2012 Fiscal Year Research-status Report
EGFシグナル阻害による癌治療計画の支援システム構築を目指した新規診断薬の開発
Project/Area Number |
23591828
|
Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
平田 雅彦 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (00268301)
|
Keywords | SPECT / EGF / チロシンキナーゼ / シグナル伝達 / 核医学 / 放射性医薬品 / 放射性ヨウ素 |
Research Abstract |
分子細胞生物学,分子遺伝学の研究の進歩に伴い,分子レベルでのがん治療が展開されつつある。多くの分子標的治療薬が開発され,有効性を示唆する結果が得られつつある。また、テーラーメイド医療を目指して、これらの分子レベルでの癌治療効果の予測を適正に評価できる方法の開発が活発に行われている。核医学診断は、放射性分子プローブを用いることにより遺伝子やタンパク質の発現又はその働きを画像化する非侵襲的かつ全身検索可能な診断方法であるため、分子標的薬剤の治療効果予測や治療効果判定を行える診断技術として注目されており、テーラーメイド医療を可能にする有力な手法の一つと考えられる。したがって、本法に使用される新規放射性薬剤の開発が必要不可欠である。 構造活性相関に基づき、EGFR-TK阻害剤のヨウ素誘導体のドラッグデザインとその合成を行い、新規化合物を合成した。さらに、新規化合物の合成法改良による総収率の改善とこれらの放射性ヨウ素標識体の合成について検討を行った。合成法の改良により各化合物を効率良く合成することができた。次いで、放射性ヨウ素標識化合物を放射性ヨウ素導入部位にトリブチル基を導入した誘導体から合成することを計画した。これら誘導体の合成は、高収率で得ることができた。続いて、放射性ヨウ素標識について検討したところ目的である放射性ヨウ素標識体を得ることができた。本標識法は、臨床使用される核種での適用が直ちに可能であり、臨床使用に適した標識法での合成が可能であることが確認された。さらに、新規化合物の活性測定を行い、各種標識体のインビトロ、インビボ双方におけるSPECT用癌イメージング薬剤としての可能性について種々の検討を行った。新たに合成した新規化合物はいずれも高いEGFR-TK阻害活性を示した。これら化合物のは、投与1時間後で比較的高い癌集積性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、①EGFR-TK阻害剤奏功癌の選別 ②EGFR-TK阻害剤奏功癌の薬剤耐性の早期検出 ③EGFR-TK阻害剤薬剤耐性獲得の要因の正確な情報提供し、EGFR-TK阻害剤による癌治療計画を支援するシステムの構築に繋げることにある。さらには、本システムの開発により抗癌剤による副作用の危険性を回避するだけでなく、不要な投与を減らすことによる医療経済効果が期待できる。 本年度の研究では、2種の新規分子イメージング薬剤(WZ4002、CCI-779)のうちにEGFR-TKイメージング薬剤ついて非放射性化合物を合成し、これらの阻害活性の測定を行った。。さらに、放射性ヨウ素標識体の合成を行い、インビトロ、インビボにおいて、これら新規薬剤の分子イメージング薬剤としての可能性について基礎的に評価した。EGFR-TKイメージング薬剤の合成には成功したが、その基礎的検討し、2次変異(T790M型)の検出に関しては、2次変異株であるH1975と他の癌細胞種を用いて比較検討を行い、新たに開発した放射性ヨウ素標識誘導体によって2次変異の検出が可能であるかを詳細に検討する必要がある。 また、その結果から、新たな化合物のドラックデザインを行う必要がある。また、PI3キナーゼからAKTに至る生存シグナルの経路活性化の把握については、m-Tor分子標的薬剤の合成を積極的に進め、新規イメージング薬剤としての評価を行う必要がある。 PC-9癌細胞を用いてPTENが不活性化した細胞を作製し、放射性ヨウ素標識CCI-779を用いてPI3キナーゼからAKTに至る生存シグナルの経路活性化の把握の可能性について検討する。本研究は、おおむね順調に進行しているが、上記に述べた研究を進め、所期の目的を達成したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
結合能の測定:[125I]標識誘導体のEGFR-TKに対する親和性を評価するため, 酵素試料として数種類(A431、 H1650、 H1975、 H3255、 PC9等)のヒト由来癌細胞、ネガティブコントロールとしてB細胞白血病細胞(NALM-6)よりそれぞれ抽出した膜画分を用い,インビトロでの放射性ヨウ素標識新規化合物の結合特性を調べる [125I]標識誘導体の細胞による取り込みとEGFR-TK特異性:EGFR-TKは細胞膜内に存在しており、新規に合成した新規誘導体がEGFR-TKを指標とする画像診断用薬剤となるためには、細胞内に取り込まれ、その後、細胞内のEGFR-TKに特異的に結合し、細胞内に保持される必要がある。そこで、合成した新規[125I]標識新規化合物の細胞による取り込みをEGFR-TK発現性癌細胞を用いて測定する。また、EGFR-TK選択的阻害剤を前処理し、EGFR-TKに対する特異性について検討する。 放射性ヨウ素標識WZ4002誘導体の体内動態の検討:[125]I標識WZ4002を尾静脈より投与し、経時時間ごとに屠殺し、各臓器を取り出し、秤量したのちその放射能を測定する。これらの結果から、臓器1グラム当たりの集積量を算出する。 放射性ヨウ素標識WZ4002誘導体の癌集積性の検討:数種類(A431,H1650,H1975,H3255,PC9等)癌細胞を用いて胆癌モデルマウスを作成し、125I標識WZ4002の癌集積性について、体内分布実験と同様に行う。特に2次変異株とゲフィチニブ奏功株に関して比較を行い、画像による2次変異検出の可能性について検討する。また、非放射性EGFR-TK阻害剤を前投与したマウスを用いて同様に実験を行いEGFR-TKに対する特異性について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
結合能の測定、[125I]標識誘導体の細胞による取り込みとEGFR-TK特異性、放射性ヨウ素標識WZ4002誘導体の体内動態の検討、非放射性EGFR-TK阻害剤を前投与したマウスを用いて同様に実験を行いEGFR-TKに対する特異性について検討する。 上記の実験を行うために消耗品として、試薬:300千円、RI:100千円、動物:100千円、血清:200千円、シャーレ:100千円、HPLCカラム:100千円を使用する予定である。。
|