2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591720
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
丹羽 真一 福島県立医科大学, 医学部, 名誉教授 (30110703)
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Keywords | 統合失調症 / 社会認知機能 |
Research Abstract |
本研究は、統合失調症の社会認知機能を評価するための包括的検査バッテリーの開発を目的とするものである。統合失調症では社会認知機能障害があることが経験的に知られている。しかし統合失調症の社会認知の全体像を正確に評価する包括的検査バッテリーがまだ開発されていない。社会認知の良否は長期的な社会生活予後の重要な決定要因であり、長期的な社会生活予後を改善することが統合失調症治療の眼目であるから、社会認知の包括的な評価方法の開発の臨床的意義は大きい。具体的には複数の下位検査からなる統合失調症の社会認知機能評価バッテリー案を整理し、対人機能、職業機能、自立生活機能との関連が深い下位検査を選び、「統合失調症のための包括的社会認知検査バッテリー(ABCSoCS、エービーシーソックス、A Battery for Comprehensive Assessment of Social Cognition in Schizophrenia)」を完成すること目的とする。 本年度、新たに患者群に21名、健常者群に3名の協力者が得られ、昨年度と合わせて63名分のデータを収集した。くわえて、蓄積された健常者群41名のデータを用いて、ABCSoCSβ版の妥当性をクロンバッハのαを用いて検討した結果、α=.78であり、内的妥当性は比較的高いものと推測される。またABCSoCSβ版を構成する種々のテストが潜在的にどのような共通因子を持つのかを検討するため、最尤法promax回転を用いた因子分析を行った。固有値1を基準に5ないし6因子が妥当だと推測された。分析の結果、累積寄与率が高い6因子を採用した(=0.51)。それぞれの因子は第一因子「目的の推測」、第2因子を「自己認知」、第3因子を「自信と不安」、第4因子を「他者に対する非難」、第5因子を「文脈からの推論と攻撃性」、第6因子を「心の理論とメタ認知」と仮称する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の第一の目標である,ABCSoCSに用いる社会認知検査の選定については,社会認知に関わる多くの検査を比較検討した後,最終的に14項目を選出した。実施時間の長さや,検査協力者に与える疲労等を考慮し,適切な候補が作成されたと考えられる。 二つめの検査項目選定後,協力の得られる福島県内の精神科治療施設の外来あるいは病棟で下記検査を実施した。検査実施に当たっては,研究目的と内容、倫理規定について説明をし,書面で承諾を得られた方にのみ実施した。現在は,健常者,統合失調症患者合わせて62名の協力を得ている。来年度中に健常者、統合失調症患者をあわせて80名に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
協力の得られる福島県内外の精神科治療施設の外来あるいは病棟で,新たな対象者に対して ABCSoCS-βと社会生活機能評価テストを施行する。得られた結果に基づき社会機能(対人機能,職業機能,自立生活機能)との相関が強い項目を残し,弱い項目は除外して統合失調症の治療という観点で意味のある検査バッテリーとしてABCSoCSを完成する。また,用いた各社会機能評価尺度に含まれる対人機能,職業機能,自立生活機能を評価する下位尺度のうち,作成したABCSoCSを用いる際に同時に使用するとよい社会機能評価尺度CSF(Comprehensive Social Function Scale)を作成する。 ABCSoCSの有用性と信頼性を検証するために,国立精神・神経医療研究センター,帝京大学,鳥取大学に協力を得て,新たな統合失調症患者に対してABCSoCSと社会機能評価尺度CSFを4ヶ月の間隔を置いて2回施行する。新たな対象者に施行した場合にもABCSoCSとCSFの間に相関が保たれていること(有用性の検証),および2回施行したABCSoCSの評価結果の間で再現性が得られること(信頼性の検証)を確認してABCSoCSの有用性と信頼性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、引き続き協力の得られる福島県内外の精神科治療施設の外来あるいは病棟で,新たな対象者に対してABCSoCS-βと社会生活機能評価テストを施行する。前年度と合わせて,80名の協力を得ることが目標である。得られた結果に基づき社会機能(対人機能,職業機能,自立生活機能)との相関が強い項目を残し,弱い項目は除外して統合失調症の治療という観点で意味のある検査バッテリーとしてABCSoCSを完成する。 他方,用いた各社会機能評価尺度に含まれる対人機能,職業機能,自立生活機能を評価する下位尺度(GAF, LSP, LASMI, SASS)のうち,作成したABCSoCSを用いる際に同時に使用するとよい社会機能評価尺度CSF(Comprehensive Social Function Scale)を作成する。
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Research Products
(9 results)