2011 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病に関連する新規APLP2由来脳脊髄液中ペプチドの解析
Project/Area Number |
23591704
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳田 寛太 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (70467596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 正康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90335357)
田上 真次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362735)
児玉 高志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (30512131)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / アルツハイマー病 / アミロイドβ |
Research Abstract |
脳脊髄液中から発見したAPLP2由来のアミロイドβ様ペプチド(APL2β)の産生メカニズムを解明するため、HEK293細胞にAPLP2を過剰発現させた細胞を作製した。この培養上清をAPLP2の膜貫通領域近傍に対する抗体で免疫沈降し、質量分析装置により解析したところ、脳脊髄液中のAPL2βと同じ質量のペプチドはほとんど検出されず、N末端側が短い4種類のAPL2βが検出された。これらのペプチドはγ-セクレターゼ阻害剤で検出されなくなり、β-セクレターゼ阻害剤及びα-セクレターゼを活性化させる薬剤で増加した。また、α-セクレターゼ阻害剤やBACE1(β-セクレターゼ)の過剰発現により脳脊髄液中のAPL2βと同じペプチドが増加したことから、脳内のAPLP2はβAPPやAPLP1と同様にβ-及びγ-セクレターゼによって切断されるが、培養細胞にAPLP2を過剰発現させるとα-セクレターゼによって切断されたペプチドが増加することが示唆された。次にAPLP2を家族性アルツハイマー病変異のプレセニリン1(FAD PS1)発現細胞に導入し、アミロイドβと同様に正常よりもC末端側が長いAβ42様のAPL2βが増加するのかを調べた。全長のAPLP2を細胞に発現させるとα-セクレターゼによって切断されてしまうので、β-セクレターゼで切断されたAPLP2(APLP2 β-CTF)の遺伝子を作成し、野生型及び11種類のFAD PS1発現細胞に導入した。FAD PS1発現細胞はAβ42の産生を増加させるが、APL2βはどの変異でもC末端側が長いペプチドは増加せず、むしろ短いものが増加した。βAPP以外のγ-セクレターゼの基質であるAPLP1やNotch1でもFAD PS1発現細胞ではC末端側が長いペプチドが増加していたが、APL2βは長いペプチドが増加しないという興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APLP2を過剰発現させた培養細胞を作製し、脳脊髄液中のAPL2βがアミロイドβと同様にβ-及びγ-セクレターゼで切断されて生成することを明らかにした。これまでにAPLP2はα-セクレターゼで切断されることが報告されており、脳内でもα-セクレターゼによって切断されたものが多いと考えられていた。しかし今回の結果から、脳内では主にβ-セクレターゼで切断されているが、培養細胞にAPLP2を過剰発現させるとα-セクレターゼによる切断が起こりやすい事が示唆された。FAD PS1とAPLP2 β-CTFを発現する細胞を作製し、Aβ42に相当するC末端側が長いAPL2βが増加するのかを調べた。予想に反してC末端側が長いAPL2βは増加せず、逆にC末端側が短いペプチドが増加することを発見した。また、Aβ42産生を増加させる薬剤(S2474及びFenofibrate)を野生型プレセニリン1とAPLP2 β-CTFを発現させた細胞に加えても同様の結果が得られた。以上の結果から、Aβ42が増加する環境下でも基質によってはC末端側が長いペプチドが増加せず、むしろ短いものが多く生成するというγ-セクレターゼの膜内切断機構についての新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きFAD PS1とAPLP2 β-CTF発現細胞でAβ42に相当するAPL2βペプチドを検索し、γ-セクレターゼの切断メカニズムを解明する。FAD PS1発現細胞でC末端側が短いペプチドが増加する事を質量分析以外の方法で証明するため、8M尿素を含むゲルで電気泳動してAPL2βを分離し、APL2βに対する抗血清でウェスタンブロットを行う。また、APL2βペプチドがアミロイドβの様に凝集するのかを合成ペプチドを作成して確かめる。Aβが凝集する条件下で反応させ、生成したアミロイド繊維や凝集体をサイズ分画クロマトグラフィーと電子顕微鏡、Thioflavin-T アッセイで検出する。また、オリゴマーを形成することも考えられるので、生成した凝集体をウェスタンブロットし、モノマーよりも大きな分子量のものができているのかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特に高額な備品を購入する予定も無く、主に消耗品の購入や、合成ペプチドの作成に使用する。
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