2012 Fiscal Year Research-status Report
進行性神経芽腫に対するGD2特異的キメラ抗原受容体を用いた遺伝子改変T細胞療法
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23591533
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中沢 洋三 信州大学, 医学部, 助教 (60397312)
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Keywords | がん免疫療法 |
Research Abstract |
米国では、進行性神経芽腫に対してGD2特異的遺伝子改変T細胞療法が臨床実施されているが、その治験ではGD2特異的キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子の導入に発がん性のあるレトロウイルス法が、CAR遺伝子改変T細胞の培養に動物血清および腫瘍細胞株が使用されている。本研究では、安全性の高いCAR遺伝子改変T細胞療法の開発を試みた。まず、健康ドナーのT細胞に、非ウイルス遺伝子導入技術piggyBacトランスポゾン法を用いてGD2特異的CAR遺伝子を導入し、その後血清フリー、動物材料フリー、腫瘍細胞株フリーの培養システムを用いて、CAR遺伝子改変T細胞を培養した。その結果、末梢血10mlから約7x10e7個までのCAR遺伝子改変T細胞が得られた。本法で樹立されたGD2特異的T細胞は、GD2陽性腫瘍株に対し、従来法で樹立されたGD2特異的T細胞と同等の抗腫瘍活性を発揮した。ヒトT細胞に対する本遺伝子導入法および培養法は、臨床応用の際に安全性および費用対効果の点で特に有用と考えられた。 また、本研究中に、GD2陽性神経芽腫に対するGD2特異的T細胞の抗腫瘍効果が、細胞株によって一様でないことが明らかとなった。その要因として、神経芽腫では、GD2抗原の発現頻度・強度が細胞株毎大きく異なること、共刺激分子の発現が低下・消失していること、腫瘍免疫の感受性に関わるカスパーゼ8の発現が消失していることが確認された。本結果は、神経芽腫がT細胞免疫に対して感受性が低い腫瘍であることを示唆した。そこで、神経芽腫の免疫感受性を高める試みとして、神経芽腫株培養液中にヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を添加し、その後GD2特異的T細胞を加える実験系を構築した。その結果、HDAC阻害剤添加群において、GD2特異的T細胞の抗腫瘍効果が増強されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画に挙げていた動物実験には到達しなかったが、in vitroの実験系において、非常に有用な知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、平成24年度研究において得られたin vitro実験の研究成果を、ヒト神経芽腫化免疫不全マウスを用いて再現させることを第一の目標とする。特に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を併用した遺伝子改変T細胞療法の動物モデルはこれまで報告されていないため、本モデルの構築はきわめて有意義と考えられる。具体的には、神経芽腫細胞株を免疫不全マウスの腹腔内に接種し、接種3日後から4日間HDAC阻害剤を内服させる。細胞株接種7日後にGD2改変T細胞を尾静脈から輸注する。輸注7日後の腫瘍量および全生存期間をコントロール群と比較する。また、本研究の成果を国内外の学会で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入物品を計画よりも安価に購入できたため1,088円の未使用額が生じた。 この1,088円は、次年度請求額90万円と合わせて次年度の研究に用いる。 平成25年度研究費は合計901,088円(1,088円は前年度繰越金)、内訳は以下の通り。 物品費601,088円(免疫不全マウスの購入に300,000円、試薬等の消耗品に301,088円)、旅費300,000円(国内外学会参加費)。
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