2012 Fiscal Year Research-status Report
抗体産生不全症における臨床経過の多様性とその病態解析―新規治療法の基礎的検討―
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23591535
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金子 英雄 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (80293554)
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Keywords | 抗体産生不全 / EDA-ID / IKBA / XLA |
Research Abstract |
免疫不全症を伴う無汗性外胚葉形成異常症(anhidrotic ectodermal dysplasia with immunodeficiency:EDA-ID)の免疫学的な臨床所見としては、低ガンマグロブリン血症、高IgM血症、NK細胞の活性低下などが認められる。病因遺伝子として、NEMOとIKBAが知られている。本研究で、新規のIKBA遺伝子異常を同定した。さらに、フローサイトメトリーを用いた単球のTNF-αの発現を解析することでEDA-IDのスクリーニングを迅速に行う方法を確立した(J Allergy Clin Immunol 2012)。本症例のQ9X変異は、今まで報告がなかったため、機能解析を行った。Q9X変異を有するIKBAをHEK293に導入し、NF-kappaB活性を測定した。変異IKBAの導入量が多くなるのに従い、NF-kappaB活性の活性が低下した。以上より、Q9X変異はEDA-IDの病因と考えられた。 XLA(X-linked agammagloublinemia)、高IgM症候群、CVID (common variable immunodeficiency)、IgA欠損症は、いずれも抗体産生不全を特徴とする。しかし、その表現型は非常に多彩であり、易感染を繰り返す症例からほとんど、症状を示さない症例まで非常に多様である。長期に経過観察中のXLA5例のうち、1例で足関節の骨髄炎が合併した。カルバペネム系の抗生剤は有効でなく、MRSAに対する抗生剤の投与にて改善した。1例は、進行性の神経変性症にて死亡された。1例のXLAは、末梢血中のB細胞がわずかに認められ、血清IgA , IgMが存在した。易感染の程度も強くなかった。他の2例は、ガンマグロブリンの定期的な補充により、易感染は認められていない。XLA患者の長期予後の多様性を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫不全症を呈する、EDA-IDやXLAの臨床経過、病態を明らかにすることができた。抗体産生不全症はB細胞、T細胞などの獲得免疫系の障害で生じる場合と、単球系細胞等の自然免疫系の障害で生じる場合がある。NF-kappa Bのシグナル伝達系は、獲得免疫系、自然免疫系の両者において重要な役割を果たしている。EDA-IDの病因遺伝子としてIKBAが知られていたが、Q9Xの変異は今まで報告がなかった。機能実験により、Q9Xを有するIKBAは、NF-kappa Bのシグナルを障害し、EDA-IDの病因となることを初めて明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
自然免疫と獲得免疫の両方の観点から抗体産生不全の病態について明らかにする。 1)BTKノックダウン細胞における自然免疫系の応答:XLA患者の自然免疫系、特に単球細胞の機能解析をおこなうためにBTKをsiRNAにてノックダウンした単球細胞株を樹立し、その細胞における、TLRからの反応をコントロール細胞と比較する。 2)高IgM症候群における表現型の違い:常染色体優性の遺伝形式をとる高IgM症候群としてAIDのR190X変異が知られている。しかし、R190Xを有しながら、免疫グロブリンの異常を呈さない場合がある。この違いを明らかにするため、免疫グロブリンのクラスイッチに関与する遺伝子の多型の関与について検討する。CD40, CD40L, UNG等の多型の有無について解析する。 3)免疫グロブリンを有するXLAの解析:XLAの一家系において、同一のBTK遺伝子変異を有するも、一人は、血清中にIgA, IgMが存在するが、もう一人はIgA, IgMが認められず、通常のXLAの表現型を示している。BTK遺伝子の発現の有無と塩基配列をビーズによりB細胞を分画し解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Paclitaxel-based chemotherapy for aggressive kaposiform hemangioendothelioma of the temporomastoid region: Case report and review of the literature.2013
Author(s)
Funato M, Fukao T, Sasai H, Hori T, Terazawa D, Kanda K, Ozeki M, Mizuta K, Hirose Y, Kaneko H, Kondo N
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Journal Title
Head Neck
Volume: 35
Pages: E258-61
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structural property of soybean protein P34 and specific IgE response to recombinant P34 in patients with soybean allergy.2012
Author(s)
Morita H, Kaneko H, Ohnishi H, Kato Z, Kubota K, Yamamoto T, Matsui E, Teramoto T, Fukao T, Kasahara K, Kondo N
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Journal Title
Int J Mol Med
Volume: 29
Pages: 153-158
Peer Reviewed
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[Journal Article] Repeated-dose pharmacokinetics of inhaled ciclesonide (CIC-HFA) in Japanese children with bronchial asthma: a phase I study.2012
Author(s)
Teramoto T, Matsui E, Fukao T, Sakai K, Yonezawa H, Kato Z, Ohnishi H, Kaneko H, Kondo N, Azuma J, Nishima S.
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Journal Title
Allergol Int
Volume: 61
Pages: 619-24
Peer Reviewed
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[Journal Article] Autosomal-dominant chronic mucocutaneous candidiasis with STAT1-mutation can be complicated with chronic active hepatitis and hypothyroidism.2012
Author(s)
Hori T, Ohnishi H, Teramoto T, Tsubouchi K, Naiki T, Hirose Y, Ohara O, Seishima M, Kaneko H, Fukao T, Kondo N
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Journal Title
J Clin Immunol.
Volume: 32
Pages: 1213-20
Peer Reviewed
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