2012 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患に関わるストレス脆弱性の脳内神経基盤―神経細胞新生と気分障害に着目してー
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23591667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 伸 北海道大学, 大学病院, 講師 (60360905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 猛 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250438)
朴 秀賢 北海道大学, 大学病院, 助教 (60455665)
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Keywords | 抗うつ薬 / 神経幹細胞 / 海馬 / ドパミン / CaMKIV / うつ病 / 気分障害 / 神経細胞新生 |
Research Abstract |
抗うつ薬の作用機序として、成体脳海馬における神経細胞新生の関与が重要視されてきている。昨年度は引き続き、神経細胞新生に影響を与えるカスケードの物質として1)ドパミン(DA)、2)カルモジュリンキナーゼIV (CaMKIV)を検討した。 1)DA:双極性うつ病、難治性うつ病の患者にDAアゴニストが効果を示すという報告がある。このため、神経細胞新生にDAがいかに関わっているかを、成体ラット海馬歯状回由来神経幹・前駆細胞(ADPs)を用いてin vitroで、さらにin vivoにおける効果を検討した。その結果、①DAは直接、ADPsのDNA合成を促進させ、細胞数を増加させうる、②この増殖作用はD1-like受容体を介している、③レチノイン酸による分化誘導はDAにより、ニューロンにシフトする、④D1-like受容体アゴニストは成体ラット海馬における新生神経細胞の生存数を増加させる、という所見を得た。これらの結果を投稿し、現在校閲の段階である。 2)CaMKIV: シナプス間隙においてセロトニン、ノルアドレナリンを増加させる従来の抗うつ薬の慢性投与は各受容体を介して、海馬顆粒細胞内のcAMP―CREBカスケード活性化し、その下流に想定されているFGF-2, BDNFなどの神経栄養因子が神経細胞を増加させると考えられている。神経系において細胞内カルシウム濃度の上昇は、カルシウム/カルモジュリンが結合し、Ser/Thr部位のリン酸化によりその活動性が変化するCaMKにより、多くの細胞内反応が引き起こされる。中でもCREBを直接リン酸化するCaMKIVは注目される物質である。昨年度はCaMKIVの電気痙攣療法(ECT)における役割をCaMKIV KOマウスを用いて検討した。その結果、KOマウスは行動実験上、対照群と比較してECTによる抗うつ効果を示さなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成体脳海馬における神経細胞新生への陽性因子(増殖の促進、生存の促進など)を検討することは、新規抗うつ薬開発の一助となる可能性がある。また、最近では海馬の神経細胞新生が、ストレスの応答の中枢神経のゲートとも考えられてきており、再発・再燃予防の点からも、取り上げることは有意義なことと思われる。各論的にCaMKIVとDAに着目し、その結果を論文できているため、概ね順調な進展と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
corticosteroneの慢性投与によるうつ病モデルの確立し、CaMKIVの役割をより検討する計画である。また、新たな試みとして遺伝子研究から、精神疾患のいくつかの候補遺伝子が、挙げられているため、こららの物質の神経幹細胞・前駆細胞における役割を検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
総て実験動物の購入に当てる予定である。
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Research Products
(10 results)