2012 Fiscal Year Research-status Report
デルマトポンチンにより活性化されたフィブロネクチンは抗腫瘍活性を持つのか
Project/Area Number |
23591648
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
岡本 修 大分大学, 医学部, 講師 (40284799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 作平 大分大学, 医学部, 教授 (90181411)
松尾 哲孝 大分大学, 医学部, 准教授 (10284788)
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Keywords | デルマトポンチン |
Research Abstract |
デルマトポンチン(DP)がフィブリンと複合体を形成し、接着した細胞のスプレッディングを増強する。このことから細胞接着の増強を再度検討すると、DPは低濃度で固相化したフィブリンへの血管内皮細胞の細胞接着を増強した。同じ条件でも細胞質のスプレッディングは増強された。この細胞接着はαvβ3インテグリンとβ1インテグリンの2種類が共同して関与することが示された。固相化したDPは単独では血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を結合しなかったが、フィブリンは単独でVEGFを結合した。そしてDP存在下で形成したフィブリンへのVEGFの結合はフィブリン単独の場合に比べて3倍増強した。DPとVEGFを混合して固相化フィブリンに加えると、固相に結合したVEGFは最大5倍に増強した。このことからDPにより高次構造の変化したフィブリン線維はVEGFの結合能が強く、液相ではDPはVEGFと結合するものと考えられた。そしてDPはフィブリンによるVEGFの保持を増強すると考えられた。これらの結果を論文にまとめ、Journal of Investigative Dermatology に投稿し、現在リバイスに対応中である。 DPの活性ペプチドであるDP-4ペプチドの欠損ペプチドを用いてフィブリノーゲンの不溶化を検討したところ、その最小機能配列はGQVVVAVRSの9残基であると決定された。DP-4ペプチドにより線維形成して不溶化したフィブリノーゲンは血管内皮細胞の接着性が増強し、VEGFの結合もあわせて増強することが判明した。 マウスメラノーマ細胞をDP-4ペプチドにより線維形成したフィブリノーゲンと混合してマウス背部に接種すると、腫瘍の血管成分はコントロールと比較して少なくなるという知見が得られた。このことからDP-4ペプチドによって形成されたフィブリノーゲン線維が抗腫瘍活性を持つ可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VEGFの機能の修飾の検討はほぼ完了した状態であるが、現在論文のリバイスのために多くの時間を割いている状況であり、必要な過程と考える。しかしながら今回DP-4ペプチドにより形成された不溶化フィブリノーゲンの抗腫瘍活性の予備実験ができ、腫瘍中の血管数が少ないという知見が得られたたことは今後不溶化フィブロネクチンの抗腫瘍作用の検討をあわせ行うためにも有益な情報である。これらの結果を総合的に評価すると、本来の研究計画を遂行する上での大きな遅れはないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の計画のごとくマウスに接種した腫瘍に対する抗腫瘍活性を検討する。すなわちDPおよびDPの活性ペプチドにより不溶化したフィブロネクチン、フィブリノーゲン、そしてDP存在下で形成したフィブリンマトリックスの創傷治癒活性を、マウスモデルを使って検討したい。不溶化フィブロネクチン、不溶化フィブリノーゲンの抗腫瘍作用が確認されれば、抗腫瘍作用の発現機序を、血管新生の見地から明らかにしたい。あわせて、細胞種や増殖因子を替えてフィブロネクチン・DP複合体、フィブリン・DP複合体の生物活性を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度以降予期しなかった新たな発見があったため、当初予定していた研究計画を多少変更する必要があり、次年度に一部予算が繰越となった。この予算はマウスを用いた抗腫瘍作用の検討に含めて使用する予定である。
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Research Products
(4 results)