2011 Fiscal Year Research-status Report
抗体産生不全症における臨床経過の多様性とその病態解析―新規治療法の基礎的検討―
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23591535
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金子 英雄 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (80293554)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫不全症 / XLA / 高IgM症候群 / Helicobacter equorum |
Research Abstract |
XLA(X-linked agammaglobulinemia)、IgA欠損症、CVID (common variable immunodeficiency)、高IgM症候群はともに、抗体産生不全を特徴とする先天性の免疫不全症である。長期間経過観察していると同一の疾患であっても、その臨床症状は多様性が生じてくる。全く易感染を呈さないものから、頻回に感染症をくりかえすもの、呼吸不全にいたるもの、難治性神経疾患に罹患するものなど、様々である。本研究では、これらの臨床経過の差異がどのような病態により、もたらされるかを、サイトカイン産生、自然免疫、獲得免疫の観点から詳細に検討する。平成23年度は肺炎を繰り返し、各種の抗生剤に対して難治性であったXLA(X-linked agammaglobulinemia)の患者の病態を詳細に解析した。通常の培養では病原菌が検出されなかったため、肺の一部を外科的に切除し病理学的検討と、切除標本からDNAを抽出しBroad-range PCR法を用いて細菌の同定を試みた。病理学的には器質化肺炎の像を呈しており、慢性の炎症によるものと考えられた。細菌のリボゾームDNAを標的にしたPCRで、バンドが検出された。遺伝子配列を確認したところ、99.8%がHelicobacter equorum遺伝子と合致した。Helicobacter equorumの遺伝子をprobeとしてin situ hybridizationを施行したところ、切除肺組織にシグナルが検出された。Helicobacter equorumは、馬の糞便中に検出された細菌であり、今までヒトでの感染の報告はなかった。本例は、世界で初めてのHelicobacter equorumのヒトへの感染症例であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難治性の肺炎を繰り返すXLA患者の病態を詳細に解析した。その結果、世界で初めてのHelicobacter equorumのヒトへの感染であることを明らかにした。成果を英文の論文として発表することができた(Journal of Clinical Microbiology 2011) 。同一のAID遺伝子変異R190Xを有するにも関わらず表現型が異なる高IgM症候群の親子例について、体細胞変異、サイトカイン産生につき検討した。XLAの病因遺伝子産物であるbtkをsiRNAを用いて、ノックダウンするための基礎的検討を行っている。XLA患者が、高エンドトキシン血症にもかかわらず、エンドトキシンショッツクを生じない病態について検討をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)btkノックダウン単球細胞におけるサイトカイン産生:XLA患者のbtk遺伝子変異における機能の差異を検討するため。単球細胞株において、btksiRNAを、遺伝子導入し、stable transformantを得る。btk遺伝子およびタンパクの発現が検出されなくなった細胞株を樹立する。この、細胞株において、TLRsのリガンド刺激を加えて、btkノックダウン単球細胞株と、正常単球細胞株のサイトカイン産生について比較する。2)呼吸器症状を示すXLAと示さないXLAにおける遺伝子発現の網羅的比較:XLA患者の中で易感染を繰り返す者とそうでない者を抽出する。各患者よりリンパ球を分離する。磁気ビーズをもちいて、それぞれのリンパ球分画を採取する。RNAを抽出して、マイクロアレイにより、遺伝子発現を網羅的に解析する。発現に差がみられた遺伝子に関して、患者リンパ球を用いて、リアルタイムPCRで、定量的にその発現を比較する。さらにタンパクの発現についても解析する。3)XLA患者のbtk遺伝子変異導入によるサイトカイン産生:btkノックダウン細胞株に患者由来の各種の変異を導入したbtk遺伝子をtransfectする。その後、TLRsのリガンドで刺激し、サイトカインを測定する。変異の部位により、サイトカイン産生に差が生じるかを解析する。4)同一の遺伝子変異を有する高IgM症候群における臨床症状の違い:同一のAID遺伝子変異(R190X)を有するが臨床症状が異なる親子例では、他の遺伝子多型が関与して、表現型が異なっている可能性がある。親子間でサイトカインの発現プロフィールが異なる場合、その発現に関与する遺伝子群の多型の有無につき解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
btk, AID等の発現ベクターを作製するための、PCR キット、塩基配列を確認するためのシークエンサーキット、プライマ―購入等のために使用する。また、発現の有無を確認するために、細胞を染色する抗体等にも使用する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Structural property of soybean protein P34 and specific IgE response to recombinant P34 in patients with soybean allergy.2012
Author(s)
Morita H, Kaneko H, Ohnishi H, Kato Z, Kubota K, Yamamoto T, Matsui E, Teramoto T, Fukao T, Kasahara K, Kondo N
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Journal Title
Int J Mol Med
Volume: 29
Pages: 153-158
Peer Reviewed
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[Journal Article] Genetic variations in MyD88 adaptor-like are associated with atopic dermatitis.2011
Author(s)
An Y, Ohnishi H, Matsui E, Funato M, Kato Z, Teramoto T, Kaneko H, Kimura T, Kubota K, Kasahara K, Kondo N
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Journal Title
Int J Mol Med
Volume: 27
Pages: 795-801
Peer Reviewed
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[Presentation] Development of enzymatically digested peptides for immunomodulation therapy in patients with cow's milk allergy2011
Author(s)
Kaneko H, Ohnishi H, Morita H, Yamamoto T, Kubota K, Teramoto T, Kato Z, Matsui E, Kato H, Nakano T, Kondo N
Organizer
16th Asia Pacific Association of Pediatric Allergy, Respiratory and Immunology
Place of Presentation
Fukuoka, Japan
Year and Date
2011 – 1028
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