2.CARを非ウイルス遺伝子導入法によって効率良くT細胞に発現させ、そのT細胞を低濃度自己血清存在下、動物材料・細胞株フリーの条件下で増幅させることに成功した。GD2.CAR-T細胞がGD2.発現細胞株を効率良く殺傷したことから、進行性神経芽腫に対する有効性および安全性の高い新たな治療法が創造される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PiggyBacトランスポゾン遺伝子改変に基づくGD2.CAR発現T細胞の樹立・大量培養に成功した。引き続き、樹立されたGD2.CAR発現T細胞のGD2陽性腫瘍細胞株に対する抗腫瘍効果がin vitroの実験系で確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は前年度に引き続き、樹立されたGD2.CAR発現T細胞の神経芽腫細胞株に対する抗腫瘍効果をin vitroの実験系で解析する。さらに、免疫不全マウスを用いたin vivoモデルを構築する。具体的には、10匹のNOD/SCIDマウスの腹腔に1x106個の神経芽腫細胞株を移植する(ヒト神経芽腫マウスモデル)。移植後3日目のマウス5匹にGD2.CAR-T細胞を尾静脈から輸注する。GD2.CAR治療マウス5匹と無治療マウス5匹の生存率をKaplan-Meier法で算出し、log rank検定を用いてその有意差を検定する。GD2.CAR治療マウスについては、2週間毎にフローサイトメトリー法またはPCR法を用いて輸注T細胞の生存を評価する。平成23年度及び平成24年度に得られた研究成果については、国内外の学会にて適宜発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費1,400,000円の用途を以下の通りに計画した。旅費300,000円内訳:海外学会・ミーティング参加のための航空機代および宿泊費(米国遺伝子治療学会)、国内学会参加のための航空機・電車代および宿泊費用(日本遺伝子治療学会、日本小児血液がん学会)物品費1,100,000円内訳:免疫不全マウス購入費300,000円、フローサイトメトリー用抗体・サイトカイン、培養液等の試薬代500,000円、神経芽腫細胞株の購入費300,000円
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