2011 Fiscal Year Research-status Report
胎生期における肺血管の発生機構の分子生物学的解明と新規肺血管特異的新生因子の探索
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23591583
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内田 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (50286522)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 肺血管 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
(1)肺血管における2型IP3Rの発現様式の観察肺発生の各段階に沿って、肺血管における2型IP3Rの時間・空間的発現様式をLacZ染色で観察した。2型IP3Rノックアウトマウスは翻訳開始領域にLacZ遺伝子を挿入しているためLacZ染色で感度よく内在性の2型IP3Rの発現様式を観察しうる。2型IP3Rは胎生期および生後1か月において、肺動脈では中膜に、大動脈では内膜に特異的に発現していた。(2)肺高血圧症における2型IP3Rノックアウトマウスと野生型マウスとの比較低酸素飼育またはモノクロタリンピロールの腹腔内注射による肺高血圧症モデルを2型IP3Rノックアウトマウスと野生型とで作製し、心エコー解析、右心室重量測定、肺組織切片における中膜肥厚の有無等を比較検討した。(3)発生段階別肺血管内皮細胞を用いたマイクロアレイ解析肺血管発生が進行する胎生14日と生後2日の肺組織を酵素処理によって分散し、血管内皮細胞表面マーカーCD31でラベルしたのち、FACSで細胞分離を行った。分離した肺血管内皮細胞からRNAを抽出し、ラベル後、マイクロアレイ解析を行った。発生が進むにつれて、細胞の分散が困難となったが、酵素処理の条件検討の末、胎生14日、生後2日のマウス数匹から10数匹の肺組織から5×1000~10000個オーダーの細胞が回収された。この細胞数から抽出されたRNA量で増幅することなくマイクロアレイを十分実施することが可能であった。マイクロアレイ解析の結果、発生段階で発現量が有意に5倍以上増減する因子が全500弱存在した。その中で、データベース上、肺組織に比較的多く発現する因子等に絞り、最終的に6因子に着目した。それぞれの因子について、免疫組織化学法や切片in situ hybridization法で発現様式を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺血管発生に沿って血管内皮細胞を分離しRNA抽出しマイクロアレイ解析を実施できた。そこで興味ある6因子を新規肺血管新生因子の候補として的を絞り、現在さらに組織切片において肺血管特異的に発現しているか否かを解析中である。交付申請時には、本年度末に空間的発現様式の結果を得、さらに、RTPCR等で体血管と肺血管での発現差を比較する予定であったが、マイクロアレイ解析に必要なRNA量を十分に得るだけの血管内皮細胞を分離することが比較的困難であったため、予想以上に条件検討の期間を要した。したがって、空間的発現様式や体血管と肺血管での相対的発現量の比較は、現在解析中である。一方、最終年度に行う予定であった、成獣2型IP3Rノックアウトマウスに低酸素飼育またはモノクロタリンピロール腹腔内注射による肺高血圧を作製し野生型との比較検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マイクロアレイで獲得した肺血管特異的血管新生候補因子のin vitro機能解析:マイクロアレイ解析から得られた肺血管特異的血管新生の候補因子を、市販の肺血管内皮細胞株に強制発現、または、siRNAによる発現抑制を行い、肺血管内皮細胞の血管新生能や血管透過性に対する効果の有無を調べる。すなわち、in vitro tube formation assay, Boyden chamberを用いたin vitro migration assay, [3H]sucrose permeabilize assayを行う。さらに、血管内皮細胞間の接着をVE-cadherinの免疫染色により観察する。(2)マイクロアレイで獲得した因子の肺組織を用いた肺血管透過性亢進能の解析:成獣マウスから摘出した肺組織に主肺動脈から灌流する潅流肺組織を用いて、今年度に得られた肺血管特異的血管新生の候補因子単独または、血管透過性亢進薬との併用で血管透過性が変化するか否かを観察する。(3)2型IP3Rノックアウトマウスの肺血管平滑筋細胞初代培養を用いたin vitro解析:本年度の研究より2型IP3Rは肺動脈平滑筋細胞に特異的に発現するという結果を得た。そこで、野生型またはノックアウトマウスから分離した肺血管平滑筋細胞の初代培養を用いて血管平滑筋マーカーの発現変化をRTPCRで検討し、Boyden chamberを用いたin vitro migration assayを行って遊走能を観察する。(4)成獣2型IP3RKOマウスを用いた病的環境下における肺血管の観察:成獣2型IP3RKOマウスを用いて、低酸素飼育またはモノクロタリンピロール腹腔内注射による肺高血圧モデルにおける肺動脈の形態変化を2型IP3RKOマウスと野生型マウスを用いて作製し右心室圧や右心室重量、肺動脈の形態変化や血管透過性を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(本年度未支出額)の予算は、マウス飼育費(動物実験センター利用料)の年度末請求が遅れたためであり、次年度もマウス飼育費に充当される予定である。したがって、本年度はほぼ予定通りの執行となった。次年度は、培養細胞または肺組織を用いたin vitro解析を新たに開始するため消耗品費が必要となる。肺高血圧モデル作製にあたり、遺伝子改変マウスの使用と飼育が必要となるため、動物実験センター利用料に多くの予算が充てられる。
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