2011 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫に特徴的な遺伝子クロマチン修飾の理解と治療感受性増幅の研究
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23591627
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
村上 孝 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (00326852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メラノーマ / シグナル伝達 / 発現制御 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
B-RAF(V600E)の変異はメラノーマの60-70%に共通した重要ながん原性変異である。さらに、他のがん細胞と同様、再発や転移など多くの難治性メラノーマではDNAメチル化異常とヒストン修飾異常が知られており(エピジェネティック修飾)、これらの異常はがん細胞の遺伝子発現の抑制の原因となっている。このようなメラノーマ細胞のエピジェネティック修飾は既存の抗がん剤に対する耐性のみならず、種々の治療抵抗性と密接に関係している。異常なヒストン修飾異常を解除し得るヒストン脱アセチル化阻害剤は、正常細胞には作用せず、がん細胞選択的に異常な転写抑制を改善することができる。したがって、B-RAF(V600E)変異を有する高度難治性メラノーマに対するヒストン修飾異常の是正は各種治療感受性の向上に資することが期待される。ヒトメラノーマ細胞株9種類(SK-MEL-2, SK-MEL-28, Colo-679, MM-AC, MM-AN, MM-BP, MM-LH, MM-MC, MM-RU)におけるB-RAF(V600E)変異を検索した結果、SK-MEL-28、Colo-679、MM-AC、MM-RUの4細胞株がB-RAF(V600E)変異を有していた。さらにB-RAF(V600E)変異の有無による悪性度の評価を造腫瘍性と遠隔転移能を指標に実施した。これらの細胞について、発光イメージングによるNOD/SCIDマウス体内における転移動態を異種移植法により検討した結果、B-RAF(V600E)変異を有する細胞株で高い造腫瘍性と多臓器転移能(脳、肝、肺)を有していた。これら細胞株におけるヒストン脱アセチル化阻害剤の感受性を指標に、B-RAF変異の有無とヒストン修飾異常との相関関係を求めて行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に所属していた研究機関から現所属機関への異動があったため、新規研究室のセットアップなど実験環境設備の調整に時間がかかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究領域における注目度は極めて高いことから、研究対象としているメラノーマ以外の研究進展状況は国外から報告されている。したがって、これら他施設 からの研究成果報告を参考にしつつ、新たに研究協力可能な国内外施設との関係を構築し、技術協力などを得ながら当該研究の一層の推進を図りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度では、1)当該研究の申請を行なった自治医科大学から現所属機関への異動があったこと、2)東日本大震災による物資輸送の不備等が重なったこと、3)夏期電力不足による施設内利用の制限により、新規研究設備や研究環境のセットアップに想定外の時間を要した。その結果、研究計画に遅れを来たし、研究費の未使用額が生じた。平成24年では、研究費請求額を1400千円から700千円に減額し、平成23年度未使用額との研究経費のバランス調整を行なう。残額研究費は最終年度に請求し、執行することを予定している(1700千円)。平成23年度において、変異型B-RAF(V600E)を正常メラノサイトおよびメラノーマ細胞に導入し、複数の遺伝学的背景の異なる細胞クローンの分離を引き続き行い、B-RAF(V600E)変異選択的阻害剤PLX4720による耐性細胞の分離を目指す。また細胞クローンごとに重症免疫不全マウスにける造腫瘍性を評価し、広範作動型ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害による耐性解除、ヒストン(H3)のアセチル化(K9/K14)ついて評価を進めたい。したがって、当該消耗品や実験動物購入に対する経費が主な使用用途となる。
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