2012 Fiscal Year Research-status Report
難治性慢性炎症疾患における自己炎症シグナル活性化の探索のための基盤創成
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23591651
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
金澤 伸雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90343227)
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Keywords | 自己炎症疾患 / 中條-西村症候群 / PSMB8 / プロテアソーム |
Research Abstract |
本研究は、稀少な遺伝性自己炎症疾患の解析によって、遺伝子変異に基づくプライマリな炎症制御シグナル異常の存在を明らかにし、さらに様々な慢性難治性炎症疾患におけるそれらの異常シグナルの関与を検知するシステムを構築し、各疾患・症例ごとに検討することによって、各疾患の病態解明やテーラーメード治療の開発への応用を目指すものである。初年度の平成23年度は、主に中條―西村症候群について検討したが、平成24年度はさらに多くの患者でユビキチンの蓄積を検討するとともに、さらに新規IL36RN変異が同定された汎発性膿疱性乾癬、新規LIG4変異が見出されたWHIM症候群様複合型免疫不全症、KRT16変異が見出された先天性爪甲肥厚症などの遺伝性炎症・皮膚疾患患者を新たに見出したことを契機に、それぞれの遺伝子変異と関連する細胞異常の検索を行った。特にWHIM症候群様複合型免疫不全症の症例においては、当初WHIM症候群の原因遺伝子であるCXCR4の機能異常を疑って末梢血単核球におけるCXCL1投与後のCXCR4の細胞表面からの取り込みを検討し、患者特異的に取り込み低下を認めたにもかかわらず、CXCR4遺伝子には変異が見られず、エクソーム解析によってようやく新規LIG4遺伝子の複合へテロ変異を見出した。このことは、特定の遺伝子変異に直結すると思われるような細胞機能異常があっても、直接そのシグナルとは無関係に思われる予想外の遺伝子の変異が原因であり得ることを示しており、そのどちらを病態の中心と考え治療のターゲットとすべきか、本研究の推進にあたって改めて吟味する必要があると思われる。また、病態形成に重要と考えられるIL-6を抑制する抗IL-6受容体抗体製剤を投与した中條―西村症候群の1症例について、投与前後の末梢血中のサイトカイン、ケモカイン、アディポサイトカイン値の経時的推移を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中條―西村症候群のみならず、遺伝子変異を伴う症例を見出したことを契機に種々の遺伝性炎症・皮膚疾患に解析対象を広げ、新鮮な臨床検体を用いて遺伝子変異と関連する細胞異常のパネルを蓄積しつつある。特に、代表的な慢性炎症性皮膚疾患である乾癬の重症亜型と考えられていた汎発性膿疱性乾癬の1例にIL-1ファミリーサイトカインの抑制因子であるIL36RN変異を見出し、身近な臨床現場にも遺伝性自己炎症疾患が存在することを明らかにした意義は大きく、自己炎症疾患の病態解明がありふれた疾患の治療に直結するモデルとなりうる。通常の乾癬においても、表皮でのIL-36の産生が亢進することが判明しているが、IL-36Raの産生低下の有無、さらにこれらのバランスを調整している転写因子の解明を目指したい。ただWHIM症候群様複合型免疫不全症の解析で明らかになったように、細胞機能異常の表現型と遺伝子変異が1対1で相関しないこともあることも明らかとなり、悩ましいところである。一方、本研究の当初の目的として、各種慢性炎症性疾患における異常シグナル経路検出を目的とした蛋白質アレイの作成を目指したが、インフラマソーム関連を含め新たなキットが次々とコマーシャルに発売されてきており、自らアレイを作成する意義は減りつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.末梢血単核球・皮疹生検組織におけるユビキチンのリソソームへの蓄積について、中條―西村症候群のみならず種々の皮膚炎症疾患の患者について検討し、疾患や病期特異性の有無を確認する。 2.皮疹生検組織におけるIL-36の産生亢進とIL-36Raの産生低下について、汎発性膿疱性乾癬のみならず、尋常性乾癬やBehcet病・Sweet症候群などの好中球性皮膚症の患者について検討し、疾患や病期特異性の有無を確認する。 3.代表的な遺伝性自己炎症疾患特異的なシグナルとして、末梢血単核球・皮疹生検組織におけるASC・活性化カスパーゼ1の検出によるインフラマソーム形成について、クリオピリン関連周期熱のみならず、慢性蕁麻疹やStill病などの患者について検討し、疾患や病期特異性の有無を確認する。 4.抗IL-6受容体抗体製剤を投与した中條―西村症候群患者について、投与前後の末梢血中のサイトカイン、ケモカイン、アディポサイトカイン値の経時的推移を検討する。 5.中條―西村症候群をモデルに、市販されている蛋白質アレイキットを用いてシグナル異常の検出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・消耗品 1)各種抗体 300,000円 2)遺伝子関連試薬・器具 300,000円 3)染色関連試薬・器具 300,000円 ・学会関連費 1)学会参加費 100,000円 2)国内・海外学会参加旅費 200,000円 3)年会費(間接費) ・成果報告に関わる費用 1)論文校正、投稿費、別刷代 100,000円 合計 1,300,000円
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Research Products
(25 results)