2013 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期における肺血管の発生機構の分子生物学的解明と新規肺血管特異的新生因子の探索
Project/Area Number |
23591583
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
内田 敬子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (50286522)
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Keywords | 発生・分化 / 肺血管 / マイクロアレイ / 脈管形成 / 血管新生 / 肺高血圧 |
Research Abstract |
研究の具体的内容:2型IP3Rの肺血管における発現様式を観察したところ、胎生期には肺動脈中膜に、成獣では肺動脈内膜および中膜に発現していた。そこで、2型IP3R欠損(KO)マウスを用いて低酸素曝露による肺高血圧モデルを作製した。すると予想に反して肺高血圧の増悪(右室肥大や肺動脈中膜肥厚)が観察された。一方、KOマウスの肺組織では、野生型と同等にcGMP濃度が上昇しており、肺動脈内皮の一酸化窒素産生系は維持されていることが示唆された。現在、肺動脈平滑筋の初代培養を用いて、細胞外からのカルシウム流入量を共焦点顕微鏡下に測定しているが、流入カルシウム量の遺伝子欠損型と野生型との比較にはまだ条件検討を要する。 発生段階別に肺組織から分離した血管内皮細胞を用いたマイクロアレイ解析により、胎生14日においてTbx4が比較的高く発現しているという結果を得た。各発生段階の肺組織から肺末梢血管の原基である肺間葉系細胞のみを分離し定量PCRで発現量の経時的変化を観察したところ、Tbx4は胎生14日から15日に発現のピークがあり、生後に非常に低値となることがわかった。また、同時期の肺から分離した肺間葉系細胞をマトリゲル上に培養すると管腔を形成することを見出した。肺発生初期の肺血管形成にTbx4が如何に関わるか、今後RNAiを用いたTbx4の発現抑制による効果を検討していく予定である。生後2日に比較的発現が高い分子としてSca1にも着目した。フローサイトメトリーと免疫組織化学法により、Sca1陽性細胞は生後の肺間葉系組織で急激に増加するという結果を得た。 本研究の意義、重要性:本研究は、肺高血圧を抑制する新たな細胞内カルシウムシグナル機構の解明や、胎生期の肺血管の発生や生後有効なガス交換を可能にする正常な肺血管新生に関与する新たな分子機構の解明に繋がる可能性がある。
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