2011 Fiscal Year Research-status Report
子宮内胎仔発育遅延モデルにおけるネフロン数減少機序解明とその治療法の開発
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23591584
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
粟津 緑 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20129315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛彈 麻里子 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (20276306)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ネフロン数 / 子宮内環境 / 母体低栄養 / 母低ステロイド / 尿管芽 / カスパーゼ3 / 細胞運動 / DOHaD |
Research Abstract |
Caspase-3-/-ノックアウトマウスホモ接合体(Casp3-/-)の糸球体数はヘテロ接合体(Casp3+/-)に比し30%減少していた。そこで糸球体数の決定因子である胎仔後腎の尿管芽分岐数を調べた。胎生13日のCasp3-/-の尿管芽先端数はCasp3+/-の1/3であった。この理由としてcaspase-3の尿管芽細胞の細胞運動への関与が考えられた。申請者は尿管芽細胞の3次元コラーゲンIゲル内培養系でみられるcord formation、Boyden chamber法による細胞遊走がcaspase-3阻害薬により抑制されることを示した。より生理的な細胞遊走の評価法wound healing assay においてもcaspase-3阻害薬は培養尿管芽細胞の細胞遊を遅延させた。またcaspase-3が創傷部のleading edgeの細胞において活性化されていた。またcaspase-3はROCK1、p38などの腎発生に重要なkinaseおよびベータcateninを切断し、それらの活性を制御する。Casp3-/-後腎のP-MYPT1(ROCK1活性の指標)、ベータcateninの発現はCasp3+/-に比しそれぞれ減少、増加していた。母体低栄養により低下する活性型caspase-3は上記の2機序を介しネフロン形成を阻害する可能性が考えられる。 ベータcatenin活性化作用を有するlithiumを新生仔ラットに投与、生後3週における糸球体数を比較した。Lithiumは毒性を有し、恐らく腎性尿崩症を来すためと考えられるが、体重減少を来たし致死となった。Lithiun投与量、投与日数を漸減し、体重に影響しない量を投与したラットの生後3週の糸球体数を比較したが、差は認められなかった。Lithium投与によるネフロン数増加の試みはその腎副作用のため現実的でないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の一つ、母体低栄養によるネフロン数減少におけるcaspase-3の役割の解明は順調に進んでおり、2/3は達成できている。 もう一つの計画、lithiumによるネフロン数増加は残念ながら実現不可能ということが明らかになった。代替案としてBMP7投与を考えている。 また平成25年度に行う予定のエピジェネティクスの研究も開始している。マウス母体低栄養後腎のMIAMI法解析においてはメチル化された遺伝子は2個しかなく、その1個の遺伝子のmRNA発現はむしろ増加していた。現在ラットモデルのMeDIP解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Caspase-3の尿管芽分岐抑制機序を詳細に検討する。第一に後腎におけるcaspase-3の活性型cleaved caspase-3の発現を蛍光免疫組織染色により検討する。またin vitroの系でのcleaved caspase-3の局在も明らかにする。3次元コラーゲンIゲル内で尿管芽細胞がcord structureを形成する際のcleaved caspase-3の発現部位、またphalloidin共染色によりactinとの関連を調べる。第二にcaspase-3の作用機序を明らかにする。シグナル伝達系(ROCK1、ベータcatenin、p38)を介する機序、細胞骨格(caspase-3の標的であるactin、microtubule associated protein tau)に直接作用する機序、の二つの可能性が考えられる。これらを尿管芽細胞、Casp3-/-、Casp3+/-の後腎のwestern blotにより解析する。 並行して、母体低栄養の胎仔腎ネフロン形成への影響をCasp3-/-、Cas3+/-で比較する。母体低栄養モデルではcaspase-3の活性が減少していることから、Casp3-/-の尿管芽数は母体低栄養に影響を受けないと予想される。 ネフロン数減少による結果を検討するため7か月のCasp3-/-とCasp3+/-を比較したところ、Casp3+/-に比しCasp3-/-の糸球体サイズは増大していたが尿蛋白は少なく血清クレアチニン、血圧は低値であった。これは予期しない結果で、糸球体肥大を生じても硬化への進展を抑制できる可能性を示す事実であり、このメカニズムを検討する。 母体ステロイドの後腎への影響はautophagyによるとの仮説を検証するため、培養後腎細胞、尿管芽細胞をデキサメサゾンで処理し、autophagyの有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度未使用額の発生は予定していた学会が誌上発表となったため参加しなかった結果であり、次年度の消耗品購入に充てる予定である。次年度の研究費は消耗品購入の他、機器使用、病理標本作製、旅費(発表のためのアメリカ腎臓学会出席)、登録料、論文投稿料、印刷費に使用する。
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Research Products
(10 results)