2012 Fiscal Year Research-status Report
軽度認知機能障害から認知症への移行を臨床情報と画像所見から予測する識別器の作成
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23591797
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
橋本 順 東海大学, 医学部, 准教授 (20228414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉井 文均 東海大学, 医学部, 教授 (90129726)
彌冨 仁 法政大学, 理工学部, 准教授 (10386336)
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Keywords | 認知症 / 軽度認知機能障害 / 脳血流SPECT / MRI |
Research Abstract |
平成24年度においても、吉井と橋本による臨床データの収集、画像処理と彌富による識別器プログラムの作成に分かれて研究が行われた。 臨床データの収集においては、軽度認知機能障害にとどまっている40例、アルツハイマー病に移行した80例の臨床背景、画像データの収集と整理、解析を行った。入力因子は臨床背景、MRI検査所見、脳血流SPECT検査からなり、MRIと脳血流検査については通常の画像処理の他に画像統計解析を行い(VSRAD法ならびにeZIS法)、それらの結果をデータに加え、一覧表にして整理した。 識別プログラムの作成ならびに識別器の評価は法政大学理工学部において設置されているワークステーション上で行われた。認知症に移行するかそうでないのかを識別するためにバイナリクラス識別器を作成し、上記のデータを識別器にかけて診断能をチェックした。結果として、画像指標ではMRIのVSRADで得られる疾患特異領域(主に側頭葉)の萎縮部分の割合であるextent、脳血流SPECTのeZISで得られる疾患特異領域(主に頭頂葉)の萎縮部分の割合であるextentが高い識別能を示し、これら2つの指標を組み合わせて作成した識別器はさらに鑑別に優れていた。ただし、優れた鑑別を可能とする指標の種類が患者の年齢に依存してやや異なることも判明し、対象年齢に応じて複数の識別器を作成するといった対策の必要性が示唆された。 まだ症例のデータ数が全体に不足しているため、上記プログラムをテストするためにすでに持っている皮膚画像から黒色腫の良悪性を鑑別する研究などで使用したデータを試験的にかけ、識別プログラムの作働状況をチェックした。次年度は全体の症例数や特にアルツハイマー病以外の認知症に移行した症例のデータ数をさらに増やして検証する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度においてもデータを収集した軽度認知機能障害例においては、移行した認知症の原因疾患に偏りがあり、アルツハイマー病が多く、他の疾患への移行例が引き続き少なかった。精度の高い識別器作成のためには今後さらに蓄積症例を増やしていく必要があると考えられた。 入力因子として画像から得られるパラメータに比して臨床背景因子の数を少なくとどめた。これは認知症の判定を行う際に用いられる国際的に確立された診断基準のなかに症状などの臨床背景因子が数多く含まれているために、識別器の入力因子に臨床背景因子を多く入れてしまうと画像パラメータの状況に関わりなく診断精度が高くなってしまい、至適な画像パラメータの決定が困難になるというジレンマが発生している。最終的には臨床背景因子も含めてできるだけ多くの入力候補因子を検討対象に拡げていく計画である。 放射性医薬品であるECD(放射能標識前のバイアル製剤)の米国での生産ラインのトラブルが予想よりも長引き、引き続き供給が滞っていることから、すでに保有している正常データベースの症例数をさらに増加させる試みが遅れている。現存する健常者データベースでの検討に加えて、disease free controlの症例から作成したデータベースも併用している。
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Strategy for Future Research Activity |
汎化性の高い識別器を作成するために、前述のごとく対象例を増やし、さまざまな疾患へ移行する軽度認知機能障害の症例をさらに蓄積することがまず重要である。さらに認知機能正常例(disease free control)での脳血流データベースの蓄積を増やし、識別器の基礎となる画像統計解析自体の精度向上をはかる予定である。 次いで、平成24年度までは認知症の移行の有無を判定するおもに線形重回帰のバイナリクラス識別器を作成したが、今後はサポートベクターマシーンをベースにした非線形の識別器や、アルツハイマー病以外の認知症に移行した症例のデータとの統合を行うことで人工ニューラルネットワークをベースにしたマルチクラス識別器の作成を試みる。成果を医学系あるいは工学系の学会で随時発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米国の製造過程でのQCの問題で平成23年度末から現在にわたり続いている脳血流評価用の放射性医薬品(ECD)の供給が再開されるめどが立たないため、予定していた画像統計解析に使用する健常者正常データベースの例数の増加を断念し、代わりにすでに検査が行われている症例をdisease free controlのデータベースとして使用する方法に変更した。したがって当初予定していたECDの購入は見送ることになった。 画像処理や識別プログラム作成用に用いるソフトウエアやコンピュータ関連品、画像データを整理、保管するための記憶媒体の購入を次年度も計画している。 学会発表のための旅費や学会参加費、英語論文投稿のための校正にかかる費用の支出を予定している。
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