2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591661
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
山西 清文 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10182586)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 常染色体劣性魚鱗癬 / トランスグルタミナーゼ1 / 温度感受性 / 魚鱗癬様紅皮症 / 葉状魚鱗癬 |
Research Abstract |
常染色体劣性魚鱗癬の表現型には非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(CIE)と葉状魚鱗癬(LI)が典型的な病型であるが、実際にはそれらの中間の症状を示す症例や、病変が特異な分布を示す病型も存在する。原因となる遺伝子としてトランスグルタミナーゼ1(TGM1)、ABCA12など複数の原因遺伝子が同定されているが、これらの遺伝子変異がどのように複雑な病型に関与するのか、詳細は不明である。本年度は、臨床的に極めて特徴的な症状を示す夏季に増悪する常染色体劣性魚鱗癬の病態について研究を行った。対象とした症例は、コロジオンベービーとして出生し、その後魚鱗癬の症状を発症している。家系に同症はない。症状としては、頭部、頸部、体幹、四肢に限局性の比較的大型の鱗屑を認め、その部分にび漫性の紅斑を伴っていた。その他の部位では症状は軽く、掌蹠は薄い鱗屑が付着する程度の過角化であった。魚鱗癬症状の強い皮疹の分布に一致して紅斑を認め、サーモグラフィーではその部位の体表温度が高温であった。魚鱗癬と紅斑は夏季に増悪し、10℃の外気温の上昇とともに、拡大と悪化を示した。厚い角層と紅斑を伴う病変部のHE染色像では角層の均一な肥厚、表皮肥厚と真皮の血管周囲に炎症細胞浸潤を認めるが、軽症の部位では炎症細胞浸潤、表皮肥厚はほとんどなく、角層肥厚は軽度であった。症状が著しい部位の電顕像では、角層の著明な肥厚、周辺帯の低形成、角層デスモソームの残存が観察された。倫理委員会承認の下にTGM1遺伝子解析を実施した結果、父方由来のc.430G>A と母方由来のc.919C>Tの塩基置換が検出され, トランスグルタミナーゼ1にp.G144R と p.R307W の変異が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異な表現型を示す魚鱗癬症例の解析が実施できたことは非常に貴重な機会で有り、今後の本研究の方向性や進展に大きな契機となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実際の魚鱗癬症例の解析から、新たに変異遺伝子産物の機能回復や発現制御に関わる調節系の重要性を認識するに至った。この点を踏まえ、今後は変異遺伝子産物の発現、分解機構や代償機構にも研究内容を広げる必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は魚鱗癬モデルを用いた研究を実施する予定で、ヒトの常染色体劣性魚鱗癬で検出されているトランスグルタミナーゼ1変異をもつマウスモデルの表現型を詳細に検討し、とくに変異遺伝子産物の発現や安定性に注目して解析を進める。また、病変部のサイトカイン・ケモカインプロフィールを調べ、表現型の免疫学的特性を明らかにする計画である。
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Research Products
(6 results)