2011 Fiscal Year Research-status Report
環境ストレスに応答する脳内カンナビノイドシステムの解析
Project/Area Number |
23591685
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
藤原 道弘 福岡大学, 薬学部, 教授 (10091331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 准教授 (00320309)
入江 圭一 福岡大学, 次世代女性生命科学研究所, ポストドクター (50509669)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | カンナビノイド / ストレス / 超音波発声 |
Research Abstract |
大麻主要成分(Δ9-tetrahydrocannabinol:THC)は、生体内の大麻受容体を介し、様々な薬理作用を示す。こうした大麻受容体を介した精神・神経系に対する作用は、様々な伝達物質を調節し、中枢性に起こる情動行動を制御する。このように大麻受容体は、シナプスにおける情報伝達機構の調節を行っており、大麻受容体と生体内の大麻受容体リガンドから成り立つ系はカンナビノイドシステムと呼ばれ、精神・神経系の調節に関与すると考えられる。本研究課題は精神・神経系のカンナビノイドシステムが果たす環境ストレスへの情動適応への役割を解明し、成果を利用した創薬や大麻乱用の拡大抑止を目的としている。本年度は、THCの基本的な情動的作用を超音波発声解析により、評価した。実験は、Wistar系ラットを用い、THC 0.3,1,3 mg/kgを腹腔内投与し、その60分後に風圧0.3MPaの12秒間の空気刺激を与えた後、超音波発声および行動変化を5分間測定した。ラットが発声する超音波は、超音波解析ソフトであるSono trackを用いて解析した。その結果、THC非投与時、ラットは空気刺激を与えても超音波をほとんど発声しなかった。一方で、THC投与後、空気刺激を与えると、20~25kHzの超音波を発声した。以上の結果から、THCは被刺激性を亢進することが超音波発声を解析することで、確認できた。また、成熟ラットにおける20~25kHzの超音波発声は不快な情動を表していることが報告されている。よって、超音波発声を用いて、THCの作用を解析することは、THCが情動に与える影響を観察するのに有用な評価方法であることが示唆された。本研究で得られた成果は大麻抑止の目的で、国立精神神経センターの部会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、THCが情動に与える影響を評価する手段として、超音波発声を用いた解析法を確立した。この成果は、次年度、実施する環境ストレスに対するカンナビノイドシステムの応答を評価する手段として用いる。また、本年度の研究により得られたエビデンスは、第25回(平成23年度)薬物依存臨床医師研修会・第13回(平成23年度)薬物依存臨床看護等研修会/国立精神・神経センターにて、表題「大麻によって発現する動物の異常行動」として、発表した。研修会を通して、和田清先生をはじめとする専門家の方々と意見交換を行った。また、研究代表者が開講している福岡大学新入生を対象とした「健康と医療(アルコール・薬物依存)」にて、成果を活用し、大麻乱用の抑止に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
単独隔離飼育することで環境ストレスを与えたラットは、THCを投与することで、攻撃行動が誘発する。本年度確立した超音波発声を指標とする情動行動の解析法を用い、単独隔離飼育などの環境ストレスがTHCの薬理作用に与える影響を測定する。一方、環境ストレスがカンナビノイドシステムに与える影響を、大麻受容体の変化や内在性リガンドを測定することで、検討する。また、今年度同様、得られた成果をもとに大麻抑止の目的で情宣活動を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、今回、見られたTHCによる被刺激性の亢進作用が単独隔離飼育などの環境ストレスによって影響を受けることを確認する。本年度得られたラットの超音波発声を利用した情動行動の評価法を利用し、実験を行う。これらの実験は、研究代表者の所属機関である福岡大学に設置されているsono trackやGC-MSなどの現有設備にて、遂行可能であるため、設備備品については特に使用しない。本年度研究経費として、消耗品費900千円を使用する予定である。研究計画の環境ストレスによるカンナビノイドシステムの変化を解析するために必要となる分子生物学研究試薬、GC-MASS用試薬や大麻受容体関連試薬に600千円、実験動物の購入(餌代などを含む)に300千円計上した。これらの経費により、平成24年度に本件研究を遂行する予定である。この他、研究成果発表費用に旅費、論文の校閲費および印刷費として、200千円を使用する予定である。
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