2011 Fiscal Year Research-status Report
動物モデルを用いた川崎病血管炎発症メカニズムに関する分子免疫学的研究
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23591579
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中村 明宏 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (50313854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜岡 建城 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60189602)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 川崎病 / 自然自己抗体 / IgM / 古典経路 / C1エステラーゼインヒビター / 血管炎動物モデル |
Research Abstract |
カンジダ抽出物(CAWS)誘発血管炎マウスモデル (川崎病動物モデル)を用いた生化学的、実験病理学的研究からCAWS投与後、血管炎発症に伴い早期より増加するIgM型自己抗体を見いだした。本年度は同抗体の特徴についてプロテオミクスを含む蛋白質化学的解析を試み、主要な抗原としてミトコンドリアおよび細胞質に存在するいくつかのエネルギー代謝関連酵素が同定された。。同抗体は複数のマウス組織蛋白質を認識するが、この反応性はCAWSおよびmannanにより部分的だが競合的に阻害された。このことは自己抗原のエピトープとmannoseを含むCAWS成分との構造的類似性が予想させるものであり、CAWSによって増加したIgM型自然抗体は、糖タンパク質や進化的によく保存されたミトコンドリア酵素などの自己の蛋白質と反応している可能性が示唆された。また、免疫組織化学的解析から、炎症初期より、本モデルにおける炎症後発部位である大動脈起始部周囲へのIgMの沈着を認めた。IgMは免疫グロブリンのなかで、最も効率よく補体系を活性化する事が知られている。これについては大動脈起始部のIgM沈着部位に一致した少量の補体成分C3a, C3dの沈着を認めた。CAWS誘発血管炎の発症にIgMを起点とする補体反応(古典経路)が関与していることが示唆された。上記の結果を承けて、現在、補体経路(古典経路)を阻害することで、血管炎を制御しうるかどうかについて調べている。なおまだ予備的なデータであるが、本マウス血管炎モデルにC1エステラーゼインヒビターを反復投与したところ、炎症細胞の浸潤抑制や大動脈弁の浮腫状変化の抑制が認められた。川崎病と本動物モデルの血管炎に共通の発症機序があるかどうかは、更なる慎重な研究が必要だが、補体経路は川崎病のあらたな治療標的となりうる可能性があり、この面に着目したさらなる研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAWS誘発血管炎の発症機序は不明であるが本年度の研究でCAWSに応答して増加するIgM型自己抗体の性質が対応抗原の同定などを含めて、ある程度明らかに出来たことで、この血管炎の背景にいわゆる自己自然抗体による自己免疫応答があることが判明したことは、今後の研究の方向性を決める重要な成果と位置づけられ, 前年度の研究によって本年度以降の研究を進めるための理論的基盤を確立することができたと考える。まだ予備的ではあるが、古典経路、レクチン経路を抑制する事でCAWS誘発マウス血管炎を抑制した。これまで、同モデルではヒトの川崎病の場合と同様に免疫グロブリン大量投与や抗TNFα抗体の投与の血管炎抑制効果が報告されているが、補体経路はこれらとは異なる新たな治療標的になりうる可能性が示唆された。本モデルを用いて実験的治療研究を進めていくうえで、重要な知見と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は血管炎を発症させるIgM型自己抗体の性質をより詳細に知るべく、CAWS投与マウスよりIgM型自己抗体のモノクローン化を試みる。さらに同抗体をマウスに投与してその炎症惹起能を評価し、この結果をもとに血管炎発症に関わるPathogenicなモノクローナルIgM抗体を分離し、その免疫生化学的特徴づけを行う。一方で本研究の結果と実際の川崎病臨床との接点を探るべく、川崎病患児から得た血清検体中におけるマウスモデルで見いだしたものと同様の抗原特異性を有するIgM型自己抗体の探索、および初代培養冠状動脈内皮細胞への患児由来の自己抗体あるいは他の検体成分の作用をマイクロアレイやプロテオミクス等の網羅的解析により明らかにすることを計画している。なお同実験は計画全体の時間配分を考慮すると、最終年度にかかる事もありうる。予備的なデータでC1エステラーゼ阻害蛋白質がマウス血管炎を部分的ながらも抑制した事は、補体経路が治療標的になりうる可能性を予想させる。この結果を基礎として、投与時期や回数、遠隔期における血管リモデリングへの影響等についての詳細な解析を進める。さらに効果前年度の予備的な検討からマンノース結合レクチンもまたCAWS誘発血管炎に関わる可能性が示唆された。古典経路とならんで、レクチン経路について阻害ペプチドが報告されていることから、同経路を標的として、血管炎抑制効果の解析も試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
IgM型自己抗体のモノクローン化や培養冠状動脈内皮細胞を用いた解析などを行うため、細胞培養に必要な試薬、物品の購入に充てる。ただし一般的な物品の多くは共通物品として研究室の予算ですでに購入しているため、本年度の研究費は培養細胞および、一部の特殊培地の購入に充てる。proteomics解析に要する物品の多くは前年度すでに購入しており、本年度の研究費で購入するものはほとんどない。一方、本年度はマイクロアレイによる解析も計画しているため、外部委託費用を本年度の研究費から支出する予定である。またレクチン経路の抑制のための合成ペプチドの委託合成にもあてる予定である。
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Research Products
(4 results)