2013 Fiscal Year Research-status Report
母胎間シグナル伝達による胎児赤血球脱核機構の解析~胎盤の造血ニッチとしての役割~
Project/Area Number |
23591606
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島村 英理子 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00374942)
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Keywords | 造血前駆細胞 / 赤血球 / 脱核 / ACTH / メラノコルチンレセプター / 胎盤 |
Research Abstract |
本研究は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が赤芽球分化を促進し、分化最終段階である脱核に必要な因子の一つであることを明らかにすることである。H24年度までにヒト臍帯血由来CD34陽性造血前駆細胞(HSC)において、このシグナルにはACTHのレセプターであるメラノコルチンレセプター(MC1-5R)のうち、MC1R, MC2R, MC5Rの3種類が関与していることを見いだしている。H25年度ではこの成果を研究計画に従い論文にまとめ投稿を行ったが、その結果Reviewerからレセプターのレンチウイルによるノックダウン実験を要求された。そのため論文受理を最優先とし、HSCから成熟赤血球への培養系においてレンチウイルスベクターをもちいたshRNAによるMCRノックダウン実験を新たに開始した。HSCを7日間増幅後、これをストック細胞として液体窒素で保存した。この保存細胞をHPGM培地(Lonza)にエリスリポイエチン、Stem Cell Factor, インターロイキン-3, インターロイキン-6を添加して4日間分化させ(分化期:D0-D4日)、ここで細胞を希釈して継代しエリスロポイエチンとACTHを添加して培養する事により、脱核するまで成熟させた(成熟期:M0-M7日)。D0-D4日の期間細胞は前赤芽球から塩基性赤芽球に分化するが、このD2日目においてレンチウイルスの濃度を変えて感染させたところ、ある濃度以上ではウイルス濃度に依存して死細胞が増加した。また、最大濃度の条件でも感染を示すGFP陽性細胞が、フローサイトメトリーの測定で約30%であった。次年度には、最大限の感染効率を得つつ、感染細胞が未感染のものと同等の脱核率が得られる条件を検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画は、母体leukemia inhibitory factor (LIF)-胎盤ACTHの分子伝達による脱核誘導機構のin vivo解析を行う事であった。実験計画としては、shRNAでのレンチウイルスによる胎盤POMC (プロオピオメラノコルチン、ACTH前駆体)のノックダウンシステムと、マウス胎児血球のMCRs のノックダウンシステム構築の続きを行う予定であったが、年度内に達成する事は出来なかった。遅れている原因の理由は明確であり、平成25年1月から11月に病気療養のため研究を中断したためである。 しかしながらH25年度は、本研究の基盤となるHSCにおけるACTHの赤芽球分化・脱核誘導作用、及びMCRsの各々分化ステージにおけるシグナル伝達系を明らかにした研究をまとめ、論文を国際誌に投稿した。論文の受理を優先させるため「レンチウイルスを用いたMCR shRNAを用いたノックダウン系による解析実験」を直ちに開始した。このヒト赤芽球のレンチウイルスベクターによるノックダウンシステムが構築できれば、本申請課題のマウスの胎児赤芽球のMCRsのノックダウンに応用できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度ではHSCでの予備実験としてレンチウイルスベクターpSIH1-H1 shNC (negative controlとしてのshRNA)(SBI)、トランスフェクション試薬(Lipofectamine, Life Technologies)を使用したが、前述のとおり約30%程度の感染効率であった。そこで、H26年度の予定としては、(1)第2世代のレンチウイルスベクターによる感染効率の検討、(2)トランスフェクション試薬の検討、の2点について実験を行う予定である。各々のMCRsの実験条件が整い次第、赤芽球分化への影響、レセプター下流のシグナル伝達の解析を行う予定である。 また、これまで脱核率の測定に、セルソーターか画像による手カウントを行っていたが、今年度はH25年度末に本学に導入されたハイスループット細胞機能探索システム CellVoyagerCV7000(横河電機)を使用して、より正確で客観性の高い脱核率の測定法を構築する予定である。つまり、赤血球の最終分化段階の評価として脱核率を計測しているが、(i)完全に核が抜けている細胞、(ii)核が出かかっている細胞、2種類が存在する。フローサイトメーターでは(ii)の細胞は未脱核として計測されてしまう。CV7000の画像解析システムでは、画像の手カウントと同様に(ii)の細胞を脱核細胞と区別することが可能であると同時に、より客観的な解析結果を得られると予想される。また、ハイスループットにレンチウイルス感染細胞の脱核率を計測する事が可能となる。 上記2つの方法が確立後はマウス胎児血球のMCRsノックダウン系に応用し、in vivoでのノックダウン系を予定である。また、マウス胎児MC5Rに関しては、同時にノックアウトマウスの導入を計画しており、このマウスによる解析も計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年1月~11月および平成26年3月に病気療養のために休職し、その期間研究を遂行することが出来ず未使用額が発生した。 ヒト臍帯血由来の造血前駆細胞および、その培養液等の消耗品。さらにレンチウイルスベクターによるメラノコルチンレセプターのshRNAを用いたノックダウンシステム構築のための、感染用試薬、RNAおよび蛋白解析に必要な試薬類。論文投稿の際の、論文校正および投稿料に充てることとしたい。
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Research Products
(12 results)