2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591585
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新村 文男 東海大学, 医学部, 准教授 (30282750)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腎障害 / 酸化ストレス / 抗酸化防御機構 / Nrf2 / Keap1 / 糸球体硬化 / 間質繊維化 / シクロスポリン |
Research Abstract |
Nrf2ノックアウトマウスにおいて糸球体ポドサイト特異的な障害を惹起した。蛋白尿に関しては、対照群と同程度の高度蛋白尿を呈した。糸球体硬化の評価については、スコアリングによる評価、およびネフリンの染色性などを指標に評価している。傾向としてはNrf2遺伝子の不活化により糸球体障害が増悪しているが、顕著な差異を認めない。Nrf2ノックアウトマウスにおいてシクロスポリン腎障害を惹起するモデルについては、シクロスポリンによる腎障害が軽微なものにとどまってしまったため、評価が困難な状況となっている。投与量、投与法について再検討を開始している。Nrf2マウスの飼育については、年度途中において、ヘテロ接合体の妊孕性が低下し、コロニーの維持が困難となってしまった。そのため、人工授精した受精卵を仮親に移植してヘテロ接合体を得る作業を必要とした。 Keap1ノックダウンマウスにおいて糸球体ポドサイト特異的な障害を惹起したマウスにおいては、蛋白尿の出現が抑制され、また、糸球体硬化病変の軽減を認めた。このモデルにおいて、Keap1との結合を免れたNrf2蛋白が核内において過剰に存在していることを証明することを試みている段階である。Keap1ノックダウンマウスの飼育はCGEHDにて実施している。原因は不明であるが、Keap1ノックダウンマウスにおいては、腎盂の拡大を伴った腎奇形を有する確率が高いことが観察された。その割合はおよそ3分の1から、時に2分の1程度のこともあり、実験に支障を来している。何故水腎症を呈するのかについては、本研究の目的とやや異なるが、小児における腎障害を来す原疾患として腎尿路奇形が注目されていることから、この点についても研究の余地があると考えるに至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Nrf2ノックアウトマウスを用いた実験系では、コロニーを増やす際に、従来飼育していたヘテロ接合体の妊孕性が低下しており、次第にコロニーの維持が困難となる事態に陥った。そのため、人工受精によりヘテロ接合体を得るという作業を行わざるを得なくなった経緯がある。糸球体足細胞障害モデルでは、期待された障害の増悪がみられず、その解釈や背景にある生体内の出来事(代償機転など)について再考する必要が生じている。シクロスポリンによる腎障害モデルでは、従来の投与量にて軽微な障害しか観察されず、投与量や投与経路、投与期間について条件を変えた検討を開始したところであり、遅れが生じている。あるいは、Nrf2ノックアウトマウスで期待される腎障害の増悪については、期待されたほどの増悪が観察されないという可能性もある。 Keap1ノックダウンマウスを用いた実験系では、その原因は不明であるが、水腎症を呈するマウスが3分の1から2分の1程度観察され、支障を来している。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現や血清中の各種因子の測定を十分に行うに至らなかった点で、試薬などの研究費が予定よりも少なくなったが、動物の飼育に対して当初の予定よりも多くの金額を要したものである。次年度においては解析に関する費用が必要になることが見込まれる。 Nrf2ノックアウトマウスを用いた実験系では、最終的な表現型としての蛋白尿や糸球体硬化、間質繊維化といった変化は、期待されたような劇的な増悪を認めていない。この点については、Nrf2の下流にあって、Nrf2による発現調節を受けていると考えられる分子について検討をすることが必要と考えている。また、何らかの代償機転が働いている可能性が十分にあり、その探索も必要と考えている。 Keap1ノックダウンマウスについては、おそらくはNrf2の活性をup-regulateすることで、腎障害の軽減が図られていると考えられるが、それを直接的に証明することが必要であると考えている。Nrf2を蛋白レベルで解析することが必要になるが、細胞全体での検討では期待された結果が得られず、細胞内の分画、とくに核内での増加の有無についての検討が必要と考えている。 また、Nrf2が欠乏しても病変の悪化は顕著とならずに済むのにも関わらず、Nrf2が活性化されると病変は軽減されるという現象については興味深く、追求する必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シクロスポリンによる腎障害については、腎障害を明らかに呈する投与量や投与法を決定した後に、Nrf2ノックアウトマウス、Keap1ノックダウンマウスにおいて腎障害を惹起する。少なくとも、最終的な表現型である間質繊維化についての影響度を検討する。マウスの飼育はCGEHDおよび医学部棟内の飼育施設にて行っているが、飼育に要する費用として、年間60万円を見込んでいる。実験に供することができるマウスが、水腎症の発症などにより支障を来す状態が続くと、飼育に要する費用が増額される可能性はある。組織学的検索および、リアルタイムPCR法などによる遺伝子発現の解析、血清中の各種因子の測定などに要する費用として、30万円は必要と考えている。その他、情報収集目的の国際学会参加に20万円程度を見込んでいる。
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