2011 Fiscal Year Research-status Report
皮膚指向性成熟T細胞腫瘍においてFra-2-SOX4経路が担う発癌機構の解明
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23591632
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
樋口 智紀 近畿大学, 医学部, 助教 (00448771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
中山 隆志 近畿大学, 医学部, 講師 (60319663)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | SOX4 / Fra-2 / ATLL / CTCL |
Research Abstract |
これまでに我々は、成人T 細胞白血病/リンパ腫(ATLL)においてFra-2が細胞増殖に寄与することを明らかにし、また、Fra-2の下流標的遺伝子として原癌遺伝子c-Myb、MDM2、Bcl-6、SOX4を同定した(Oncogene 2008)。これらの原癌遺伝子の中で、SOX4は肺癌や前立腺癌など様々な悪性腫瘍の発癌に関与することが報告されているが、造血器腫瘍におけるその発現や役割については不明である。本年度我々は、ATLL および皮膚T 細胞リンパ腫(CTCL)発癌機構におけるFra-2-SOX4 経路の役割を解明するため、ATLLおよびCTCLにおけるSOX4 の発現解析、原癌遺伝子Fra-2 によるSOX4発現誘導機構の解析、さらにSOX4 の細胞増殖あるいはアポトーシス抵抗性に関わる分子機構の解析を行った。その結果、ATLLおよびCTCLにおいて、1)Fra-2-JunDヘテロダイマーがSOX4の転写活性に関与すること、2)SOX4がFra-2の直接的な標的遺伝子であること、3)SOX4が細胞増殖において極めて重要な役割を果たしていること、4)細胞増殖に関与するGCRK/MAP4K5、NAP1/AZI2やHDAC8などがSOX4の新規下流標的候補遺伝子群に含まれることを明らかにした。これらのことから、成熟T細胞性腫瘍であるATLLやCTCLにおいて、SOX4は重要な発癌因子の一つであることが明らかとなり、Fra-2-SOX4経路がこれら腫瘍において鍵となる発癌機構であることが示唆された。また、近年、HDAC inhibitorはリンパ腫の新規治療薬として注目されており、SOX4の下流標的候補遺伝子であるHDAC8は造血器腫瘍の主要な分子標的である可能性が示唆される。これらの本年度研究成果は、JSICR-MMCB2011(2011年5月、泉佐野)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の我々の想定通り、ATLLおよびCTCLにおいてFra-2-JunD経路がSOX4の発現を制御し、SOX4がその細胞増殖に関与することを強く示唆する結果が本年度の研究成果から得られた。また、SOX4が転写因子であることから、実際にATLLやCTCLの細胞増殖に寄与する実働的な因子を見出すため、SOX4発現抑制系を用いたDNAマイクロアレイ解析を行った結果、SOX4標的候補遺伝子群の中にHDAC8をはじめ細胞増殖関連遺伝子が複数存在することが確認できた。したがって、我々はこれら皮膚指向性の末梢成熟T 細胞腫瘍におけるSOX4の発現制御機構と細胞増殖に関わる分子機構の一端を明らかにすることができたと考えられる。これは本年度の研究計画通りの結果であり、よって、本研究計画は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画通りに進めることができた。よって、次年度も当初の研究計画に従って進めていく。まず、ATLLおよびCTCL患者検体を用いて、本年度得られたSOX4下流標的候補遺伝子であるGCRK/MAP4K5、NAP1/AZI2やHDAC8の発現解析をリアルタイムPCRや免疫組織染色によって行う。次に、ATLLおよびCTCLにおいて、これらの遺伝子がもつと考えられる細胞増殖またはアポトーシス抵抗性を明らかにする。その上で、最後に、これらの遺伝子がSOX4の直接的な標的遺伝子であるか否かを明確にする。ここまでの実験系は本年度において既に用いたものであるため、手技的な側面での大きな問題は生じることなく進行することができる。また、これら3つの遺伝子がATLLおよびCTCLにおける細胞増殖またはアポトーシス抵抗性に関与していない場合は、豊富に得られているSOX4下流標的候補遺伝子群より別の候補遺伝子に切り替えて計画を実行する。研究計画が予定よりも早く進行した場合、SOX4トランスジェニックマウスの作製を行い、SOX4の発癌に与える影響について解析を始める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画の実行において、主に必要となる研究経費は細胞培養や解析に使用する試薬、キットなどの消耗品費にある。本年度同様、次年度もこれら消耗品費に研究費を使用する。また、次年度に必要となる機器は当該研究施設にて整備されているため新たに購入する必要はない。しかしながら、本研究目的を達成するためにsiRNA 、real-time PCR解析に必要なTaqMan probe、免疫組織染色に用いる抗体、マイクロアレイ用のGeneChip など一般試薬類と比較して単価がやや高価なものが必要となる。さらに、次年度以降にトランスジェニックマウス作製も計画しているため、次年度の研究費だけでは十分でない可能性がある。したがって、本年度未使用の助成金はこれらの研究経費への補填とする予定である。
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Research Products
(5 results)