2011 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン・プロテアソームに着目した多発性嚢胞腎病態生理に基づく疾患特異的治療
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23591580
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
中西 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50336880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 徳茂 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10158412)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多発性嚢胞腎 / CPKマウス / ユビキチン・プロテアソーム / 上皮間葉移行(EMT) / 疾患特異的治療 |
Research Abstract |
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease、PKD)は、わが国で最も頻度が高い遺伝性疾患であり、慢性腎不全の主要な原因の一つである。常染色体優性(ADPKD)と常染色体劣性(ARPKD)があり、臨床上の差違にもかかわらず共通の基本的病態生理が存在する。本研究の目的は、多発性嚢胞腎の複数の基本的病態生理におけるユビキチン・プロテアソーム蛋白分解機構(ubiquitin-proteasome system、UPS)の関与とその機序を解明し、それらを修飾することによる病態生理に基づいた疾患特異的治療開発のための基礎的知見の獲得、およびそのヒトへの応用のためのモデル動物を用いた治療研究による効果の確認である。<cpkマウスARPKDモデル> cpkマウスARPKDモデルは、藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センターから供与を受け既に当大学の動物実験施設において維持されている。生後1日、1週、2週、3週のcpkマウスおよび同腹のマウス(対照)を用いている。<研究遂行の基本方法> 標的分子の発現を蛋白と遺伝子レベルで検討し、疾患進行に伴い対照と比較して蛋白レベルのみの低下をきたした分子にUPS関与が考えられ、それらの分子についてUPS関連分子群の検討によりUPSの関与とその機序を明らかにする。具体的には以下の実験を進めている。蛋白発現:免疫組織化学染色、ウエスタンブロッティング、遺伝子発現:in situ hybridization、リアルタイム PCR、蛋白分解の定量:in vitro degradation assay、ユビキチン化の定量:in vitro ubiquitination assay。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の基本病態におけるUPSの関与を示すために着目する分子について、研究が着実に進行している。【1】細胞分化の異常・上皮間葉移行(EMT)における検討 EMTの機序としてWnt系、Hedgehog系情報伝達の変化を想定している。Wnt系:Wnt群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。Hedgehog系:Hedgehog群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。【2】増殖・細胞周期異常における検討 ErbB 系(EGFR 系): EGF,TGF-α,それらの受容体 EGFR/ErbB1、情報伝達下流分子群。サイクリン、およびその関連分子。【3】腎間質線維化における検討 TGF-βおよびSmad分子群(Smad2、Smad3、Smad7) 現時点で【3】が最も進んでおり、PKDにおけるTGF-β・Smad系の異常を確認しており、現在それらにおけるユビキチン・プロテアソーム蛋白分解機構の関与につき検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、以下のPKDにおける基本病態につき研究を遂行予定である。【1】細胞分化の異常・上皮間葉移行(EMT)における検討 EMTの機序としてWnt系、Hedgehog系情報伝達の変化を想定している。Wnt系:Wnt群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。Hedgehog系:Hedgehog群、その受容体、情報伝達下流分子群、およびそれらの修飾分子。【2】増殖・細胞周期異常における検討 ErbB 系(EGFR 系): EGF,TGF-α,それらの受容体 EGFR/ErbB1、情報伝達下流分子群。サイクリン、およびその関連分子【3】腎間質線維化における検討 TGF-βおよびSmad分子群(Smad2、Smad3、Smad7) また、最近のPKDにおける国内外の研究成果を考慮し、検討すべき基本病態の追加・変更を考慮する必要がある。具体的には、PKDにおける高血圧発症機序に関して上皮性ナトリウムイオンチャネル(ENaC、epithelial Na+ channel)の検討などを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、腎組織におけるタンパク発現と遺伝子発現の解析が主要な部分となる。タンパク発現検討に不可欠な組織切片の作成にマイクロトームを使用する予定で、その経費が発生する。また、微量な蛋白の発現を微細構造の中で詳細に検討するために、プラスチックに組織を包埋する予定であるので、その薄切用に特殊なガラスナイフをマイクロトームにセッティングする必要がある。 電気泳動、免疫組織学的染色、各種ブロッティングなどの実験機器・器具が必要である。 種々の高価な抗体等が必要であり、また、分子生物学的実験試薬の種類も多く、その費用が発生する。 本研究の成果は画像により示される部分が多く、その作製のための費用が必要である。 本研究分野の成果は日進月歩であり、国内外において積極的に最新の知見を収集することにより、本研究の軌道を調節する必要があり、旅費が発生する。また、積極的に国内外の学会発表や英文誌への投稿を目指すため、その旅費や英文校正の費用が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] 多発性嚢胞腎診療指針2011
Author(s)
乳原善文, 香村衡一, 木村理, 嶋村剛, 田邉一成, 土谷健, 成田一衛, 中西浩一, 西尾妙織, 奴田原紀久雄, 野村信介, 花岡一成, 東原英二, 堀江重郎, 武藤智, 望月俊雄
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Journal Title
日本腎臓学会誌
Volume: 53
Pages: 556-583
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[Presentation] cpkマウスARPKDモデルにおける上皮間葉移行(EMT)2011
Author(s)
向山弘展,中西浩一,戸川寛子,濵武継,島友子,宮嶋正康,吉原大輔,長尾枝澄香,高橋久英,飯島一誠,吉川徳茂
Organizer
第52回日本腎臓学会学術総会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
2011.6.15-17
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[Presentation] Acceleration of Smad3 phosphorylation at linker regions via c-Jun NH2-terminal kinase (JNK) in cyst-lining epithelial cells in cpk mouse, a model of ARPKD.2011
Author(s)
Mukaiyama H, Nakanishi K, Hama T, Togawa H, Shima Y, Miyajima M, Takahashi H, Nagao S, Iijima K, Yoshikawa N
Organizer
The 44th Annual Meeting of the American Society of Nephrology
Place of Presentation
Philadelphia
Year and Date
2011.11.8-13
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