2012 Fiscal Year Research-status Report
認知症でみられる作話・取り繕い、妄想の客観的臨床指標の作成とバイオマーカーの確立
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23591711
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
谷向 知 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90361336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 竜治 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60346682)
松本 光央 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (20581094)
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Keywords | 作話・取り繕い |
Research Abstract |
認知症専門外来を受診した患者30例を対象に、神経心理検査、画像検査(形態画像、機能画像)を実施した。また、通常の問診に加え、①本人の訴えに「もの忘れ」など記憶に関する訴えがない場合、「ものを捜すことが最近増えていないか?」、②「捜しているものが見つからない場合、誰かが移動した(持っていった)と思うか?、③夜間の睡眠状況に加え、午睡の有無について確認した。 アルツハイマー型認知症と診断された20例では、自発的にもの忘れについて口にするものは8例であったが、そのうち家人に指摘されるが故に訴えているものが4名含まれていた。一方、自発的に記憶障害を訴えない患者でも、①のような訊ね方を行うと1名を除き捜すことが増えているということを認めた。また、盗られ妄想を認めた患者は5名すべてで、②の質問に対して、「思う」と回答し、否定したものにはもの盗られ妄想は認めなかった。このことから、②の質問からは作話の有無についての判別は困難であると考えられた。 午睡の有無については、本人が午睡をすると認めた4例すべてが家族評価と一致し、作話も認めなかった。一方、午睡を否定した16例の6例では家族評価と一致し、すべての症例において作話を認めなかった。もの盗られ妄想を認めたものは5例で、午睡の自・他覚的評価が不一致であったものは1例であった。これらの結果から、睡眠状況の自・他覚的評価が一致すれば、作話は認めないと考えられた。同様の傾向が血管性認知症(4例)、レビー小体型認知症(3例)、正常圧水頭症(3例)でも認めた。 これまで前頭側頭葉変性症では作話・取り繕い反応が少ないと報告されていたが、昨年度の研究で、4例中2例で作話・取り繕い反応がみられると報告した。そのうち1例は、この1年でエピソード記憶の障害が強くなり、再度精検討の結果アルツハイマー型認知症に変更となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年発表された、認知症施策5カ年計画では改めて、認知症の早期発見・早期対応が重要であるとされている。認知症の早期発見にはかかりつけ医がいち早く、初期症状のひとつである摂り繕い反応に気付くことが重要である。ただ、複雑な客観的指標ではかかりつけ医に敬遠されることが予想され、睡眠の項目を入れ、その有用性について検討するなど時間のかからない、より簡便な臨床指標の作成に軌道修正したために研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に加えた質問項目を含めて、作話・取り繕い、もの盗られ妄想をスクリーニングする指標の検討を行う。 また、この指標を用いてこれらの症状の責任病巣について画像検査行いて検討するとともに、近年、衝動性などとの関連で報告のあるオキシトシンなどのバイオマーカーとの関連についても比較検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には精神症状と関連があると考えられる血液バイオマーカの測定に使用する。 また、次年度中に成果を含め学会、研究会で情報交換を行う。
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