2011 Fiscal Year Research-status Report
急性期脳梗塞のMRI画像における表示階調自動統一化システムの開発
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23591784
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
長島 宏幸 群馬県立県民健康科学大学, 診療放射線学部, 講師 (60352621)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 急性期脳梗塞 / MRI / 拡散強調画像 / 見かけの拡散係数画像 / 画像表示 / 統一化 / システム開発 / 濃度ヒストグラム解析 |
Research Abstract |
MRI装置で撮像される拡散強調画像(DWI)および見かけの拡散係数画像(ADC map)は,急性期脳梗塞の画像診断において中心的な役割を占めるが,表示画像のウィンドウ調節によって脳虚血領域の程度および範囲が大きく変化するため,急性期脳梗塞の存在診断や範囲判定の精度低下をもたらすものと推測される.そこで,ASIST-Japanと呼ばれる研究グループは,DWIと同時撮像される画像(b0画像)の視床部位における信号強度を手動計測することで,DWIの表示条件を標準化できる手法を考案した. われわれは,平成21・22年度に科学研究費補助金(若手研究(B))を交付していただき,ASIST-Japanによって考案された標準化法のすべてが自動化されたシステム,および新たな表示階調の自動調節システムを開発した.しかし,研究調査において,DWIとb0画像を画像サーバ等に転送する際,b0画像のみを圧縮する施設が存在していることが明らかとなった.このような場合,b0画像を利用してDWIの表示階調を調節するASIST-Japanの考案方法やわれわれの開発方法を利用することができない.さらに,調査では,ADC mapに関する画像表示法の推奨や基準について,これまで全く提唱されていないこともわかった. そこで,本研究では,b0画像を利用せずにDWIの表示階調を自動調節する新たなシステムの開発に加え,ADC mapの表示条件が担当者間でどの程度異なるのかの実態調査,およびADC mapの表示階調自動調節システムの開発を目的とした. 本研究において,DWIおよびADC mapの表示階調を統一化することで,淡い画像所見の見逃しや虚血範囲判定のばらつきがなくなるものと推測される.また,病巣に対する信号強度などの物理量を利用した発症時間の推定や血栓溶解療法の客観的判断も可能になるものと推測される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記した,平成23年度における研究計画および実施内容から,本研究の達成度を「おおむね順調に進展している.」と評価した.1,先行研究に関する背景,方法等を再度精査し,問題点を明らかにする.→先行研究の問題点は,DWIの表示階調調節に際してb0画像を用いる点にある.b0画像は,画像サーバや画像処理ワークステーションへの転送時に階調が圧縮されることがあり,その場合,DWIの階調と異なるため,これまでの手法を適用することはできない.→DWIとともに急性期脳梗塞の画像診断に利用されているADC mapに対する表示条件設定の推奨や基準について,これまで提唱されていない.2,急性期脳梗塞の画像所見が含まれるDWIおよびb0画像を収集し,画像データベースを構築する.→群馬県内の2施設から,60症例のDWIとb0画像を提供していただき,画像データベースを構築した.なお,画像は,施設長(病院長)及び画像管理責任者の許可を受け,施設ごとの倫理規定に準じて提供された.3,構築された画像データベースを用いて,ASIST-Japanにより考案された表示条件標準化法を実際に試みる.→b0画像上の視床部位の信号強度を利用してDWIの表示条件を設定する,ASIST-Japanにより考案された方法を,構築した画像データベースに対して実施した.4,b0画像を利用せずにDWIの表示階調を自動調節できる方法を考案する.→われわれは以下のアルゴリズムを考案した.1)DWIの全スライス像を合成した3次元画像を作成する.2)階調の線形化処理,しきい値処理,ラベリング処理を用いて脳実質部を抽出する.3)脳実質部から濃度ヒストグラムを計算して最頻値となる信号強度を決定する.4)決定された信号強度をDWIのウィンドウレベルに,信号強度の2倍値をウィンドウ幅に設定して,画像を出力する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究計画は以下のとおりである.1)ASIST-Japan法と本システムにより調節されたそれぞれのDWIに対して,目視による視覚評価,および画質評価値を用いた定量的評価を行い比較検討して,本システムの精度を検証する.2)平成23年度に構築した画像データベースを用いてADC mapを作成する.3)施設間,担当者間でどの程度ADC mapの表示条件に差異が生じるかを調査するため,MRI検査に従事する医師および診療放射線技師に,同一被検者のADC mapを観察していただいて表示条件(WW・WL)を設定していただく.4)作成したADC mapを用いて,新規性のある表示階調自動統一化法を考案する.5)平成24年度に医師および診療放射線技師により表示条件が設定されたADC mapと,考案した本システムにより自動設定されたADC mapに対し,目視による視覚評価,および画質評価値を用いた定量的評価を行い比較検討して,本システムの精度を検証する.なお,研究が計画どおりに進まない時には,関連医療機関の画像診断部局に所属する医療スタッフや,研究代表者が所属する群馬県立県民健康科学大学で卒業研究指導をしている学部生に協力を依頼する.また,本研究を遂行する上で有益な結果が得られた時には,関連する学会に報告し,他者からの意見をいただく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・統計解析用ソフトウェアの購入:本研究では,次年度,先行研究方法と本研究方法によって表示階調が調節された画像から定量的な画質評価値をそれぞれ求めて比較検討することを計画しており,統計的な解析が行えるソフトウェアを購入する予定でいる.・書籍の購入:本研究を遂行するにあたり,MRIおよび医用画像工学等の関連する分野の情報収集と知識習得のために,書籍を購入する予定でいる.・国内・外国の関連学会への報告(口述および展示発表)および論文投稿:研究により得られた有益な結果を社会・国民に発信するため,日本のみならず欧米の関連学会に報告および論文を投稿する予定でいる.なお,論文投稿に関して別冊費が必要となる場合がある.また,英文雑誌への論文投稿では英文校正費も必要となる.・研究への協力者に係る謝金の支出:本研究では,次年度,開発したシステムの精度検証を目的とした観察者による視覚評価,および医師および診療放射線技師間におけるADC mapの表示階調の差異を調査するための画像観察を計画しており,協力者に対して謝金を支出する予定でいる.・記録メディアの購入:平成23年度の研究において画像データベースを構築することができたが,桐生厚生総合病院および中央群馬脳神経外科病院の両施設には継続して画像を収集していただけるよう依頼しており,高容量の画像を収納でき,且つ持ち運び可能な記録メディアを購入する予定でいる.
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Research Products
(1 results)