2011 Fiscal Year Research-status Report
新規モノクローナル抗体を用いて分離した血液循環メラノーマ細胞の遺伝子解析
Project/Area Number |
23591616
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
芦田 敦子 信州大学, 医学部, 助教 (00596786)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 康文 信州大学, 医学部, 非常勤講師 (60467181)
奥山 隆平 信州大学, 医学部, 教授 (80292332)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 血液循環腫瘍細胞 |
Research Abstract |
進行期メラノーマに対する分子標的薬として、近年、変異BRAF阻害剤、KIT阻害剤などが期待されている。メラノーマ患者毎に有効な分子標的薬を選択するためには、遺伝子変異などを効率的に検索する方法の確立が必要である。我々は血液循環腫瘍細胞 (Circulating tumor cells: CTCs)を用いて遺伝子変異を解析するシステムの構築をはかってきた。この研究では、共同研究を行ってきたピッツバーグ大学免疫学のフェローネ教授から新規に供与された抗B7-H3モノクロナール抗体を用いて、末梢血からCTCsをより高い効率で回収することを目指す。それによって腫瘍細胞の遺伝子変異を (1)リアルタイムで、(2)侵襲の少ない採血で、(3)採血時点で体内において主体となっているクローンに関して、解析することが可能になりCTCsの有用性が高まる。さらに、(4)早期のメラノーマからもCTCsの分離が可能になり、経時的にCTCsを調べることで予後や再発のマーカーとしても応用できる、ことが期待される。現在、このような研究に使用可能なメラノーマ表面抗原に対する抗体は数が限られている。しかし、我々が行っている末梢血からのCTCsの抽出方法はすでに非常に高い効率である。新たな抗体を用いて本研究を実現することで、分子標的治療薬のバイオマーカーとして、CTCsを利用したテーラーメードのメラノーマ治療が実現可能になると思われる。本研究において重要な役割を果たす抗B7-H3抗体については、予備実験ですでにメラノーマ膜表面に高率に発現していること、CTCsの分離に有効であることを確認している。その上で最初に、抗体の特異性や感度などについて十分な検討を行ない、その後CTCsの分離についての研究を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)回収率の比較検討: まず、メラノーマ細胞を用いて、HMW-MAA抗体単独、B7-H3抗体単独、HMW-MAA抗体とB7-H3抗体の併用の3つの条件について回収率を比較した。その結果、両者を併用した場合が最も効率がよかった。以上より両者を併用した方法が回収率のアップのなることが確認された。ただし、実験により結果にばらつきがあるため、別のメラノーマ細胞株でも同じ実験で確認することが必要である。(2)CTCsの分離法の確立:方法の概要としてメラノーマ患者から5mlの採血を行い、そこから有核細胞を分離する。そこにHMW-MAA抗体、さらにマウス抗体を認識するマグネットビーズを加えて反応させメラノーマ細胞だけを分離する。さらに特異度を増すために、白血球共通抗原に対する抗体を用いてコンタミしている可能性のある白血球を除去したあと、プレパラートに塗沫する。塗沫標本をMART-1で免疫染色し、さらにLaser micro dissectionを用いてMART-1に染色された細胞のみを取り出す。以上では、Laser micro dissectionでMART-1陽性の細胞のみを採取する過程で採取率にばらつきがあることがわかった。(3)CTCsの遺伝子解析:細胞からDNAを抽出し、nested PCRのあとシーケンスを行うことによってBRAFやKITなどの遺伝子を解析する。変異のホットスポットであるプライマーを用いる。前者はエクソン15、後者はエクソン11、13、17、18である。遺伝子解析において、BRAF遺伝子は比較的きれいにシーケンスを読むことが可能であったが、KIT遺伝子はシーケンスが読めないことがしばしば認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Laser micro dissectionの過程で細胞の採取率が低ければ、スライドグラスの種類の変更を検討する。当教室では、多くの様々な病期のメラノーマ患者の治療にあたっており、多くのサンプルを入手することが可能である。今後は患者の血液からHMW-MAA抗体とB7-H3抗体を併用して、ビーズを用いてCTCsを回収する。CTCsのBRAF,KITの遺伝子変異の解析を行う。各々の患者の原発巣、転移巣の組織からBRAF,KITの遺伝子変異の解析を行い、CTCsからの遺伝子解析の結果と比較する。これまではBRAF遺伝子ではKITの比較して回収率がよいため、まずBRAF遺伝子について手技を確立した上で、KIT遺伝子について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。今後は、メラノーマ患者のCTCsを経時的に回収し、遺伝子変異に変化があるかを比較したり、化学療法の前後で変化があるかを比較することを計画している。したがって、数多くのサンプルを解析することが予想される。具体的には、細胞培養培地や器具、磁気ビーズ、PCR用試薬、プライマー、シークエンス用試薬、免疫組織化学染色用試薬と抗体、大学内の実験機器の使用料などの充てたいと考えている。
|