2012 Fiscal Year Research-status Report
母胎間シグナル伝達による胎児赤血球脱核機構の解析~胎盤の造血ニッチとしての役割~
Project/Area Number |
23591606
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島村 英理子 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00374942)
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Keywords | 胎児 / 胎盤 / 脱核 / 造血幹細胞 / ACTH |
Research Abstract |
平成24年度は、すでに確立しているヒト臍帯血由来CD34陽性細胞から赤芽球に分化させ、脱核の行程を経た赤血球まで成熟させる培養技術の改良を試みた。その結果、生理的条件下において最終的に脱核した細胞(脱核率)を、これまでの約50%から75~85%に増加させることに成功し、安定した培養系を構築した。また、この培養法においてもACTHの赤血球脱核誘導作用を確認した。そこでヒト赤芽球を用いて、ACTHのレセプター(メラノコルチンレセプターファミリー: (MC1R~MC5R)の各々の赤芽球ステージにおける詳細な発現解析を行った。MC2Rは塩基性、多染性、正染性赤芽球のステージで発現していた。MC1Rは塩基性赤芽球で高発現しており分化/成熟が進むにつれ減少した。一方MC5Rは塩基性赤芽球での発現は低く、分化/成熟が進むにつれ増加した。ACTHを塩基性赤芽球から添加した場合、無添加で培養した細胞に比してMC5Rの発現が更新した。さらに、塩基性赤芽球のステージでMC1R、MC2R、MC5Rの中和抗体を添加してその分化調節への影響を調べた。MC1Rからのシグナルをブロックすると、多染性赤芽球で分化ステージがストップした。またMC2Rからのシグナルをブロックすると細胞の増殖が抑制され、塩基性赤芽球で分化ステージがストップした。最後にMC5Rからのシグナルをブロックすると、正染性赤芽球で分化ステージがストップした。以上のことからMCRファミリーは、MC2R、MC1R、MC5Rの順に赤芽球の分化調節に関与していることが示唆された。また、MC5Rの中和抗体で、脱核のシグナルに関与することが報告されているAKTのリン酸化が抑制されたことから、MC5Rが脱核を調節していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は申請時までに、母体のleukemia inhibitory factor (LIF)がラット胎盤に作用して胎児血液中にACTHを分泌し、このACTHが胎児血球を刺激し胎児LIFの分泌が誘導されることを報告してきた。さらに、ACTHに赤芽球の脱核誘導効果を見いだした。そこで本研究では、マウス胎児を母体―胎盤―胎児間シグナル伝達による胎盤ニッチでの脱核誘導機構を明らかにすることを目的としている。23年度にはマウス胎児血清でのACTHの生理的なサージが胎齢12.5日にあることを見いだし、さらに同齢で母獣にLIFを投与すると胎児血清中のACTH濃度が上昇することを確認し、母体LIF-胎盤ACTH系の存在が示唆されるデータが得ている。また、ACTHサージの翌齢13.5日から胎児赤血球の脱核が開始されていることも確認した。24年度には血球側の詳細な解析を行う為、培養系を用いたMCRファミリーの発現および機能解析を行った。その結果MC2R、MC1R、MC5Rの順に、3つのレセプターが異なった赤芽球の分化ステージで分化調節機構があることを示唆する結果が得られた。当初脱核機構にのみACTHが関与していると予想していたが、研究が進むにつれ赤芽球の分化ステージすべてに必要な分子であり、レセプターの発現によって分化調節を行っていることが明らかとなった。また、脱核シグナルを調節しているのがMC5Rの下流シグナルであることも見いだすことに成功した。 研究計画は、(1)LIF-ACTHの母胎間シグナルのin vivo解析、(2)LIF-胎盤ACTHのin vitro解析、(3)ACTH―血球MCRsの系のin vitro解析、(4)1および2のin vivoによるノックダウン(もしくは中和抗体)による解析、としており1~3においては大旨順調に必要な結果が得られていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に、胎盤trophoblastにおけるPomc shRNAレンチウイルスベクターのマウスノックダウン系の構築を行った。5種類のshRNAをマウスtrophoblast stem cell (TS細胞)にトランスフェクトし、2種類の効率のよいshRNA配列を得ている。H25年度にはこの配列をレンチウイルスベクターに組み込み、マウス胎盤へのin uteroインジェクションを行い、ノックダウン効率を検証する。すでに申請者らは、妊娠12.5日においてLIFを母獣腹腔内投与すると胎児脱核率が増加することを確認しているため、このタイミングでの比較検討を行う予定である。より詳しくは、妊娠10.5日の胎盤にin uteroインジェクションを行い、12.5日に胎児血清ACTH濃度、胎児血清LIF濃度、胎児赤血球脱核率を測定する。 また、赤芽球ではMC5Rが脱核のシグナルに必要なレセプターであることがH24年度の結果として得られているため、Mc5r shRNAレンチウイルスベクターの構築と、胎児腹腔内へのin uteroインジェクションによる胎児血球へのノックダウン効率を検証する。ノックダウンされた系において、ACHTの胎児血清中の濃度(差がないことの確認)、赤血球脱核率、および血球AKTのリン酸化に及ぼす影響を測定する。また、この方法がうまくいかない場合は、MC5R中和抗体のin uteroインジェクション法を試行しいずれかの方法にてin vivoでの母体―胎盤―血球のシグナル伝達経路を証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
なし
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Research Products
(8 results)