2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスの視点から見た胎盤機能不全における絨毛細胞機能障害機構の解明
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23591596
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福嶋 恒太郎 九州大学, 大学病院, 講師 (40304779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野間 和夫 九州大学, 大学病院, 助教 (30380413)
藤田 恭之 九州大学, 大学病院, 助教 (20398077)
諸隈 誠一 九州大学, 環境発達医学研究センター, 特任准教授 (50380639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 絨毛細胞 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
妊娠高血圧症候群(PIH)の病態形成には活性酸素種(ROS)を介した血管内皮機能障害が関わることが知られるとともに、PIH患者胎盤では、虚血性心疾患等における低酸素再潅流障害において重要な役割を担うとされるXanthine Oxidase(XO)の発現上昇が報告されている。本年度は、TCL1の培養上清中XOとその基質であるXanthine(X)の同時添加やH2O2添加が、TCL1細胞に与える影響を解析し、X/XOによって生成されるH2O2はEVTにアポトーシスを誘導しうることがわかった。また、活性酸素種の供給源となり得るTCDDの影響についても検討したが、TCDDは絨毛細胞のアポトーシスを誘導しないことがわかった(Fukushima, HET,2011)。虚血再潅流障害等によって胎盤で誘導されるXOはH2O2を介して、血管内皮だけではなくEVTのCell Fate決定に関与している可能性を示したものと考えられ、今後その機構をさらに解析していく。妊娠全期間を通じて血圧が正常範囲内で推移した母児ともに合併症のない妊婦について、妊娠32週以降分娩までの妊婦健診で測定した血圧がpre-HT(収縮期血圧130以上140未満ないし拡張期血圧80以上90未満) に相当する71例と、対照403例について周産期予後を比較した。前者は妊娠前半における妊婦健診(中央値16週)の収縮期、拡張期血圧が有意に高く、出生体重およびその標準からの偏差が有意に小さく、SGA児の割合が高く、分娩前に術前検査等で測定した母体血中尿酸値が有意に高値であった。多変量解析では妊娠32週以降の1mmHgの拡張期血圧が上昇すると、SGA児のオッズ比は1.09と有意に上昇していることがわかった(Fukushimaら、Hypretens Res 2012)。in vitroの知見を裏付ける臨床的知見であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は予定していた実験のうち、絨毛細胞由来細胞株を用いて、活性酸素種添加ならびにサイトカイン等の諸種の刺激・阻害因子を負荷しその細胞生物学的効果について検討する。刺激・阻害因子としては、細胞外基質、酸素濃度、活性酸素供与体(xhantine oxidase, xhantine)、フリーラジカルスカベンジャー(superoxide dismutase(SOD)、catalase、 L-NAME、液性因子(TNF)を用いて、EVT機能分化の指標は細胞運動能、絨毛細胞分化マーカーのタンパク発現、HIF1A発現、転写活性、マトリゲル上でのtube formation、接着能、浸潤能(Boyden Chamber法)については、おおむねの解析を終了することができた。受理されるにはいたっていないものの現在までに英文論文誌に投稿は果たし、リビジョンの実験中である。また、臨床的解析として、母体血中の活性酸素種の上昇や高尿酸血症がみられることがよく知られていることから、474例の妊娠全期間を通じて血圧が正常範囲内で推移した母児ともに合併症を有さない妊婦について検討し、拡張期血圧が上昇した妊婦では、たとえ正常範囲内の変化で、妊娠高血圧症候群の合併がない場合でも、PIHと同様の病態を示している化膿性を示唆することができ、成果を英文論文として発表することができた(Fukushimaら、Hypretens Res 2012)。今後その機序について免疫組織化学、細胞生物学的に検証する必要がある。研究費の使用は遅れているものの総じておおむね順調に成果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は胎盤における活性酸素種障害の発生について、1)絨毛細胞由来細胞株を用いて、活性酸素種添加ならびにサイトカイン等の諸種の刺激・阻害因子を負荷しその細胞生物学的効果について検討を続け、英文誌受理をめざす。刺激・阻害因子としては、これまでと同様に細胞外基質、酸素濃度、活性酸素供与体(xhantine oxidase, xhantine)、フリーラジカルスカベンジャー(superoxide dismutase(SOD)、catalase、 L-NAME )、液性因子(TNF、VEGF)を用いる。EVT機能分化の指標は細胞運動能、絨毛細胞分化マーカーのmRNA/protein発現、低酸素時のHIF1A発現、転写活性、マトリゲル上でのtube formation、接着能、浸潤能(Boyden Chamber法)2)昨年度の知見を発展させるために8OHdG、superoxide dismutase等の免疫組織化学染色、を行い、これらの酸化ストレス関連タンパクの発現を検討するとともに、あわせて娩出後の胎盤をビニル袋に入れ、水を張った水槽内に置き、ARFIを搭載した超音波装置(シーメンス社ACUSON S2000)で収束超音波パルスで組織を歪ませ、生じる剪断弾性波の伝播速度(Vs値;m/s)を測定することで胎盤の組織弾性を数値化し、正常胎盤、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群において、胎盤機能、胎児発育等の臨床因子とともに検討することで、胎盤における活性酸素種の障害機構やその臨床的意義について明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の実験を遂行するために、次年度予定使用額と平成24年度交付予定額あわせて、免疫組織化学染色 400千円、細胞培養試薬(培地、血清)およびプラスチック器具 400千円、抗体類(8OHdG、xhantine oxidase、SOD、HIF1A、VEGF、ITGA1,AVB3)400千円、PCRおよび生化学試薬 400千円、記録メディアおよびデジタル消耗品100千円、成果発表(国内、東京、1泊2日、2回)150千円、英文校閲および投稿料(2編)150千円の支出を見込んでいる。次年度使用額820千円については、上記の中で免疫組織化学染色 200千円、細胞培養試薬200千円、抗体200千円、PCRおよび生化学試薬200千円、記録メディアおよびデジタル消耗品20千円としての使用を予定している。
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Research Products
(2 results)