2011 Fiscal Year Research-status Report
全身性強皮症患者および線維化モデルマウスにおける制御性B細胞の解析
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23591640
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
竹原 和彦 金沢大学, 医学系, 教授 (50142253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 稔 金沢大学, 大学病院, 講師 (50283130)
松下 貴史 金沢大学, 医学系, 助教 (60432126)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 全身性強皮症 / 制御性B細胞 / IL-10 |
Research Abstract |
制御性B細胞はIL-10産生を介して過剰な免疫反応や炎症を抑制する。これまでは自己免疫疾患モデルマウスを用いて制御性B細胞の機能解析が進められてきた。本年度は、ヒトでの制御性B細胞の測定法を開発し、強皮症患者と健常人の末梢血中の制御性B細胞を測定した。まず、ヒトにおけるIL-10産生制御性B細胞の測定法の開発であるが、これまでの予備実験において、ヒトにおけるIL-10産生制御性B細胞は、PBMCをCpG(TLR9)とCD40Lで48時間培養し、細胞内染色を行うことにより測定できることを確認している。この刺激条件を用い、IL-10産生B細胞とIL-10非産生B細胞の細胞表面マーカーを比較し、IL-10産生B細胞に特異的な表面マーカーを同定する。次に、全身性強皮症患者における制御性B細胞の検討であるが、全身性強皮症患者においてIL-10産生制御性B細胞の絶対数および頻度を健常人と比較検討した。 その結果、B細胞の表面に発現している分子を解析し、CD24とCD27がIL-10陽性と陰性で発現が大きく違っており、IL-10産生B細胞はCD24highCD27+のフェノタイプを有していることが明らかとなった。次に健常人24人、全身性強皮症24人、皮膚筋炎3人、尋常性天疱瘡/落葉状天疱瘡、2名のPBMC中のIL-10産生B細胞とCD24hiCD27+B細胞の頻度を解析した。結果は、IL-10産生B細胞は健常人で平均11%、強皮症は6%と有意に減少していた。一方、症例数が非常に少ないものの皮膚筋炎や天疱瘡では、ほぼ正常であった。IL-10産生B細胞と同様にCD24hiCD27+B細胞は健常人と比較して、全身性強皮症で有意に減少していた。 これは、制御性B細胞の減少により自己トレランスが破綻し、全身性強皮症の発症に関与した可能性が考えられるので意義あるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々がすでに確立したサイトカイン誘導性線維化モデルマウスを使用し、線維化におけるIL-10産生regulatory B細胞の役割を検討する。方法として、IL-10産生regulatory B細胞を遺伝的に欠くCD19欠損マウスと野生型マウスにTGF-βとCTGFを皮下投与し線維化の程度を評価する。Regulatory B細胞の欠如により線維化が増悪する結果が得られた場合には、regulatory B細胞を用いた抗線維化治療の可能性について検討し、その作用機序についても解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はマウスの成育がおくれたため、研究費の未使用額が生じた。次年度は、マウスの成育も順調であるため以下のような研究を予定している。線維化モデルマウスにおけるregulatory B細胞の役割の検討強皮症のモデルマウスとしては、我々がすでに確立したサイトカイン誘導性線維化モデルマウスを使用する(Mori T, et. al. J Cell Phys 1999)。具体的には、TGF-βを3日間,その後CTGFを4日間背部皮下に注入することにより皮膚線維化を誘導する(図2)。このモデルでは線維化の過程で活性化された線維芽細胞が免疫細胞を刺激し、さらに活性化した免疫細胞がfibrogenic cytokineを産生する機序が推測されている(Arai et. al. in preparation)。CD19欠損マウスはIL-10産生regulatory B細胞を遺伝的に欠損しているので(Matsushita T, et. al. Am J Pathol 2006)、regulatory B細胞の機能解析に使用する。CD19欠損マウスにおけるサイトカイン誘導性線維化の検討野生型マウスとCD19欠損マウスの背部皮下にTGF-βを3日間,その後CTGFを4日間背部皮下に注入し線維化を誘導する。シリウスレッド法及びハイドロキシプロリンのELISA法によって組織中のコラーゲンを定量し野生型マウスとCD19欠損マウスで比較検討する。CD19欠損マウスではIL-10産生regulatory B細胞が存在しないため炎症反応および線維化の抑制作用が減弱し、より高度な線維化が認められることが予想される。また、線維化の部位の細胞浸潤(T・B細胞、マクロファージ、線維芽細胞)の検討、real-time PCRによるサイトカインプロファイルの解析を行う予定である。
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