2011 Fiscal Year Research-status Report
小児白血病融合転写因子の白血病化と傍白血病症状を呈する下流遺伝子の同定
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23591549
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
黒澤 秀光 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10205239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | PTHrP / E2A-HLF / PTHR1 / 高カルシウム血症 / アポトーシス |
Research Abstract |
17;19転座型急性リンパ性白血病(以後t(17;19)+ALL)の転写融合遺伝子E2A-HLFの下流遺伝子で白血病化や傍白血病症状を呈する遺伝子の同定と機能解析を実施ししている。現在解析している候補下流遺伝子はPTHrPである。平成23年度の実施計画の基づき以下の研究を実施した。t(17;19)+ALL細胞株においてPTHrPが高発現し、17;19転座を有していない白血病細胞株(t(17;19)-ALL)にE2A-HLFを導入するとPTHrPが誘導することを再確認した。1.PTHrPのfull length cDNAのクローニングと発現ベクターの作成:PTHrPは複数のsplice variantsがある。175aaと177aaの2つvariantsをPCR法でクローニングし、sheep metallothionein promoterを有するPMT-CB6+発現ベクターに組み込んだ。現在、nuclear localization sequence (NLS)(88-106aa)の欠失PTHrPのクローニング中である。2.PTHrPがE2A-HLFの下流遺伝子であることの証明:PTHrPのプロモーター領域をPCR法でクローニングした。E2A-HLFが結合する可能性のあるconsensus sequence類似領域を含むfragmentを作成し、pGL3 basic vectorに組み込みE2A-HLF誘導可能なt(17;19)-ALL細胞株に導入し、レポーターアッセイを予定している。3.高カルシウム関連遺伝子の発現を明らかにする:PTHR1、RANKLの遺伝子・蛋白発現の検討を行った。t(17;19)-ALL細胞株にE2A-HLFを導入した細胞株でPTHrPが発現誘導するとともにPTHR1も発現が誘導された。RANKLも発現誘導していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PTHrPの市販の抗体で、immunoblotで検出可能なものが少なかった。今までの論文でも、きれいなimmunoblotの提示は少なく予想はされていた。Immunoprecipitationなどで代用しているが、今後の研究を進めるうえで必須である。現在、他施設が作成した抗体の供与を依頼中である。1.PTHrPのfull length cDNAのクローニングと発現ベクターの作成:原因が不明だがクローニングにかなり時間を要してしまった。2種類のPTHrPのsplice variantsの発現ベクターの作成が終了している。2.PTHrPがE2A-HLFの下流遺伝子であることの証明:PTHrPのプロモーター領域各フラグメントをpGL3 basic vectorに入れる作業中である。3.高カルシウム関連遺伝子の発現を明らかにする:予定していたPTH1R、RANKL、OPG、MMP2、MMP9の遺伝子うちPTH1R、RANKLについてはE2A-HLFにより誘導されることが証明した。PTHrPの高発現にautocrine/paracrineに高カルシウム血症が生じている可能性が高いと考え、今後実験を継続する。4.PTHrP各領域の細胞局在の決定:蛍光抗体法やimmunoblot法に適したPTHrP抗体が得られなかったため、2012年以降に実施とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.PTHrPの機能解析:中間部PTHrPが乳がん細胞で抗アポトーシス機能を有する。t(17;19)+ALLの白血病化にPTHrPが関与している可能性がある。また、t(17;19)+ALL 特有の骨転移がPTHrPの細胞接着因子誘導により生じている可能性が予想される。PTHrPの2つのsplice variantsとNLS変異体をIL-3依存性mouse proB細胞株とPTHrP非発現白血病細胞株に導入して機能解析を実施する。さらに、レンチウイルスをsi RNA導入システムを用いたPTHrPのknockdownコンストラクトを作成し、t(17;19)+ALL 細胞株のPTHrP knockdownによる表現型確認の準備をする。2.PTHrPがE2A-HLFの下流遺伝子証明:クローニングしたE2A-HLFのconsensus sequence類似領域をpGL3 basic vectorに組み込みE2A-HLF誘導システムを有するt(17;19)-ALL細胞株に導入し、レポーターアッセイを実施する。3.高カルシウム関連遺伝子の発現を明らかにする: PTHrPに加えてPTHR1とRUNX2の発現を誘導することを確認した。細胞内動態を明らかにする。特にE2A-HLFの正常counterpartであるE4BP4がPTHrPにより細胞内で誘導されることが報告されている。詳細に検討したい。4.t(17;19)+ALLにおけるPTHrP各領域の細胞内局在を決定する:PTHrPの良好な抗体の入手を急ぎ、場合により抗体を作成する。N末領域(1-34aa)は細胞外に分泌する。分泌したN末領域の定量をpeptide enzyme immunoassayを用いて測定が可能である。さらに、核と細胞質に分画して、免疫蛍光抗体法で中間領域のPTHrPの局在を示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行における経費は消耗品と謝金である。ほとんどの実験機器を有しているため備品の購入は予定していない。実験は主にヒト白血病細胞株を用いる。このため、培養に関する消耗品すなわち試薬・培養液・ピペット・培養用フラスコ、さらにレンチウイルスをsi RNA導入の試薬・peptide enzyme immunoassayキットなどを購入する。ウエスタン法・免疫蛍光抗体法を実施するため、PTHrPの抗体などを追加で購入する予定である。実験補助1名に実験器具の洗浄・試薬作成・滅菌などを週に1回の割合でお願いしている。1日5時間勤務で週1日、4月から翌2月までで年間約20万円である。他に共同研究者がなく実験遂行上はこの業務は実験補助に依頼することで、実験の効率を上げたいと考えている。以上、昨年度の残金593円と今年度支給額を合わせて支出する予定である。今回の申請は本研究を遂行する上で必要な消耗品と謝金のみであり、申請は妥当であると考えている。
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