2012 Fiscal Year Research-status Report
ユーメラニンおよびフェオメラニンの紫外線による生理的分解過程の解明
Project/Area Number |
23591659
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
伊藤 祥輔 藤田保健衛生大学, その他部局等, 名誉教授 (70121431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若松 一雅 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (80131259)
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Keywords | メラニン / 紫外線 / 可視光線 / ユーメラニン / フェオメラニン / UVA / UVB |
Research Abstract |
メラニンには黒色のユーメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、前者は紫外線防御に働くが、後者は光発がんをもたらすと言われている。メラニンは表皮メラノソームにおいて産生され、ケラチノサイトに転送されるが、その後の紫外線による生体内での分解についてはほとんど不明である。本研究は両型のメラニンの紫外線(UVA, UVB)による生理的分解過程の解明を目的とする。分解過程の追跡には、我々の開発したメラニンの分解的定量法を活用する。平成24年度は、合成および天然(ヒト毛髪)を用いて、UVA照射によりユーメラニンでは分解により遊離PTCA(ピロール-2,3,5-トリカルボン酸)が生成してポリマー鎖の短縮が起り、フェオメラニンではベンゾチアジン体からベンゾチアゾール体への変化とともにポリマー鎖の伸長が起ることを明らかにした(Pigment Cell Melanoma Res, 2012)。 平成25年度は、これらの成果を踏まえて、合成および天然メラニンについて、UVAおよび可視光による光分解過程を解析した。その結果、PTeCA(ピロール-2,3,4,5-テトラカルボン酸)がユーメラニンの架橋度を占める特異的なマーカーとなることが分かり、これを用いて培養ヒトメラノサイト、単離ウシ網膜色素上皮メラニン、ヒト網膜色素上皮細胞において、ユーメラニンがUVAあるいは可視光により架橋構造を形成することを示した(Pigment Cell Melanoma Res, 2013)。これらの結果は、光によるユーメラニンの分解過程が、分解のみならず架橋形成を伴う複雑なものであることを示し、網膜色素上皮細胞におけるユーメラニンによる活性酸素の分解や鉄イオンの捕捉という機能が可視光により低下することを示唆している。このように、加齢黄斑変性の病因に関連して興味深い結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
網膜色素上皮メラニンと細胞を用いる実験は当初の計画には無かったが、ポーランド・クラコウ大学Tadeusz Sarna教授の厚意により入手することができ、期待以上の成果が得られたので、Pigment Cell Melanoma Research誌に掲載することができた(2013)。 さらに、関連研究として、2億年前のイカ墨袋のユーメラニンを分析する機会があり、ユーメラニンが保存されているが、高度の架橋構造を形成していることをPTeCAの分析により証明して発表した(Proc Natl Acad Sci 2012, Analytical Biochemistry 2013)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進する過程で、UVA照射によるメラニン分解過程を合成可溶メラニン(DHICAメラニン、DOPA+CYSメラニン)を用いて追跡する手技が有用であることが分かった。これを用いて、メラニン分解過程の詳細を解明したい。 培養表皮メラノサイトおよび三次元ヒト皮膚モデルを用いて、紫外線照射によるメラニン分解過程をより詳細に解析する。可視光にもメラニン分解作用があることが分かったので、可視光線照射実験も同時に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メラニン分析のためHPLCカラム、試薬および器具を購入する。さらに、培養試薬および三次元ヒト皮膚モデルを購入する。HPLC等の機器の修理にも使用する。さらに、これまでの成果をヨーロッパ色素細胞学会(ポルトガル国リスボン市)および日本色素細胞学会(大阪市)において発表する。論文掲載にも費用を要する。
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[Journal Article] Cystinosin is a melanosomal protein that regulates melanin synthesis2012
Author(s)
Chiaverini C, Sillard L, Flori E, Ito S, Wakamatsu K, Briganti S, Fontas E, Bernard E, Cailliez M, Cochat P, Foulard M, Guest G, Niaudet P, Picard M, Bernard FX, Antignac C, Ortonne JP, Ballotti R
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Journal Title
FASEB J
Volume: 26
Pages: 3779-3789
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