2012 Fiscal Year Research-status Report
皮膚指向性成熟T細胞腫瘍においてFra-2-SOX4経路が担う発癌機構の解明
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23591632
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
樋口 智紀 近畿大学, 医学部, 助教 (00448771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
中山 隆志 近畿大学, 薬学部, 教授 (60319663)
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Keywords | SOX4 / HDAC8 / Fra-2 / ATLL / CTCL |
Research Abstract |
これまでに我々は、成人T 細胞白血病/リンパ腫(ATLL)においてFra-2が細胞増殖に寄与することを明らかにし、また、Fra-2の下流標的遺伝子として原癌遺伝子c-Myb、MDM2、Bcl-6、SOX4を同定した(Oncogene 2008)。これらの原癌遺伝子の中で、SOX4は肺癌や前立腺癌など様々な悪性腫瘍の発癌に関与することが報告されているが、造血器腫瘍におけるその発現や役割については不明である。前年度我々は、ATLおよび皮膚T 細胞リンパ腫(CTCL)の細胞増殖においてFra-2-SOX4 経路が極めて重要な役割を果たすことを明らかにし、それはGCKR/MAP4K5、NAP1/AZI2やHDAC8など細胞増殖に関与する新規下流標的候補遺伝子群の発現をFra-2-SOX4 経路が制御しているためであることを示唆した。 本年度は、Fra-2-SOX4 経路の新規下流標的候補遺伝子として得られたGCKR/MAP4K5、NAP1/AZI2、HDAC8に着目し、ATLLおよびCTCLにおける発現解析、SOX4による発現誘導機構の解析、そして、これらの標的候補遺伝子の細胞増殖あるいはアポトーシス抵抗性に関わる分子機構の解析を行った。 その結果、ATLLおよびCTCLにおいて、1)SOX4の発現抑制によってGCKR/MAP4K5、NAP1/AZI2、HDAC8は顕著に発現が減少すること、2)GCKR/MAP4K5、NAP1/AZI2、HDAC8の発現抑制によって細胞成長が阻害されること、3)SOX4がHDAC8の転写活性に関与することを明らかにした。 これらのことから、ATLLやCTCLにおいて、SOX4は重要な発癌因子の一つであることが明らかとなり、Fra-2-SOX4経路がこれら腫瘍において鍵となる発癌機構であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の我々の想定通り、ATLLおよびCTCLにおいてSOX4がHDAC8の発現を制御し、HDAC8がその細胞増殖に関与することを強く示唆する結果が本年度の研究成果から得られた。また、GCKR/MAP4K5とNAP1/AZI2においても、これらの遺伝子に対するsiRNAを用いた発現抑制実験より、HDAC8と同様に細胞増殖に関与する結果が得られた。これらの結果から、SOX4は実働的な複数の細胞増殖関連因子の発現制御に関わることが明らかとなり、皮膚指向性の末梢成熟T 細胞腫瘍におけるSOX4の発現制御機構と細胞増殖に関わる分子機構の一端を明らかにすることができたと考えられる。これらは本年度の研究計画通りの結果であり、よって、本研究計画は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究計画通りに進めることができた。しかしながら、臨床検体において、ATLL ではSOX4発現量およびその発現頻度が非常に高かったが、CTCLではSOX4の発現がみられないものも含めて、それらの傾向にばらつきがみられた。それにもかかわらず、SOX4標的遺伝子の発現はATLLと同様に検出されたことから、一部のCTCLではSOX4の発現制御を介さないSOX4標的遺伝子発現経路が存在することが考えられる。よって、CTCLにおける本研究で同定したHDAC8をはじめとするSOX4標的遺伝子の発現制御経路を再検討する必要があり、次年度の研究計画に組み入れたいと思う。この再検討に要する実験系は当該研究施設にてその基盤となる手技はすでに構築されているため、手技的な側面での大きな問題は生じることなく進行することができる。また、当初の研究計画に従ってSOX4トランスジェニックマウスの作製も行い、SOX4の発癌に与える影響について解析を試みる。以上のように、次年度計画を一部変更したが、皮膚指向性の末梢成熟T 細胞腫瘍の発癌におけるSOX4の役割については一定の成果は得られていることから、本研究の大きな障害にはならず、研究計画全体での大幅な変更は生じない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画の実行において、主に必要となる研究経費は細胞培養や解析に使用する試薬、キットなどの消耗品費にある。本年度同様、次年度もこれら消耗品費に研究費を使用する。また、次年度に必要となる機器は当該研究施設にて整備されているため新たに購入する必要はない。しかしながら、本研究目的を達成するためにsiRNA 、real-time PCR解析に必要なTaqMan probe、免疫組織染色に用いる抗体、マイクロアレイ用のGeneChip など一般試薬類と比較して単価がやや高価なものが必要となる。さらに、次年度はトランスジェニックマウス作製も計画しているため、次年度の研究費だけでは十分でない可能性がある。したがって、本年度未使用の助成金はこれらの研究経費への補填とする予定である。
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Research Products
(5 results)