2011 Fiscal Year Research-status Report
新生児皮下脂肪壊死症は褐色脂肪組織のアポトーシスにより生じる
Project/Area Number |
23591598
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤原 作平 大分大学, 医学部, 教授 (90181411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 修 大分大学, 医学部, 講師 (40284799)
石川 一志 大分大学, 医学部, 助教 (80600452)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 褐色脂肪組織 / 新生児皮下脂肪壊死症 / ミトコンドリア / UCP-1 / アポトーシス |
Research Abstract |
新生児皮下脂肪壊死症は、仮死、低酸素血症、低体温、出生時の外傷などを契機に、生後1-3週間以内に生じ、上背部、頚部、上腕、腋窩、臀部などに好発する。この疾患になぜ好発部位が存在するのか? なぜ成人の脂肪壊死病変には見られない特徴的な病理組織像をとるのか? という疑問を考察するうちに、この好発部位は新生児期の褐色脂肪組織の解剖学的分布と一致することに気付いた。褐色脂肪組織とは、分娩時に胎児が母体の暖かい環境から離れて外界の低温環境に曝露される際に、多量の熱産生が必要となるが、その際の非ふるえ熱産生と呼ばれる現象をつかさどる組織である。新生児期では、上背部、頚部、上腕、腋窩などに豊富に存在するが、成人になるにつれて、次第に退縮していき、頚部、心臓、大動脈・腎周囲にのみ残存すると言われる。通常の白色脂肪組織とは異なり、1個の細胞内に小さい脂肪滴が多数あり、その脂肪滴の間に網の目状にミトコンドリアが豊富に存在する。ミトコンドリアの膜上には、UCP-1(uncoupling protein 1)と呼ばれる蛋白質が存在し、酸化時にATPを産生せず、熱を産生するのに寄与している。そこで、新生児皮下脂肪壊死症は褐色脂肪細胞の変性であるとの仮説を立てて、病理組織標本のUCP-1染色を行なった。1-2個のUCP-1染色陽性の細胞が認められた。また電子顕微鏡標本でも小さい脂肪滴とミトコンドリアを有する変性過程の褐色脂肪細胞と思われる細胞が多数認められた(Dermatol、2011;223:207-210)。さらに我々は、患児の18FDG(18F-fluorodeoxyglucose)PET-CTを用いて、 18FDGの病変部への取込みを測定し、その低下を認めた。これは病変部の褐色脂肪組織の減少を示唆した。以上の結果から、新生児皮下脂肪壊死症の病変の主座は褐色脂肪組織であると推論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マクロファージの型を調べるべく、抗マクロファージマンノース受容体抗体(抗CD206抗体)やオステオポンチンで染色を試みたが、成功しなかった。 PET-CT撮影装置は、2011年秋本学に設置されたが、対照となる、新生児の18FDG PET-CTの撮影対象者はなかなか見出せない。
|
Strategy for Future Research Activity |
下記の項目について研究を行う。(1) ヒト褐色脂肪、ならびに褐色脂肪細胞の性状の検討1)同意が得られた腎臓摘出患者から、副腎周囲、または大動脈周囲の褐色脂肪組織を分離し、全蛋白質、全RNAを抽出し、2次元電気泳動を行い、白色脂肪組織との違いを確認する。全RNAについては、UCP-1についてリアルタイムPCRを行い、定量的測定を可能にする。2)ヒト前駆脂肪細胞(タカラ)にPRD1-BF-1RIZ1 homologous domain containing protein 16(PRDM 16)を導入し、褐色脂肪細胞に特異的遺伝子(UCP-1、Pgc-1α、CIDEA)が発現しているかどうかを確認する。3)上記細胞が褐色脂肪細胞であることを確認後、2次元電気泳動を行い、1)のデータと比較する。4)上記細胞の全RNAを抽出しUCP-1についてリアルタイムPCRを行い、定量的測定を行う。(2) マウスの褐色脂肪の性状1)(1) の1)と同様にマウスから、副腎周囲、あるいは大動脈周囲の褐色脂肪組織を分離し、全蛋白質、全RNAを抽出し、2次元電気泳動を行い、白色脂肪組織との違いを確認する。全RNAについては、UCP-1についてリアルタイムPCRを行い、定量的測定を行う。(3)動物モデルの作成 1)まず、生直後のマウスの背部の褐色脂肪組織への栄養血管の一本を結紮し、阻血状態を起こし、その経過を観察する。2)生直後のマウスの褐色脂肪組織の直上の背部の片側を冷却し、その経過を観察する。3)もし上記により変化が生じなければ、阻血、冷却の両負荷をかけた後に、その経過を観察する。(4) 患者追跡調査1)これまでの論文発表、学会発表をもとに、全国の患者を集める。協力がえられれば、その家族も含めて患者の血液を採取し、核DNA、ミトコンドリアDNAを分離、保存する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス、ヒト前駆脂肪細胞、リアルタイムPCRキット、プライマーなどを含めた消耗品と調査費に使用したい。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Involvement of brown adipose tissue in subcutaneous fat necrosis of the newborn2011
Author(s)
Ichimiya H, Arakawa S, Sato T, Shimada T, Chiba M,Soma Y, Mizoguchi M, Tomonari K, Iwasaka H, Hatano Y,Okamoto O, Fujiwara S
-
Journal Title
Dermatology
Volume: 223
Pages: 207-210
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Dermatopontin interacts with fibronectin, promotes fibronectin fibril formation, and enhances cell adhesion.2011
Author(s)
Kato A, Okamoto O, Ishikawa K, Sumiyoshi H, Matsuo N, Yoshioka H, Nomizu M, Shimada T, Fujiwara S
-
Journal Title
J Biol Chem
Volume: 286
Pages: 14861-9
DOI
Peer Reviewed